( 186688 )  2024/07/02 16:53:00  
00

主要メーカーは円安を受けて好決算を見込んでいる一方、庶民や中小企業は円安による物価高に苦しんでいる。

急激な円安で輸出大企業は利益を上げているが、日本経済全体に負担をかけており、円安は日本株や海外投資家にも影響を与えている。

円安の恩恵は輸出企業に偏り、日本政府の政策がGDPを重視する傾向があると指摘されている。

(要約)

( 186690 )  2024/07/02 16:53:00  
00

円の価値は6割も割安…(C)日刊ゲンダイ 

 

 ウハウハのようだ。庶民は「円安」に喘いでいるが、主要メーカーは円安の恩恵を享受していることがわかった。 

 

自民議連が目指す郵政民営化改正案の“真の狙い”…郵便料金30年ぶり値上げの先にあるもの 

 

 東京商工リサーチの調査によると、上場している主要メーカー109社は、2024年3月期につづき、2025年3月期の決算でも「好決算」を見込んでいるという。 

 

 2024年3月期決算では、前期比「増収増益」が58社(53.2%)と半数以上を占め、「増収減益」24社、「減収減益」21社、「減収増益」6社の順だった。 

 

 2025年3月期も、この傾向がつづきそうで、業績見込みは「増収増益」52社、「増収減益」28社、「減収減益」17社、「減収増益」12社だった。 

 

 輸出比率の高い大手メーカーにとって、やはり「円安」は追い風ということだ。主要109社は、2025年3月期決算の「想定為替レート」を1ドル=143.5円(平均値)に設定しているが、為替は1ドル=160円まで「円安」が進み、2025年3月期も空前の好決算を記録する可能性が高い。 

 

 庶民と中小企業は円安がもたらす「物価高」(コスト高)に悲鳴をあげているのに、輸出大企業だけはボロ儲け──という「ねじれ」が広がっている。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。 

 

「急ピッチな円安によって、日本経済は歪みが大きくなっています。購買力平価では1ドル=100円程度が適正なのに、1ドル=160円まで円安が進み、円の価値は6割も割安になっている。その分、輸出企業は利益が膨らんでいる格好です。円安によって輸出大企業が儲かると、たしかにGDP(国内総生産)は増えますが、GDI(国内総所得)は減少してしまう。この乖離が歪みとなっている。日本政府はGDPを優先しているようにみえます」 

 

 1ドル=160円台の「円安」は、日本株にもマイナスとなりはじめている。ドル建てで運用成果をはかる海外投資家にとって、円安は収益の目減りになるため、海外勢の買いにブレーキがかかっているという。 

 

 もちろん、輸出大企業が取引先に儲けを分配すれば、日本経済全体に「円安」の恩恵が行き渡るのだろうが、実際は輸出大企業が利益を独り占めしている形だ。5兆円という空前の利益をあげたトヨタグループなどは、分配するどころか、下請け50社に金型を無償で長期保管させていた。下請け企業の被害総額は数億円に達するという。 

 

「行き過ぎた円安は、やはり日本経済全体にはマイナスです。なぜ岸田政権は放置しているのか。財界の意向を最優先しているのでしょう」(斎藤満氏) 

 

 市場では1ドル=200円の声も上がっている。庶民と中小企業だけが追い詰められている。 

 

 

 
 

IMAGE