( 189996 )  2024/07/12 01:39:37  
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学歴研究家の伊藤滉一郎氏によると、優秀な学生は今では「外資コンサル」が人気で、裁量権が大きく成果次第で高年収を得られるため、就職先として人気がある。

昔は外資系コンサルは旧帝大や早慶以上の大学出身者が主だったが、近年は採用数の増加に伴い変化が起きている。

大手総合コンサル企業である「ビッグ4」などは、特に需要が高まっており、大量採用を行っている。

これにより、就職先の幅が広がり、コンサル業界のポジションが変化している。

一部のクライアントは若手新卒に対して疑念を持っており、「MARCH卒にコンサルされたくない」といった声も聞かれるようになっている。

(要約)

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix 

 

優秀な学生はどんな企業に就職しているのか。学歴研究家の伊藤滉一郎さんは「裁量権が大きく、成果次第で高年収を得られる『外資コンサル』が人気だ。こうした企業の採用大学は『旧帝大・早慶以上』とされてきたが、近年では採用数の増加に伴って変化が起きている」という――。 

 

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■なぜ「偏差値秀才」は外資コンサルに就職するのか 

 

 2010年代以前の外資系コンサルティング会社は、エリートの代名詞として知られていた。 

 

 昭和の時代より、偏差値秀才の大学卒業後の進路は、国家公務員、医師や弁護士といった士業、そして都銀や商社などの大手日系企業と相場が決まっていたが、2000年代に入りエリートたちの間に生まれた新たな選択肢として「外資コンサル」が急遽浮上する。 

 

 ネットメディアやSNSでは、「東大生の官僚離れ、彼らの視線はコンサルへ」といった記事がセンセーショナルに発信されるようになった。 

 

 JTC(Japanese Traditional Company)と呼ばれる伝統的日系企業では終身雇用・年功序列が前提となっており、若いうちは年収が低く抑えられているのが一般的だ。大手企業であっても、年収が1000万円に到達するのは30歳を超えてからというのが普通である。 

 

 これに対し、外資系のコンサルでは若手のうちから裁量権が与えられ、成果次第では20代で1000万円超の高年収を得ることも可能だ。 

 

 終身雇用制度が崩壊しつつある現代において、コンサルは若いうちから成長のチャンスが大きく今後の転職にも生きるといった声も目立つ。転職や独立ありきで、あくまでファーストステップとして捉える考え方である。 

 

■総合コンサルを代表する「ビッグ4」 

 

 「コンサル」は一括りにされることも多いが、実は内情はさまざまだ。 

 

 主なところでは、経営戦略をメインで行う「戦略系コンサル」、特定の領域ではなくさまざまな業界・サービスをカバーする「総合コンサル」、金融機関が設立した「シンクタンクコンサル」、ITシステムの業務改革を担う「ITコンサル」などがある。 

 

 中でも今回注目したいのは、あらゆるサービスを手がける「総合コンサル」だ。 

 

 これらは特定の分野に特化せず、IT、事業戦略、財務など多岐にわたる業界業種のクライアント企業の課題解決が求められる。 

 

 多方面からの需要に応える必要があり、従業員を多く抱える必要がある。そのため、社員数が数千人規模となるような大規模なファームがほとんどだ。 

 

 代表的なのが、「ビッグ4」と呼ばれるファームであり、デロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、KPMGコンサルティングの4つを指す。これらにアクセンチュアを加えて「ビッグ5」と呼ぶこともある。 

 

 これに加え、近年勢いを増すベイカレント・コンサルティング、日系のアビームコンサルティングなどが有名どころだろう。 

 

 

■「就職市場」に起きている変化 

 

 「ビッグ4」などの総合コンサルの採用大学は、2010年代までは「旧帝大・早慶まで」といわれており、MARCH以下の学生はなかなか内定に至らないシビアな状況にあった。 

 

 ところが、近年エリートの牙城であった総合コンサル就職市場に変化が起きている。 

 

 アクセンチュアやベイカレントといった「総コン」たちは、玉石混交系の大量採用企業へと姿を変えつつあるのだ。 

 

 「民間就職への意識が日本一高い」と言われている慶應義塾大学の最新の就職先企業ランキングを見ていこう。2023年度のトップ5の顔ぶれは以下のようになっている(図表1)。 

 

 10年前には大手金融が就職先上位を独占していたものだが、今ではすっかりコンサルに取って代わられていることがわかるだろう。 

 

■MARCHからアクセンチュア、デロイトに就職できる 

 

 現役の学生に聞いても、近年は超難関企業を狙う学生が「練習台」としてベイカレントやアクセンチュアなどの選考を受けているという。まさに2010年代の大手金融の立ち位置である。 

 

 中でも特に積極採用を行うアクセンチュアには今年、早稲田・慶應から各100人ずつ就職し、東京大学、京都大学、大阪大学、北海道大学からの就職者トップにもアクセンチュアが君臨した。2015年に約6000人だった社員数は、2024年3月1日時点で約2万3500人と、約9年で4倍に成長。単純計算で毎年2000人ずつ採用している計算になる。 

 

 早慶にとどまらず、コンサル大量採用の波はMARCHにまで波及してきている。 

 

