( 185918 )  2024/06/30 02:13:40  
00

NISA制度のキーパーソンである越智隆雄衆議院議員のインタビュー記事を紹介。

NISA制度の改悪や日本株限定NISAの可能性についての懸念に対し、越智議員は制度の重要性や新NISAの拡大について意欲的に語っている。

越智議員は長期投資への信念を示し、国民への普及を目指す姿勢を示している。

また、日本株限定への変更はないことや高齢者向けのNISA活用についても言及しており、NISAの貢献と将来への期待を述べている。

(要約)

( 185920 )  2024/06/30 02:13:40  
00

NISA制度のキーパーソンの一人、越智隆雄衆議院議員(撮影/高野楓菜) 

 

NISA制度のキーパーソンの一人、越智隆雄衆議院議員にインタビュー。ちまたで囁かれる制度改悪や日本株限定NISAの可能性についても質問すると、よどみない返答が返ってきた。アエラ増刊「AERA Money 2024春夏号」から抜粋して紹介する。 

 

【写真】「越智隆雄衆議院議員と大量の本」はこちら! 

 

 国会の定員は衆参両院で合計713人。このうち銀行と証券の両面で実務経験を積んだ政治家はおそらく越智隆雄さんくらいだろう。 

 

「政府は(投資の利益からの)税収が減りそうだが、いいのか」「ネット上に流れるNISA改悪説って本当?」「60代からはじめても間に合うかな」。聞きたいことは山ほどある。 

 

 開口一番、越智さんは力強くこう言った。 

 

「一般NISAがはじまったのが2014年1月ですから、今年はNISA10周年。新NISAは日本が変わる原動力になりますよ」 

 

 新NISA口座は相変わらず増えている。2023年の1年間で約2割増の2136万に急増したが、今年も勢いは止まらない。 

 

 国民のために知恵を絞って作った制度が浸透し、世の中がよくなる。政策に関わる国会議員として、これほどやりがいのある仕事はない。越智さんの表情には「傑作」を世に送り出した達成感がにじむ。 

 

「国民的投信というコンセプトの制度を作れないかな」 

 

 旧NISA創設の翌年の2015年、大臣を補佐する政務官だった越智さんと金融庁長官が交わした何げない会話がこれ。 

 

 2018年につみたてNISAがはじまり、新NISAでも「つみたて重視」が鮮明になった流れがある。 

 

■「安心して買える」を軸に 

 

「貯蓄から投資へ」と政府がはじめて掲げたのは、小泉純一郎内閣時の2001年。政策運営の方向性を示す「骨太の方針」に明記された。 

 

 越智さんは心配していた。 

 

「当時の投資環境で国民が安心して投資できるかについては、正直、疑問を感じていました」 

 

 越智さんが心を砕いたのは「安心して買える」ことだ。 

 

「リスクもリターンもある。あとは自己責任でどうぞ」では、投資が広く国民に普及するわけがない。 

 

「そこで、つみたてNISAでは対象商品を限定することになったんです。『長期・つみたて・分散』に適しているかを基準に投資信託(以下、投信)の運用内容を吟味した結果、つみたてNISAからは毎月分配型投信を除外しました。 

 

ノーロード(販売手数料ゼロ)であること、信託報酬が一定水準以下であることなど、コストについても条件を付けました」 

 

 

 制度実現への関門である自民党税制調査会を通過したのは、越智さんが内閣府副大臣だった2016年秋のことだった。 

 

 ところで、本誌はこのインタビューに先立って新NISAについてアンケート(*)を実施し、2019人から回答を得ている。 

 

「新NISAに関する疑問」を記述式の自由回答で設けたところ、国に対する質問も寄せられた。その中で目立ったのは、「海外株式の投信ばかり売れて、国はそれでいいのか?」といった内容。 

 

 越智さんは「日本人の持つ資産のほとんどは円建てです。『長期・つみたて・分散』のうち、分散という意味で海外に投資することに違和感はありません」と言う。 

 

 資産所得倍増プランが岸田文雄内閣の新しい資本主義実行計画の目玉として盛り込まれたのは2022年6月のこと。ロシアがウクライナに侵攻し、円安が進んでいた時期だ。 

 

「政策担当者と円安の可能性について議論しました。外国企業にお金が流れる動きが加速したら『なぜ日本は強くならないんだ』という圧力が増すはずだ、と。円安は日本株ならびに日本企業を鍛えるチャンスです」 

 

■日本株限定への変更は無い 

 

 ネット上では、日本からお金が逃げるキャピタルフライト(資本逃避)を新NISAが助長することが心配されている。 

 

 政府が新NISAの投資対象を日本株に限定するとのフェイクニュースも流れたが、「日本株しか買えないルールにするつもりは最初からありませんでした。これからもありません」と言い切る。 

 

「日本市場は国際金融市場を目指しているんです。その日本が、日本株限定などと言うはずがないでしょう」 

 

 NISAの最大のメリットは運用益が非課税になることだ。投資家にはうれしいが、政府が貴重な財源を手放すということは、何か裏があるのではないか? 

