( 188321 )  2024/07/07 01:23:22  
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脳科学者の茂木健一郎さんについての記事です。

茂木さんは小学5年生のときにアインシュタインの伝記にハマり、物理学を学ぶことを決めました。

その後、脳科学者として「クオリア」という研究テーマを追求しています。

 

 

茂木さんは幼少期から興味を持っていた領域に進んでいき、高校生のときに頭脳テストを合格するほどの知性を持っていました。

学業には苦労しなかったものの、人間関係での苦労を経験しています。

 

 

茂木さんは自身の研究テーマやAIとの関係、直観についても語っています。

また、2021年に校長に就任した学校では、生徒たちが自分のペースで学べる環境を提供しています。

 

 

AIと人間の協調に関しては、AIの進化が様々な問題を引き起こす可能性があり、将来的に人間がAIの振る舞いを予測することが難しくなるかもしれないと考えています。

 

 

最後に、茂木さんは受験や偏差値に対して独自の考えを持ち、自分の道を突き進んできたことを語っています。

彼は多くの異なる分野に興味を持ち、主流になれない個性的な人間であることを受け入れつつ、研究と著述活動を続けています。

(要約)

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小5でアインシュタインにハマった、脳科学者の茂木健一郎さん(撮影/小山幸佑) 

 

脳科学者の茂木健一郎さんにインタビュー。自身の半生を振り返りつつ、SNSで反響を呼んだ「MARCH呼び」の真意も語った。 

 

【写真6枚】遠慮なし・茂木健一郎さんのキュートなインタビュー写真はこちら! 

 

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「本業はバイオリンです」 

 

 バイオリニストの葉加瀬太郎さんに似ているとネット上でいじられていることを踏まえたボケを繰り出す茂木さん。大笑いで今回のインタビューははじまった。 

 

 茂木さんは脳科学者だ。「ヒトの意識の起源を解き明かす」ための研究を進めてきた。一方でテレビのコメンテーターやベストセラー作家としての顔も持ち、X(旧ツイッター)のフォロワー130万人以上のインフルエンサーでもある。 

 

 茂木さんの研究テーマは「クオリア」。素人には謎すぎる言葉だ。「感覚質」という日本語訳はあるが、わかりにくい。 

 

 クオリアは、言語や数式に置き換えにくい主観的な感覚を指す。 

 

 たとえば絵画で透明な窓ガラスに使う絵の具は本当に透明ではない。だが、見る人は透明だと受け止め、ガラスの硬い質感をたやすく想像する。 

 

 このとき脳が情報を処理しているとすれば、どんな情報をどのように処理しているのか。今のところ誰にもわからない。 

 

■小学校では道化師 

 

 幼い頃の茂木さんの夢は、蝶博士。小学校入学前から蝶が大好きだった。 

 

 小学5年生の頃に読んだアインシュタインの伝記にハマったことが、その後の進路を決定づけた。 

 

「この世の真理を解明するには物理学だろうと思いました。当時、自然科学を扱った新書シリーズ『ブルーバックス』を読みあさりました。数学の名著『零の発見』(吉田洋一著/岩波新書)や相対性理論のいい解説書もありましたね」 

 

 学問の扉を開いて目を輝かせる茂木少年。 

 

「早熟だったかもしれません。トルストイも小学校高学年で読んでいました」 

 

 小学生でトルストイ。クラスでは当然、「浮く」。茂木さんは「学校では道化師になっていました」と振り返る。 

 

「小学校でも中学校でも、勉強ができると思われるのが嫌でした。そこで友達を笑わせようと思ったんですが、どうもツボがずれていたようで、あまりウケませんでした。 

 

新聞の政治川柳の欄を切り抜いてノートに貼っていたんですが、それは友達に笑われました。『なんで政治なんかに興味を持っているんだ?』って」 

 

 

 茂木さんは高校生の頃、高いIQ(intelligence quotient=知能指数)を持っていることが入会条件とされるメンサの試験をパスしたほどの頭脳の持ち主である。 

 

「テストで苦労するって感覚はなかったんですが、人間関係では苦労しましたよ。友達は普通に欲しいけど、そもそも『普通の人』苦手だったし」 

 

 思春期の小さな苦労である。中学時代の成績は学年1位だった。 

 

■やんちゃな人が好き 

 

「友達は少なかったですが、教室の隅っこで何かを模索しているような子とは仲良くなれました。教室の真ん中でワーッと盛り上がっているグループは無理でした。 

 

優等生のことを嫌いなはずの、ヤンキーとか不良とか呼ばれている人たちとも相性がよかったです。 

 

『茂木がやるんだったら』と、こっそりタバコを吸っているかもしれない不良の友達と一緒に朝のランニングをしたり。隅っこにいるタイプ、っていうところが似ているんでしょうね。 

 

市川團十郎(だんじゅうろう)さんに時々会うと楽しいし。團十郎さんが不良ってわけじゃないですが、やんちゃな人、好きですね」 

 

 茂木さんは2021年4月、屋久島おおぞら高等学校(通信制)の校長に就任した。自分のペースで卒業を目指せる学校だ。自宅でも最寄りの連携施設でも学べる。 

 

「勉強ができる子が偉いんだという価値観が一切ない高校です。これまで学校に行くのが大変だった生徒も自由に学んでいますよ。楽しく校長をやらせてもらっています」 

 