 明治大学の最新の就職データを見てみると、アクセンチュアに38人、デロイトトーマツコンサルティングに17人の就職者が出ており、立教や青山学院からも少なくない数が総合コンサルへと進路を確定させている。 

 

 また中途採用では、MARCHにとどまらず日東駒専卒の社員も増えているという。 

 

 「コンサルは旧帝早慶まで」という暗黙の常識は覆ったのだ。 

 

 

■なぜコンサルが「大量採用」するようになったのか 

 

 昨今のコンサルタント大量採用の要因として、DXやAIに関する案件需要が劇的に高まったことが挙げられるだろう。 

 

 この手の案件は労働集約型のモデルを前提としており、社員を雪だるま式に増やしていくことが必至となる。 

 

 コンサルタントが稼働し価値を提供した分だけ売り上げが上がるモデルであり、数年もたたずに大量の離職者が出ることも踏まえると、まずは人手を確保しなければ始まらないのだ。 

 

 新卒採用の場合、スキルや専門性はさほど必要なく、ある程度の思考力があれば採用されるというのが現状のようだ。 

 

 一方、アクセンチュアの中途採用の求人情報を見ていくと、SIer出身者を積極的に採用したいという意向が伺える。 

 

 システム開発や導入の案件が多く、富士通やNTTデータなどの大手SIer出身者は歓迎されるのだという。もちろん、経験重視で学歴はほとんど考慮されない。 

 

 このような今の総合コンサルの採用状況に対し、筆者は既視感を覚えた。10年前のメガバンクの採用状況と重なる部分があるのだ。 

 

■その多くは転職前提の「ソルジャー枠」だった 

 

 2010年代のメガバンクは、いわゆる「ソルジャー枠」を中心とした大量採用を行うことで知られていた。 

 

 東大京大がメインとなる数十人の幹部候補、早慶MARCHを中心とした500~700人のソルジャー総合職、女子大を中心とした1000人近くの一般職が毎年採用され、まるで巨大戦艦のような様相を成していた。 

 

 2016年には、なんとメガバンク3行合わせて5000人以上採用している。 

 

 今から10年前の2013年度の慶應義塾大学からのメガバンク就職者数を見ていくと、みずほフィナンシャルグループ143人、三菱東京UFJ銀行117人、三井住友銀行74人と、やはり相当な数を採用していることがわかる(図表2)。 

 

 こうした採用状況に乗じて、総合商社や大手広告代理店を狙う学生たちが「練習台」としてメガバンクの選考を受けるという風潮も生まれた。今の学生が練習でアクセンチュアやベイカレントにエントリーするのと同じような状況だ。 

 

 当時のメガバンクは就職者の多くが離職することを前提としていたため、それを見越して多めに採用するという事情もあったようだ。 

 

 

■3メガバンの新卒採用は5000→1200に激減 

 

 メガバンクの30歳時点での離職率は2~3割程度と言われており、入行10年以内に数百人が去っていくことになる。 

 

 常に数字に追われるストレスフルな環境に独特な企業文化も相まって、合わない人にとっては地獄のような環境となっており、体育会出身者を多くとっているのにもかかわらず退職する者は後を絶たないのだ(私も耐えかねて退職した人間の1人だ)。 

 

 そのため、玉石混交になることは承知の上で、とにかく人手を増やすことが求められた。 

 

 総合職であっても、MARCHや関関同立からの就職者は多く、一芸に秀でた日東駒専卒も採用された。 

 

 こうしたメガバンクの大量採用は2016年にピークを迎える。その後は店舗の統廃合や事務の効率化、ネットバンキングの普及などを背景に新卒採用を大幅に絞るようになった。2024年入行の採用計画はメガバンク3行合計で約1200人と、ピーク時の5000人超と比べて4分の1以下となっている。 

 

■「MARCHにコンサルされたくない」という声も 

 

 それと入れ替わるように、「総合コンサル」の急拡大が始まった。エリートにのみ開かれていたはずのコンサル業界は、案件需要の増加に伴う大量採用により、すっかり一昔前のメガバンクのようなポジションへと姿を変えた。 

 

 大企業を中心としたDX需要は今後も継続することは確実であり、総合コンサルの大量採用傾向は今後もしばらく続くものと予想される。 

 

 一方で、採用大学の「幅」が広がったことから、最近ではコンサルタントの質に不安を覚えるクライアントも増えてきているのだという。中には、「大学を出たばかりの新卒に何をコンサルできるのか」「MARCH卒にコンサルされたくない」といった過激な声も聞かれる。 

 

 「エリート」の象徴であったコンサルの地位は、揺らぎつつあるのかもしれない。 

 

 

 

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伊藤 滉一郎(いとう・こういちろう) 

受験・学歴研究家、じゅそうけん代表 

1996年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、メガバンクに就職。2022年じゅそうけん合同会社を立ち上げ、X(旧Twitter)、InstagramなどのSNSコンサルティングサービスを展開する。高学歴1000人以上への受験に関するインタビューや独自のリサーチで得た情報を、XやYouTube、Webメディアなどで発信している。著書に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。 

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受験・学歴研究家、じゅそうけん代表 伊藤 滉一郎 

 

 

 
 

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