( 182015 ) 2024/06/18 17:29:29 0 00 外国人観光客で溢れかえる黒門市場
「なにわの台所」と呼ばれ、府民の胃袋を満たしてきた大阪・ミナミの「黒門市場」。野菜や鮮魚、精肉など、新鮮な地元の食材を安価で売ることで知られ、170ほどの店舗が軒を連ねる。
【写真】路上にゴミをポイ捨てする観光客もいるため「ゴミ回収カート」を用意
関空に格安航空会社が乗り入れた2011年頃から外国人観光客が増加。コロナ禍でインバウンド需要は一時落ち込んだものの、今ではコロナ前を上回る賑わいを見せ、1日約2万4000人の外国人観光客が訪れているという。
現地を歩くと、平日の昼間にもかかわらず狭いアーケード街は外国人観光客で溢れかえり、なかなか前に進めないほどごった返していた。
店先にはタラバガニや牡蠣、ウニなどの商品を山積みにした販売カウンターがせり出し、その場で飲食ができるようにテーブルや椅子が置かれている。商品をスマホで撮影する人だかりや、立ち止まって串焼きを食べる集団で通行が滞っていた。
「東南アジアの屋台文化に似ているなどの理由で、コロナ前はアジア圏からの観光客がほとんどだったが、コロナ後は欧米人が増え、生魚を食べる人も見かけるようになった」(黒門市場の飲食店店主)
往来をじっくり観察すると中国、韓国、台湾などアジア圏の観光客が8割、あと2割が欧米圏。日本人観光客や地元の買い物客はほとんどいない。
インバウンド需要で市場が盛り上がる半面、トラブルも発生しているという。欧米人が珍しそうに店先の刺身を突いたり、食べ歩きしていた客が串などをポイ捨てするため、道路脇に無造作に捨てられたゴミが散乱している。
さらに大きな問題になっているのが、インバウンド客向けの店と古くからある地元商店との軋轢だという。老舗鮮魚店のオーナーはこう話す。
「コロナ禍の3年間で20~30軒が店を畳んでしまったが、そこに中国をはじめとする外国資本が入ってきた。その新規の店が外国人観光客向けに『インスタ映え』するデカいタラバガニや神戸ビーフの肉巻き、生ウニなどを5000円~1万円という高値で売り始めた。
日本人が見たら誰もが高いと思うが、今は円安もあって外国人観光客の財布のひもは緩み、高値の店が繁盛している。でも、それで『安価で新鮮』という黒門市場のイメージが崩れ、地元の常連客や日本人観光客の足がどんどん遠のいているんです。昔からある店で、外国人観光客向けに商売していない店は、常連客の激減により売り上げが落ち、店を畳むしかなくなっている」
一方、インバウンド客向けの店舗を営む店主も背景をこう明かす。
「地元向けだったところが店を畳むと、大抵はそこを1棟貸しに出すのですが、最近の相場で家賃は月50万~200万円ほどになる。高い家賃で利益を出すには、単価を高くするしかないんです」
店舗間の立場の違いが大きくなっているわけだが、前出の飲食店店主はこんな問題にも言及した。
「新しく参入した外国資本の店は組合に入らないから、彼らからはゴミステーションや公衆トイレの設置・維持費に充てる組合費を徴収できない。イベントにも参加しませんね。組合員たちが店舗間の軋轢や、ゴミのポイ捨ても含めたトラブルを改善しようとしても、非組合員との足並みが揃わないので、うまくいっていないのが現状です」
黒門市場商店街振興組合は「インバウンドに関する記事の取材はすべてお断わりしている」(事務局)とするのみだった。
溝は深そうだ。
撮影/杉原照夫
※週刊ポスト2024年6月21日号
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