( 188121 )  2024/07/06 16:25:57  
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自民党の「キングメーカー」と言われた二階俊博元幹事長が、和歌山県連大会で県連会長を退任し、顧問に就くことを発表した。

二階氏は重病説が報じられていたが、会場での振る舞いにその影があった。

後継者の伸康氏との「後継争い」や、総裁選への動きなども注目されているが、二階氏は既に政界引退を表明している。

(要約)

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引退を表明した二階氏 (c)現代ビジネス 

 

自民党和歌山県連のウェブサイトより 二階氏(左)と石田氏 

 

6月30日、自民党和歌山県連大会が開催された。ここに自民党の「キングメーカー」二階俊博元幹事長が出席した。二階氏は県連会長を退任し、顧問に就くことが発表された。 

 

【写真】同席しただけで場が凍り付いた…二階俊博の後継に決まった三男と長男バトル 

 

二階氏は、ゴールデンウイーク前から「重病説」が繰り返し報じられてきた。県連大会に姿を見せた二階氏は「和歌山県連が模範となるように、頑張りましょう」と、淡々と退任の挨拶をこなした。 

 

異変が起きたのは、二階氏に花束が渡された時のことだった。会場に集まった大手メディアは、次の県連会長・石田真敏元総務相と二階氏のツーショットを狙っていた。 

 

「二階先生くらいになれば、花束を高く掲げて、石田さんとガッチリ握手するシーンをマスコミも想定しますよ。しかし、二階先生は右手が不自由なのか、花束を上げようとしても上にあがらない。それどころか、だらんとして力が入らない感じで、いかにも病み上がりでした。挨拶も以前のような迫力もなかった。正直、重病説はホンマやったやなぁと思った瞬間でした」 

 

こう振り返るのは、出席していた和歌山県議のひとりだ。 

 

二階氏は、心臓疾患、脳梗塞とさまざまな病名が噂になってきた。県連大会の同じ舞台には、二階氏の後継者で三男の伸康氏の姿がもあった。伸康氏は衆院新和歌山2区の支部長予定者にも選出され、解散総選挙での出馬がほぼ決まっている。 

 

県連会長退任のシーンは、二階氏の「引退」と世代交代を象徴するものだったという。県連大会は1時間ほどで終了した。事務方からは「二階先生は取材、ぶら下がりはありません」と事前にアナウンスされていたものの、詰めかけたマスコミは二階氏を囲むことになった。 

 

和歌山県連大会の様子。自民党和歌山県連のウェブサイトより 

 

旧知のベテラン記者を見つけると「よお、元気で?」と笑顔で話す二階氏は、伸康氏が新和歌山2区から自民党の公認が決まっていることについて問われると、待ってましたとばかりこう語った。 

 

「大変多くの皆さん役員の皆さんが列席され、県連大会が盛大に行われた。(三男の出馬は)我々家族がうんぬんではありません。有権者の皆さんがお決めになること。本人もしっかり頑張って皆さんの期待に応えるようにと思います」 

 

その様子は、どこか嬉しそうに見えた。 

 

9月に控えた自民党の総裁選では、岸田文雄首相は今も出馬表明をしていない。 

 

石破茂元幹事長は立候補の意向と報道され、岸田首相を支える茂木敏充幹事長もテレビ番組で「首相になってやりたいことがある」と踏み込んだ。加藤勝信元官房長官も、最大派閥だった安倍派の幹部と会合を重ねる。前回の総裁選では安倍晋三元首相の支援で3位に食い込んだ高市早苗経済安全保障担当相や、小林鷹之前経済安全保障担当相、青山繁晴参院議員も出馬意欲を見せる。 

 

この状況に対しても二階氏はこう語った。 

 

「ま、先日、国会を閉じたばかりです。まだ9月の総裁選までだいぶ日があるんですよ、わかりますか。誰が取りちがえておるのか、ちょっと総裁選、幕開けのスタートが早すぎるよ」 

 

キングメーカーらしく、ポスト岸田に我慢できず名乗りをあげる有力者に苦言を呈したのだ。二階氏は、続けて 

 

「総裁選の候補者は、おいおい詰まって決めるだろう。いい人が選ばれるのを期待だ」 

 

と話した。 

 

「二階先生は、どうせ総裁選のことを聞かれると思いながら記者の取材を受けているようでした。政界引退と言いながらキングメーカーに返り咲きたいという意欲を感じた」(二階氏の支援者) 

 

 

県連大会で発言する二階氏。自民党和歌山県連のウェブサイトより 

 

マスコミに囲まれた途端、花束贈呈のシーンとは打って変わり、饒舌に語る二階氏は、「和歌山県連もしっかり頑張ってほしい」と言い残して会場を後にした。 

 

このとき二階氏の手をとりながら誘導していたのは長男の二階俊樹氏だった。 

 

この日の県連大会の参加者は、300人とも500人ともいわれた。三男で後継者となった伸康氏は、名刺の束を手に会場内を駆けずり回り、腰をかがめて挨拶し、スマホで記念撮影に応じ、大忙し。 

 

伸康氏との「後継争い」に敗れた形になる俊樹氏の心境やいかに。 

 

「伸康氏とは目も合わせることなく、相変わらず強面でしたね。ただ、二階氏が引退すれば秘書という立場も失うでしょう。年ももうすぐ60歳になるはず。伸康氏といがみあっている余裕もないが、かといって対抗すると二階家そのものが危なくなる。 

 

あえて県連大会に出席する必要もなかったのに、二階氏がやってきたのは、俊樹氏と伸康氏を並べ、いさかいがないことを演出し、穏便に収めるためだったのかな……。ただあれほどまでに権勢を誇った、二階氏がいなくなるのは寂しいね」(前出・和歌山県議) 

 

また、安倍派の裏金事件で、自民党から離党勧告となった世耕弘成参議院議員については、この日、一部の県議などから次の声があがったという。 

 

「新和歌山2区は伸康氏に決まった。二階先生もここは大所高所から、まだ未定の新和歌山1区は世耕氏の鞍替えを認めてくれたら、穏便に収まる」 

 

世耕氏は自民党を離党しているが、今も和歌山県連の会長代行のままだ。 

 

「二階氏が復帰し、健在の中、なんとか無所属で新和歌山1区から出たいという下心があるのは事実」(世耕氏の支援者) 

 

支持率が下がるばかりで東京都知事選でも独自候補を擁立できず、現職の小池百合子知事に「抱きつく」作戦になった岸田首相。 

 

安倍派を筆頭とする裏金事件では、派閥を解消までさせたが、派閥の領袖・茂木幹事長や麻生派を率いる麻生太郎副総裁と会食を繰り返している。 

 

非主流派の菅義偉元首相は、石破氏や加藤氏を担ぐとみられる。ここに足並みを揃えるのが二階氏だ。 

 

「岸田首相が総裁選で勝つにはまず、唯一残った麻生派から支援を得ることだ。そして、非主流派を封じ込めること。安倍元首相も長期政権を維持できた要因の一つは、ずっと二階氏を重用し味方につけたことだ。 

 

重病説まで流れた二階氏が、今回首相をけん制するかのように総裁選に注文をつけた。このことが、岸田首相は気になって仕方がないようだ」(自民党幹部) 

 

すでに「政界引退」を表明している二階氏だが、派閥解散でも二階派の結束は簡単に揺らぐことはない。県連大会で見せた存在感で、9月の総裁選をどう動くのだろうか? 

 

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現代ビジネス編集部 

 

 

 
 

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