( 189568 ) 2024/07/10 17:15:34 0 00 Photo/gettyimages
中国経済はすっかり「不況慣れ」した感がある。中国の6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.5と2ヵ月連続で好不況の境目である50を下回った。非製造業PMIも50.5と5ヵ月ぶりの低水準となった。
【写真】これはヤバすぎる…!中国で「100年に一度の大洪水」のようす
不動産不況が経済全体の足かせとなっている構図が続いている。
中国民間企業によれば、6月の新築住宅価格の伸び率は5ヵ月ぶりの低水準となっており、政府の不動産市場支援策が功を奏していないことが明らかになっている。
中国経済にとって「頼みの綱」は電気自動車(EV)だ。
中国科学技術協会の万鋼主席(元中国人民政治協商会議副主席)は「中国の今年のEV生産台数は前年に比べて49%増加し、1000万台を突破する」との見方を示したが、筆者は「楽観的すぎる予測だ」と考えている。
欧米、特に欧州で中国製EVの輸出に陰りが見えているからだ。
欧州連合(EU)は7月5日、中国製EVに対して最大37.6%の上乗せ関税を課し始めたが、6月頃から欧州の主要港で中国製EVが大量に滞留している状況となっているという。
ドイツ政府が昨年12月にEV購入者に支給していた補助金を打ち切ったことが、主な要因だ。欧州最大のEV市場であるドイツの需要が冷え込んだため、中国製EVが行き場を失ってしまったというわけだ(7月2日付東洋経済オンライン)。
さらに、ヨーロッパではただでさえEVやPHV(プラグインハイブリッド車)の販売台数が減速傾向にある。2024年1月から4月までの販売台数は88万1000台で、これは前年同期比で8.6%とひと桁台の伸びにとどまっている(SNEリサーチ)。
2023年の中国製EVの輸出は4割が欧州を占めたが、今年は著しく鈍化している。
中国EV大手のBYDは、フル充電、ガソリン満タンでの航続距離が2100キロメートルのPHVを販売するが、その価格は9万9800元(約220万円)。「この価格は信じられない」とメーカーからは悲鳴の声が上がっており(日経ビジネス7月4日)、中国のデフレ輸出への批判は、高まりこそすれ収束する様子は全く見えない。
しかし、問題視されているのはEVだけではない。
EVの売れ行きが鈍化し、今度はあまったプラスチックの輸出がやり玉にあげられている…Photo/gettyimages
不動産バブルの崩壊で、中国国内で余ったプラスチックが海外に大量に輸出されるようになっており、新たな貿易摩擦の火種になりつつある(7月2日付ブルームバーグ)。
未来のエネルギーと期待される水素でも同様の事態となりつつある。欧州の水素製造装置企業は「中国企業との不公平な競争に直面している」として、EUに域内産業を支援するよう求めている(7月1日付ロイター)。
中国政府は輸出拡大で経済が回復することを期待しているが、不動産市場に本格的なテコ入れを行わない限り、不況からの脱出はおぼつかないだろう。
さらに後編「中国「不法移民」が世界で摘発…!習近平の「不動産対策の放置」が招いた「EV大失速」と、「内需低迷」の悲惨な末路」では、これから本格的に始まる中国経済失速の背景を探っていこう。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)
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