 少数派の居心地の悪さを体験して育った茂木さん以上の校長適任者は、そう簡単には見つからない。 

 

■AIは最大公約数 

 

 茂木さんはAIをどう見ているのだろう。 

 

「生成AIの誕生でコモディティ的な、つまり置き換え可能な仕事はなくなることが確定したようなものです。 

 

今のところ、生成AIが生み出す文章やイラストは、すでに流通しているものを統計的に分析して最大公約数を出しているだけ。 

 

ピカソやモネ、手塚治虫みたいな『最大公約数から外れたもの』を現在のAIは学習できません。これからは、最大公約数から外れた部分だけが価値を持つ時代に突入します」 

 

 

 企画書や説明書のような文書の作成はAIに取って代わられてしまう––––。しかし、「一人の人間が人生を賭けて、あるいは誰かに心を込めて書くメッセージのようなものは、AI全盛の時代にこそ高い価値を持つのではないでしょうか」。 

 

 茂木さんの研究室では「直観」もホットなテーマだ。 

 

「脳腸相関を研究しています。脳と腸は互いに影響を及ぼし合っているようです。腸は第2の脳とも呼ばれ、人間の直観は脳と腸が対話して生まれてくるといわれます」 

 

 賢さという意味で人間はAIに勝てなくなってきたが、「直観に基づく選択が人間の最後のとりでだと思います」。 

 

 茂木さんはランニングが大好き。東京マラソンを何度も完走し、『走り方で脳が変わる!』(講談社)と題する著書もあるほどだ。茂木さんにとって走ることは体との対話であり、直観力につながっている。 

 

■AIと人間の協調は難しい 

 

 一方、AIの進化は厄介な問題も引き起こす。いや、すでに引き起こされている。 

 

 2023年秋に「フランスでトコジラミが大発生」という未確認情報が広がった。これはフランス社会の不安定化を狙ったロシア発の人為的増幅という見方まで出た。 

 

 日本でも2月下旬に「新NISA、規制か。財務大臣『円安の元凶』」というフェイクニュースが流れた。よく見れば相当低レベルの記事だったのに、名のある経済の専門家やインフルエンサーを含め、多くの人が一瞬、信じてしまった。 

 

「うーん、AIと人間の協調は難しそうです。SF作家でコンピューターサイエンスの専門家でもあったヴァーナー・ヴィンジの唱えた『ヴィンジの不確実性』と呼ばれる問題があります。十分に発達したAIの振る舞いを人間は予測できなくなる、というものです。 

 

年齢の低い子どものすることを、大人はある程度予測できます。でも知性の高い人のすることって、当初は理解されにくくて、後になって伏線が回収される形になりますよね。『ああ、こういう意味だったのか!』って」 

 

「ChatGPT4はIQ約135(諸説あり)という推測があります。ノーベル賞受賞者の平均が140といわれているので、これを超えるAIが出てくると、ヴィンジの不確実性の問題(AIの振る舞いが予測不能になる)が起こるでしょう」 

 

 

 すでに囲碁や将棋の世界では、AIがなぜこの手を指すのか人間には理解できないケースがあり、棋士が必死で研究している。 

 

 茂木さんは2023年、受験シーズン真っただ中の季節にSNSで偏差値について厳しい発言をした。 

 

 私立大学の明治、青山学院、立教、中央、法政の頭文字から受験業界が「MARCH」とひとくくりにすることを「軽薄な風潮」と断じ、「この国を停滞させていると確信している」と厳しく批判したのである。 

 

 発言の真意を説明すべく、例を挙げた。 

 

「科学でも芸術でもスポーツでも何か一つのことを上手にやるのはとても難しい。たまに会う、松任谷由実さん。彼女は15歳のときからあれだけの楽曲を作っていたんです。天才ですよ」 

 

「サッカーの元日本代表にリフティングを何回できるかを尋ねてしまい、あとから赤面したことがあります。 

 

僕なんかはリフティングを1回、2回と数えるのですが、彼らにはリフティングを数える発想なんてなかった。実力のスケールが違うわけです。そういう人たちが世の中を切り開いていく」 

 

■誰にでもバカの壁がある 

 

「夏目漱石(なつめそうせき)は希代の文豪ですが、絵が好きだった。漱石が本当にやりたかったのは絵ではなかったかと思うくらい。 

 

でも漱石にも養老孟司(たけし)先生がおっしゃった『バカの壁』があったようで、絵を上手に描くことはできなかった。誰にでもバカの壁はある」 

 

 絵や音楽やスポーツだけではない。「あなたの種目」はたくさんある。 

 

「養老孟司先生は僕に、茂木君みたいな変わった人もいていいのが日本という国なんだよ、と言ってくれました。だから日本にはとても感謝しています。でも、養老先生が言うには、僕のような人間は主流にはなれないそうです(笑)」 

 

 そしてMARCHの話に戻る。 

 

「受験勉強なんて、たったの5科目とかですよ。その程度のものに偏差値とかMARCHとか言って、実にくだらない」 

 

 東大生がクイズ選手権にのめり込む姿にも違和感を覚えるという。 

 

「そんなことで楽しんでいても仕方ないのではないか、と思ってしまう。 

 

僕は『成績がいいから褒められる』ってことに興味がなかった。小学5年生からアインシュタインって言っているわけだから。子ども心に、将来は世界に出て英語でやるしかないと思っていました」 

 

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