( 185228 )  2024/06/28 02:15:16  
00

2024年6月21日、岸田文雄首相は、物価高による影響が大きい「年金世帯」や「低所得世帯」に追加給付金を検討していることを発表した。

総務省の調査によると、65歳以上の世帯では貯蓄額の平均は2504万円で、国民年金の平均月額は5万6000円台、厚生年金の平均月額は14万円台である。

しかしながら、高齢者夫婦世帯の平均家計収支は毎月約4万円の赤字が見込まれ、社会保険料の増加や医療費の高騰なども懸念されている。

老後の生活資金について、具体的なプランを考える必要がある。

(要約)

( 185230 )  2024/06/28 02:15:16  
00

写真:LIMO [リーモ] 

 

2024年6月21日、岸田文雄首相は記者会見で、物価高による家計への影響が大きいと考えられる「年金世帯」や「低所得世帯」を対象に追加給付金を検討していると発言しました。 

 

◆【図表でチェック】高齢者世帯の「貯蓄額・年金額・生活費」はいくら? 

 

年金世帯。国民年金や厚生年金だけの収入で老後を過ごすことは容易ではないでしょう。ゆえに、現役世代は物価高に苦しみつつ自身の老後資金の確保に努めています。 

 

筆者がライフプランの相談をお受けする方の中でも「65歳からの老後生活に向けてどうすべきか」という内容が増えています。 

 

そこで本記事では、65歳以上の年金暮らしを「貯蓄額・年金額・生活費」に関する調査データから観察していきたいと思います。老後対策の参考にご覧ください。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

総務省統計局の「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」によると、世帯主が65歳以上世帯(二人以上世帯)の平均貯蓄額は2504万円、中央値は1604万円です。 

 

 ・100万円未満:7.9% 

 ・100~200万円未満:4.1% 

 ・200~300万円未満:3.2% 

 ・300~400万円未満:3.7% 

 ・400~500万円未満:3.0% 

 ・500~600万円未満:4.1% 

 ・600~700万円未満:3.1% 

 ・700~800万円未満:3.1% 

 ・800~900万円未満:2.9% 

 ・900~1000万円未満:2.3% 

 ・1000~1200万円未満:5.5% 

 ・1200~1400万円未満:4.3% 

 ・1400~1600万円未満:4.3% 

 ・1600~1800万円未満:4.2% 

 ・1800~2000万円未満:3.2% 

 ・2000~2500万円未満:7.1% 

 ・2500~3000万円未満:6.6% 

 ・3000~4000万円未満:8.7% 

 ・4000万円以上:18.8% 

貯蓄額が1000万円以上の世帯は62.7%。2000万円以上の世帯は41.2%です。4000万円以上もの貯蓄を有する世帯は18.8%も。 

 

では、老後の主な収入源となる年金収入はどれくらいあるのでしょうか。 

 

次章で、公的年金「国民年金・厚生年金」の平均月額を確認していきましょう。 

 

 

厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金と厚生年金それぞれの平均月額は下記のとおりです。 

 

●国民年金 

 国民年金の平均月額 

 

 ・全体:5万6316円 

 ・男性:5万8798円 

 ・女性:5万4426円 

 受給額ごとの人数 

 

 ・1万円未満:6万5660人 

 ・1万円以上~2万円未満:27万4330人 

 ・2万円以上~3万円未満:88万1065人 

 ・3万円以上~4万円未満:266万1520人 

 ・4万円以上~5万円未満:465万5774人 

 ・5万円以上~6万円未満:824万6178人 

 ・6万円以上~7万円未満:1484万7491人 

 ・7万円以上~:178万3609人 

国民年金の平均月額は5万円台。ボリュームゾーンは6万円以上~7万円未満です。 

 

国民年金の受給額は、保険料の納付期間により決定。加入義務期間となる20歳以上60歳未満の40年間、すべての保険料を納付した場合に満額を受給することができます。 

 

未納や免除期間があれば、満額から減額される仕組みです。 

 

保険料は全員一律。年度ごとに改定が行われるため満額であっても年金加入期間により多少の差異が見られます。 

 

ご参考までに、2024年度の国民年金の満額は月額6万8000円です。現行制度における支給水準の目安として把握しておくと良いでしょう。 

 

●厚生年金 

 厚生年金の平均月額 

 

 ・全体:14万3973円 

 ・男性:16万3875円 

 ・女性:10万4878円 

※上記の厚生年金の平均月額には国民年金(基礎年金)を含む 

 