 

「預金として眠っていたお金が投資に回るわけですよね。預金利息から約20%が源泉徴収され、税収になりますが、ご存じの超低金利。実額としては多くありません。 

 

その程度の税収が消えたところで、財政への打撃は限られています。 

 

一方、預金が投資に回ると……。日本株の話からいくと、企業にお金が入って企業が儲かれば、法人税が増えます。投資したお金が増えれば、将来的には個人消費も増えます。 

 

投信などを通じて外国株に回ったお金も、一生、外国に行きっぱなしではありません。 

 

国は長期目線で考えています。財務省も思い切ったと思いますが、最終的には首相官邸の判断でした」 

 

 

 越智さんはNISAを「みなさんの習慣にしたい」と話す。 

 

「昭和の新入社員は必ず生命保険に入ったものです。そんな感覚で、NISAを通してのつみたて投資が国民のスタンダードになってほしい。 

 

つみたてNISA時代の非課税期間『20年限定』を新NISAで恒久化したのも、NISAが社会のインフラであることを国民にわかってもらうためです。 

 

それを時限措置に戻すなんて考えられません」 

 

 と、制度改悪への疑念を一蹴した。 

 

■高齢者×NISA 

 

 新NISAを利用しない理由として「年齢」を挙げる人は少なくないが、高齢者は無視なのか。 

 

「私は今、60歳です。平均寿命から逆算しても、あと20年以上あります。若い人と同じような長期投資はできなくても、少なくとも『つみたて・分散』が味方をしてくれます。 

 

私もNISAで毎月つみたて投資をしています。60歳、70歳でも余裕のある人は成長投資枠ですよ!」 

 

 越智さんが尊敬する政治家の一人に昭和後期の繁栄をリードした政治家、福田赳夫元首相がいる。祖父だ。父は越智通雄元経済企画庁長官、福田康夫元首相は叔父。越智さんは政界のサラブレッド。 

 

「小さい頃から祖父に憧れ、いつかは政治家になりたいと思っていました。企業人として民間で勤め、50代で政治の世界へ進もうと、もともとは考えていました」 

 

■銀行から証券へ 

 

 越智さんの最初の勤め先は住友銀行(現三井住友銀行)。1986年に入行して支店で3年勤めたあと、2年間のフランス留学を経て、証券業務に携わった。 

 

「帰国後の日本は金融自由化がはじまり、銀行と証券の垣根が低くなりつつある時代でした。証券子会社の住友キャピタル証券設立に準備段階から加わり、1999年に大和証券SMBCという新会社をつくりました。そこでは資本市場第一部次長として働きました」 

 

 越智さんが人生プランの前倒しをしたのが1990年代後半。 

 

「1997年にアジア通貨危機が発生し、日本でも不良債権問題が金融システムを揺るがした時期です。石原伸晃さんや渡辺喜美さんたち『政策新人類』の活躍を見て、さっさと政治へ行こうと」 

 

 

 越智さんは銀行を辞めた。まず大学院に行き、政治家として必要な政治史と外交を学んだ。驚くことに、父の後継指名を断り、公募を経て初の国政選挙に臨んでいる。 

 

「かっこよく言えば、自由にやりたかった。政治家の家系に生まれましたが、マインドは金融の世界で鍛えてもらった、市場や世論に敏感な民間人です」 

 

 越智さんの趣味は「アイロンがけと日曜大工」。 

 

「アイロンがけは忙しくても必ずやる日課です。気持ちが整うんですよね。日曜大工では壁と冷蔵庫の間に小さな棚を作ったり、娘の漫画本に合ったサイズの書棚を作ったり」 

 

 越智さんの話に、何度も「作る」という単語が出てきた。どんなものを作るかイメージし、手を動かして形にするプロセスが好きなのだろう。新NISAに続く「傑作」が今から待ち遠しい。 

 

取材・文/大場宏明、中島晶子(AERA編集部) 

 

越智隆雄(おち・たかお)/衆議院議員、自民党金融調査会幹事長。1964年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、フランスESSEC経済商科大学院大学(経営学)修了、東京大学大学院修士課程(政治学)修了。1986年、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。2014年、内閣府大臣政務官(金融、女性活躍等担当)。2016~2018年、内閣府副大臣(金融、経済再生、経済財政担当)。2020~2021年、衆議院財務金融委員長。現在は衆議院議員(東京6区・世田谷区)、衆議院財務金融委員会委員、自民党経済構造改革委員会幹事長代理、同金融調査会幹事長などを務める 

 

*「AERA Money2024春夏・新NISAアンケート」について…募集期間は2024年1月19日~2月9日。回答者数2019名。雑誌『AERA』、ウェブサイト「AERA dot.」、X(旧Twitter)を中心に告知し、謝礼なしで回答を集めた 

 

編集/綾小路麗香、伊藤忍 

 

※『AERA Money 2024春夏号』から抜粋 

 

中島晶子,大場宏明 

 

 

 
 

IMAGE