( 188396 )  2024/07/07 14:50:30  
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一部の人気ラーメン店がSNSで客の"マナー"について注意や苦言を投稿し、議論を呼んでいる。

店側はリスクを承知でこの行動を取る理由について、元人気ラーメン店経営者からの見解が示唆されている。

店には独自のルールがあり、守らない客に注意を促すためにSNSで投稿することがあるが、それにより炎上するケースもある。

店側はリスクを承知で投稿し続けるが、客からの批評や視線は厳しいため、お互いにリスペクトを持って向き合うことが大切であると述べている。

(要約)

( 188398 )  2024/07/07 14:50:30  
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画像はイメージです。本文中に登場する店舗とは関係ありません(写真=アフロ) 

 

 人気ラーメン店で、店側がSNSに客の「マナー」に対する注意や苦言を投稿し、議論を呼ぶ事例が続いている。時には店側が“炎上”することもあり、投稿が不利益につながる可能性もあるが、なぜあえてそうした行動に出る店が続くのか。かつて人気ラーメン店を経営していた男性に「中の人」目線で見解を聞くと、店側の切実な事情も垣間見えてくる。 

 

【写真】ラーメン店の“接客”への不満をつづって炎上した女性タレントはこちら 

 

*  *  * 

 

《店内でイヤホンつけるの止めて欲しい。ラーメンのお好みを伺っても聞こえてない、ラーメン出す時にお声がけしても聞こえてないから受け取ってくれない。イヤホンつけて動画見ながら食べてるから店の回転が悪くなる》 

 

 X(旧Twitter)にそう投稿したのは、東京・早稲田にあるラーメン店「武道家 本店」の店主だ。店内にはスマホを見ながらの食事は禁止だと掲示しているとし、「昔はこんなことなかったよ」とこぼした。 

 

 これに対し、SNS上ではさまざまな意見が飛び交った。 

 

「迷惑なら注意は当然。客は神様じゃない」 

「店と客の、暗黙のルールを理解しない人が最近は多すぎる」 

 

 といった店側を擁護する意見もあれば、 

 

「自由にさせてほしい。カフェならいいのに、なぜラーメン店はイヤホンNG?」 

「食べるときの楽しみ方は客の権利。迷惑という程の行為なのか」 

 

 という否定的な声も少なくなかった。 

 

■リスク承知でSNS投稿する理由 

 

 この店と同様に、スマホで動画などを見ながらの食事を禁止しているラーメン店は少なくない。この他、 

 

▽(店外の)行列には黙って並ぶ。できないなら来ないで 

▽食べない人の入店は禁止(数人で来た中にラーメンを注文しない人がいる) 

▽18歳未満は入店禁止 

 

 など、人気ラーメン店は店独自のルールを掲げていることがあり、守らない客に対しSNSで厳しい言葉で注意喚起し、逆に炎上するケースが続発している。 

 

 なぜ、リスクを承知でこうした行動に出るのか。 

 

「店側も、ルールがある場合はちゃんと掲示していることが多いですから、なるべく注意はしたくないはずです。ただ、店内で直接お願いをしてもルールを守ってもらえない状況が続いた場合は、SNSなどで広く呼びかけるしかなくなります。結果、ネットで低評価を付けられたり、店を悪く書かれたりというリスクが生じることは分かっていますが、そうしなければならない状況に追い込まれているのだと思います」 

 

 こう話すのは、青森県八戸市で「ドラゴンラーメン」を経営していた公認会計士の石動龍さんだ。2022年秋に閉店したが、行列ができるほどの人気店で、石動さんは時には厨房(ちゅうぼう)にも立ち、食材の仕入れも担当していた。 

 

 冒頭の“イヤホン騒動”では、店主がなぜ困っているかをXに記しているが、石動さんはさらにこう付け加える。 

 

「行列店では、お客さんが食べ終わるころを見越して調理を始めるなど、回転を良くして並んでいる人がなるべく早く店に入れるように工夫をしています。このため、周囲のお客さんと明らかに異なるほど長く滞在されると、とても困ります。イヤホンは絶対に迷惑、ということではなく、長く滞在されるなど困ってしまう事態が続いたため、SNSで一律に呼び掛ける状況になったのではないでしょうか」 

 

 

■店主の人生がかかっている 

 

 人気のラーメン二郎や、いわゆる「二郎系」ラーメン店でも、麺が太くゆで時間がかかることから、席が空く前に麺をゆで始める店もある。 

 

「食べ終わったのになかなか席を立ってくれないと、ラーメンを作り直すこともあります」(石動さん)という。いつ席を立つかは客の自由だが、常連客からは暗黙のルールを破っていると、批判の声もある。 

 

 では、店外の行列に黙って並ぶようにルール設けている店はどうか。 

 

 6月21日、「ラーメン二郎 環七新新代田店」は公式Xで「黙って待てないひとと1列にならべないひとは来ないでください」と投稿しSNS上で議論が巻き起こった。客側からは「道路は店の管轄外で言われる筋合いはない」などの反発もある。 

 

 石動さんは、「お客さんがそう言いたくなる気持ちは分かります」としつつ、話し声が近隣の住民や店舗の迷惑になっていたり、うっかりか故意かは分からないが、客が店のそばの私有地に入ってしまったりする事例があると指摘する。 

 

「ご近所さんからの苦情に対し、謝罪するのは店側です。それでも問題が解消されなければ、最悪の場合、閉店せざるを得なくなることもあります。店主の人生がかかっていることを、理解して欲しいと思います」 

 

 とある人気店では、路上駐車をやめるように何度も呼び掛けているにもかかわらず、しらを切って路駐する客が後を絶たず、SNSで強い言葉で注意を促した。 

 

 駅から徒歩で行ける距離。にもかかわらず路駐が繰り返され、近隣にとっては「迷惑な店」になっている側面もあるのかもしれない。 

 

■客が「批評家」になりやすい 

 

 賛否あるラーメン店のマナー問題。今後の在り方について、石動さんは「店側も客側も、お互いにリスペクトをもって向き合うべきではないでしょうか」と話す。 

 

 飲食店の経営はやりがいがあり楽しいが、長時間労働などストレスフルな側面も否定できない。客の意に反することがあれば、時にネットで厳しい評価を付けられる。言葉が乱暴なことも少なくない。 

 

 石動さんは、特にラーメン店の客は批評家風になりやすく、あらゆる面に対し視線が厳しいと感じている。一方で、お金を払って食べてくれる客であっても、守ってもらいたいことは守ってもらわねば、店を続けていけなくなるという現実もある。 

 

「客側は厳しい目線や評価だけではなく、優しい気持ちを持つことも必要だと思います。店主や店員にも家族や子どもがいて、重ねて言いますが、人生がかかっているのです」(石動さん) 

 

 店側も使う言葉には注意しなくてはならないが、そこまで追い込まれているのではないかと客側が想像することも、大事なのではないだろうか。 

 

(國府田英之) 

 

國府田英之 

 

 

 
 

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