( 187103 )  2024/07/03 16:43:52  
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2024年7月3日から日本で新しい紙幣が流通され始めた。

日本は現金大国として知られているが、最近ではキャッシュレス決済が増加しており、少額決済はキャッシュレスに移行している。

しかし、依然として日本は現金大国であり、特に1万円札が多く流通している。

これは、多くの人がタンス預金を行い、金融システムへの信頼が低いことが背景にある。

 

 

最近はインフレが進み、現金保有が損失につながる可能性が高まっているため、多くの人が現金から株式や不動産などの資産に移行している。

結果として、現金から株式や投資信託への切り替えが増加し、現預金の比率は低下している。

特に若い世代の投資家は外国株への投資に積極的であり、円安やインフレが加速する可能性がある。

 

 

新しい紙幣の導入自体には大きな意味はないが、結果として日本の貨幣経済に大きな変化をもたらす可能性がある。

(要約)

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photo by gettyimages 

 

2024年7月3日から新紙幣の流通が始まった。日本は諸外国の中でも突出した現金大国として知られているが、その兆候にわずかだが変化が生じ始めている。今回の新紙幣発行は日本における貨幣経済の大きな転換点となる可能性がある。 

 

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暫くはおなじみの紙幣を目にする機会が多い…?/photo by gettyimages 

 

紙幣は偽造防止などの観点から、一定期間ごとに新しいものと入れ替えることになっており、おおよそ20年がその目安とされる。今回の新紙幣にはホログラムなどの新技術が用いられており、さらに偽装が困難になった。 

 

これまでの時代であれば、紙幣が入れ替わるとすぐに新札が流通したが、近年はキャッシュレス決済が増えており、新紙幣を目にする機会が少なくなるのではないかとの意見も聞かれる。 

 

日本のキャッシュレス決済比率は上昇傾向ではあるものの、諸外国と比較するとGDP(国内総生産)に対する現金流通高比率は突出して高く、日本は依然として現金大国である。近年、クレジットカードや電子決済に加え、スマホ決済が普及したことで、少額決済の多くがキャッシュレスに移行している。 

 

筆者も最近ではほとんど現金を持ち歩いておらず、キャッシュレス決済で済ましている。特に若い世代の人はそうした傾向が顕著であり、日常的な少額決済の場からは、現金は消えつつあると言ってよいだろう。 

 

では、日常生活での現金利用が減っているにもかかわらず、なぜ現金大国という状態が続いているのだろうか。その理由は、流通している紙幣の種類を見れば一目瞭然である。日本では流通している紙幣の中で、1万円札の比率が極めて高くなっている。これは、いわゆるタンス預金のニーズが高く、紙幣を自宅などに保管しているケースが多いことを物語っている。 

 

日本において、突出してタンス預金が多いことの理由は完全には解明されていないが、多くの日本人が自国の金融システムを信用していないという背景があるのは間違いないだろう。確かに、イザという時に銀行が即、引き出しに応じてくれるとは限らず、現金を持っている方が、安全で確実だというのは、その通りかもしれない。 

 

だが、こうした日本人特有のお金に対する意識は大きく変化しつつある。その理由は、日本でもいよいよインフレが本格化しており、現金を保有していることが、即、損失につながる状況になってきたからである。 

 

日本では長くデフレが続いていたので、現金を保有しておくことにはそれなりに合理性があった。だが、日本でもいよいよインフレが本格化しつつあり、日銀が600兆円という莫大な当座預金を積み上げている現実を考えると、インフレがこのまま収束する可能性は低い。 

 

継続して物価が上がり続けるという予想が成り立つ経済圏においては、現金保有は著しく不利になる。現時点で100万円の現金があれば100万円の自動車を買うことができる。だが5年で物価が1.5倍になった場合、5年後の車の価格は150万円になってしまう。現金をそのまま保有していただけでは、5年後にも100万円の価値しかないので、100万円で1台の車を買うことは不可能となる。 

 

 

つまり、物価上昇が進んでいる時に現金を継続保有するという行為は、物価上昇分だけ資産価値を失ったことと同義になる。このメカニズムに気付かない人も少なくないが、マネーの動きに敏感な人は、インフレが進むと現金保有が損であることを理解し、現金を手放して、株式や不動産、外貨など価値が毀損しない資産への乗り換えを行う。そうなるとタンス預金も市場に出てくることになり、これが他の実物資産に入れ替わる現象が発生しうる。 

 

紙幣はデザインが変更されても旧紙幣は引き続き利用できるので、新紙幣の発行が直接的にタンス預金のあぶり出しにつながるわけではない。だが人間の心理として、インフレが進み、現金保有の効果が疑問視される中、紙幣のデザインが変わると、タンス預金を引き出す動機になる可能性はそれなりに高い。 

 

2024年6月27日に発表された日銀の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産の残高は2199兆円と前年比で7%以上も増えた。日本の個人金融資産は現預金が大半を占めており、株式などのリスク資産の比率が低いというのがこれまでの常識だった。 

 

現在でも資産の大半は現預金ではあるものの、近年の資金の動きを見ると、徐々にではあるが、その図式が変わりつつある。 

 

個人金融資産全体の増加は7.1%だったが、中でも投資信託と株式は30%を超える大幅な増加となった。これに対して現金預金はわずか1.1%増にとどまっており、相対的に現預金が減っている状況だ。 

 

投資信託と株式の伸びが極めて大きかったことの背景には、ドル建ての投資信託や外国株の残高が、円安の進展によって増大したことがある。だが、個人投資家で外国株投資をしている人は少数派であり、日本人の多くが国内投資を行っている現実や日経平均が大幅に上昇したことなどを考え合わせると、定期預金などから株式や投資信託などへの切り替えが進んだ様子が浮かび上がる。 

 

このままインフレが続いた場合、多くのタンス預金の保有者が、現金保有は損であることに気づき始め、実物資産に切り替える動きが加速してくるだろう。そうなると、ただでさえ現金が余剰となる中、現金を手放す動きが顕著となるため、さらにインフレが加速する可能性が否定できない。 

 

また若い世代の投資家は、中高年層の投資家とは異なり、外国株への投資に大きな抵抗感がない。今年から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートしたが、新規に口座開設した投資家における人気ナンバーワンの商品は、諸外国の優良株に投資する投資信託となっている。 

 

こうした商品の売れ行きが伸びれば、貯蓄から投資へという動きに加え、円からドルへという動きも加わるので、円安とインフレがさらに進むことになり、これがさらに現金を手放す原動力となってしまう。 

 

今回の新紙幣切り替えは、スケジュール通りの動きであり、特段大きな意味はないが、結果として日本の貨幣経済を大きく変えるきっかけとなるかもしれない。 

 

加谷 珪一 

 

 

 
 

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