( 190131 )  2024/07/12 15:50:21  
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セルフ式うどんチェーンの「はなまるうどん」が苦戦しており、店舗数は減少し、売り上げも低迷している。

一方、丸亀製麺は店舗数や売上高が増加し続けている。

両者は同じくセルフ式で天ぷらなどのトッピングが選べるが、立地やブランド力の違いなどが影響している。

コロナ禍で丸亀製麺はロードサイド型立地や素早いテークアウト対応で業績を維持し、一方のはなまるうどんは都市部の店舗が影響を受け、業績が悪化した。

(要約)

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丸亀製麺とは対照的に不調のはなまるうどん(出所:同チェーン公式Webサイト) 

 

 セルフ式うどんチェーンの「はなまるうどん」が苦戦している。グループの店舗数は2020年2月期末時点で522店舗あったが、2024年2月末時点では418店舗と、コロナ禍をまたいだ4年間で100店舗も減少した。売り上げも以前より少なくなっている。 

 

【画像】そういえば話題になったね! 丸亀うどん弁当、丸亀製麺のシェイクうどん。そして、はなまるうどんの定番うどん弁当(計4枚) 

 

 対する丸亀製麺は850店舗ほどをキープし、売上高も以前より膨らみ成長を続ける。セルフ式かつトッピングで天ぷらなどを選ぶシステムは両者とも同じだが、なぜ明暗が分かれたのだろうか。調べると、立地もさることながら、コロナ禍以前からの“文脈”も影響しているようだ。 

 

 はなまるうどんは2000年に創業した。丸亀製麺と同様、天ぷらなどのトッピングを自分で取りながらうどんを注文し、会計後に自分の席へ持っていくシステムとなっている。「かけ」「ざる」といったうどんメニューは丸亀製麺と同じだが、天ぷらの種類がやや少ない点、カレーや丼ものなど飯類を比較的多く提供している点に違いがある。 

 

 はなまるうどんは2003年に100店舗を達成した後、2004年に吉野家ディー・アンド・シー(現在の吉野家ホールディングス)と資本業務提携を締結、2006年に連結子会社となった。その後、2012年に完全子会社となり、現在は吉野家ホールディングスの「はなまる事業」として運営されている。 

 

 そんなはなまるうどんだが、コロナ禍で業績が著しく悪化した。従来通り店舗数を増やす計画だったが、2020年度の既存店売上高は前年で35%も減少し、撤退・縮小を余儀なくされた。2020年2月期から2024年2月期における、はなまる事業の売上高とセグメント利益、店舗数の推移は次の通りである。 

 

売上高:約308億円→約203億円→約214億円→約253億円→約292億円 

 

セグメント利益:約12億円→約▲31億円→約▲13億円→約▲2億円→約17億円 

 

国内店舗数:522→490→463→445→418 

 

 

 苦戦するはなまるうどんに対し、丸亀製麺は好調だ。国内の丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスの決算資料によると、2020年3月期から2024年3月期の業績は次の通りである。 

 

売上高:約956億円→約809億円→約921億円→1021億円→約1148億円 

 

セグメント利益:約138億円→約23億円→約105億円→約116億円→約183億円 

 

店舗数:845→855→832→833→840 

 

 2021年3月期は売り上げが大幅に減少したものの翌年度にはすぐ持ち直し、2023年3月期はコロナ禍前の水準まで回復した。この間、店舗数はほぼ変わっていない。 

 

 コロナ禍で好調を維持した背景にはロードサイド型立地という特徴がある。丸亀製麺は都市圏の駅前にも店舗を構えているものの、立地の主体はロードサイドだ。コロナ禍では都市部の飲食店が打撃を受けた一方、休日の人流が郊外に流れたこともあり、郊外型チェーンの業績はすぐに回復した。 

 

 素早いテークアウト対応も業績回復に貢献した。ロードサイド店を中心にテークアウト専用窓口を整備し、2021年4月に持ち帰り専用メニューとして発売した「丸亀うどん弁当」は約1年で2000万食を達成するなど、大ヒット商品となった。 

 

 2023年5月に発売した「丸亀シェイクうどん」も話題を呼び、近年のテークアウト比率は10%台を推移している。依然として主な客層はイートインだが、テークアウト施策はCMのほかメディアでも頻繁に取り上げられたことから、宣伝効果を発揮したと推測される。 

 

 はなまるうどんは、ある程度地方・郊外にロードサイド店を出店しているが、イオンなど施設内フードコートの店舗が目立つ。都市部では人流減少の影響を受け、施設内店舗も商業施設の時短営業や休業の影響を受けたと同社は公表しており、やはり立地の特徴が業績悪化の主要因といえるだろう。ちなみに丸亀製麺は全店が直営店であるのに対し、はなまるうどんはフランチャイズ店もあり、退店にはフランチャイジー側の意向があるのかもしれない。 

 

 丸亀製麺と同様にテークアウト対応店を増やしたものの、そもそもイートインを想定したフードコート店では効果が薄かったと考えられる。2021年5月に丸亀製麺に続く形で「はなまるうどん弁当」を発売するも、後発のため話題性に欠けた点も痛かった。具体的な数値は公表していないが、テークアウト比率は丸亀より低いのではないだろうか。 

 

 

 はなまるうどんの既存店売上高は、コロナ禍の明ける兆しが見え始めた2023年2月期でも、2019年度比で85.6%と下回っている。2024年2月期は前年比で120.5%と公表しており、2019年度比で103.1%とようやく以前の水準を上回った。それにしても回復のペースは遅い。 

 

 はなまるうどんが苦戦する理由には、ブランド力の違いもあるだろう。1号店の出店はくしくも丸亀製麺と同じ2000年だが、はなまるうどんはオープン直後から「かけ(小)」を税抜100円で発売し、安さが売りのチェーンとして規模を拡大し、2013年まで100円を維持した。デフレ時代、うどん以外の飲食店も多い都市部やフードコートにおいて、価格競争に走らざるを得なかったのだろう。 

 

 一方の丸亀製麺はロードサイドを中心に出店し、香川県内の地名である「丸亀」というブランド力で勝負した。食べ比べしていなくとも、丸亀ブランドは一定の品質があることを印象付ける。加えて、丸亀製麺ではかけうどんの並を280円で提供しており、はなまるうどんほど極端な価格勝負には出ていない。先に200店舗を達成したのは、はなまるうどんだが、500店舗を達成したのは丸亀製麺が2011年、はなまるうどんが2019年と大きく差が開いた。 

 

 安さを売りにしたはなまるうどんと地名のブランド力で成長した丸亀製麺。飲食店は一般的に極端な安売りで集客すると、品質を訴求しにくいばかりか、その後の値上げで客足が離れてしまう傾向がある。この点で、明暗が分かれた部分もあるだろう。 

 

 吉野家ホールディングスは近年、はなまるうどんの再生に向けて不採算店の閉鎖を進めてきた。めどが立ったのか、今期は10店舗の純増を見込む。詳細は公表していないが、サラダバーや健康・美容をキーワードとする新コンセプト店の構想も発表しており、女性客を取り込もうとする狙いがうかがえる。丸亀製麺に2倍の差をつけられたはなまるうどんが、今後どうかじを取っていくのか注目したい。 

 

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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