●受給額ごとの人数 

 ・1万円未満:6万1358人 

 ・1万円以上~2万円未満:1万5728人 

 ・2万円以上~3万円未満:5万4921人 

 ・3万円以上~4万円未満:9万5172人 

 ・4万円以上~5万円未満:10万2402人 

 ・5万円以上~6万円未満:15万2773人 

 ・6万円以上~7万円未満:41万1749人 

 ・7万円以上~8万円未満:68万7473人 

 ・8万円以上~9万円未満:92万8511人 

 ・9万円以上~10万円未満:112万3972人 

 ・10万円以上~11万円未満:112万7493人 

 ・11万円以上~12万円未満:103万4254人 

 ・12万円以上~13万円未満:94万5662人 

 ・13万円以上~14万円未満:92万5503人 

 ・14万円以上~15万円未満:95万3156人 

 ・15万円以上~16万円未満:99万4044人 

 ・16万円以上~17万円未満:104万730人 

 ・17万円以上~18万円未満:105万8410人 

 ・18万円以上~19万円未満:101万554人 

 ・19万円以上~20万円未満:90万9998人 

 ・20万円以上~21万円未満:75万9086人 

 ・21万円以上~22万円未満:56万9206人 

 ・22万円以上~23万円未満:38万3582人 

 ・23万円以上~24万円未満:25万3529人 

 ・24万円以上~25万円未満:16万6281人 

 ・25万円以上~26万円未満:10万2291人 

 ・26万円以上~27万円未満:5万9766人 

 ・27万円以上~28万円未満:3万3463人 

 ・28万円以上~29万円未満:1万5793人 

 ・29万円以上~30万円未満:7351人 

 ・30万円以上~:1万2490人 

厚生年金のの平均月額は14万円台。ボリュームゾーンは10万円以上~11万円未満です。 

 

また、厚生年金の平均月額を男女別でみると、男性と女性で6万円ほどの差がみられます。 

 

厚生年金の年金額は、現役時代の年金加入期間と給与や賞与などの報酬に応じて決定する保険料により計算されるため個人差が生じやすいのが特徴です。 

 

男女の差については、働き方や労働環境が反映されていると考えられます。 

 

さて、国民年金と厚生年金の平均月額を確認しましたが、ご自身の生活費と照らし合わせてみるといかがでしょう。 

 

年金収入だけで毎月「黒字」という世帯はそう多くないと考えられます。 

 

では、65歳以上無職の夫婦世帯の家計収支は「黒字・赤字」どちらになるのか。 

 

次章で一般的な高齢者夫婦世帯の平均的な家計収支を確認してみましょう。 

 

 

総務省の「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職夫婦世帯の平均的な家計収支は下記のとおりです。 

 

 ・実収入:24万4580円 

 ・可処分所得:21万3042円 

 ・消費支出:25万959円 

 ・不足分:3万7916円 

実収入24万4580円に対し、可処分所得が21万3042円。税金や社会保険料が3万1538円ひかれていることがわかります。 

 

可処分所得、つまり手取り収入21万3042円に対する生活費(消費支出)は25万959円で、毎月3万7916円の赤字となります。 

 

この赤字を補填するために「毎月約4万円」は最低限確保しておかなければいけません。10年間で480万円、20年間で960万円、30年間で1440万円となります。 

 

ただし、赤字がより膨らむ可能性があることも想定しておく必要があります。 

 

少子高齢化が深刻な問題となる日本では、社会保険料が年々上昇しています。 

 

公的年金は毎年度見直しが行われており、2024年度は2.7%の増額となりましたが、物価上昇率を下回っており実質的には目減りです。 

 

収入が増えない中、社会保険料の負担増により可処分所得が減れば赤字はより大きくなるでしょう。 

 

また年齢を重ねるごとに医療費の負担が増えたり、介護費用が発生したりなどの可能性も高まります。 

 

こうした可能性も考慮しながら、老後資金を準備していきましょう。 

 

今回は65歳以上の無職世帯における貯蓄額や、その内訳について確認してきました。 

 

資産の保有額は世帯によって大きな偏りがあり、4000万円以上保有している世帯もあれば、100万円未満の世帯もあるといった現状が明らかになりました。 

 

また、家計収支に目を向けると、平均的に毎月4万円の赤字となっていました。これはあくまで「現状」の数字です。 

 

物価高騰や年金受給額の変化によって、月の収支の不足額はこれまで以上に大きくなるかもしれません。そういった事態に備えるべく、しっかりと自助努力で資産を作り上げていく必要があります。 

 

とはいっても、なかなか自分ひとりで老後の生活をイメージするのは難しいと思われます。そんな時はプロの力を借りてみるのも一案です。 

 

自分自身の理想の老後生活を伝え、一緒にプランニングしてもらうことで、具体的に必要資金の金額がイメージできます。ゴールが決まったら、そこから逆算することで「今から何をすべきか」が見えてくるでしょう。 

 

コツコツ貯蓄をすれば安泰なのか、いま注目を集めている新NISAをはじめとした資産運用を行うのか。全てはゴールを設定することから始まります。気になる方は、一度取り組んでみてはいかがでしょうか。 

 

●ご参考 

老後対策を進めるうえで、ある程度の年金収入を想定しておく必要があります。 

 

実際の年金受給額は現時点ではわかりませんが、見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」にてご確認いただけます。 

 

また、厚生労働省の公的年金シミュレーターで、リタイアまでの働き方を想定して試算することも可能です。 

 

年金見込額が把握できたら、税金や社会保険料が天引きされ手取りは90%前後になると考えておきましょう。 

 

 ・総務省統計局「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」 

 ・総務省統計局「家計調査報告 貯蓄・負債編 2023年(令和5年)平均結果の概要 (二人以上の世帯)」 

 ・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」 

 ・総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」 

 

荻野 樹 

 

 

 
 

IMAGE