( 191181 ) 2024/07/15 16:59:49 1 00 長澤まさみ出演のCMをきっかけに、中国の自動車メーカーBYDの認知度が向上し、日本で販売されているBEV(バッテリーEV)が好調に売れている。 |
( 191183 ) 2024/07/15 16:59:49 0 00 長澤まさみのCM効果でBYDの認知度が向上。中国製BEVは日本のユーザーにどこまで受け入れられるか(プレスリリースより)
長澤まさみ出演の「ありかも、BYD!」というコマーシャルのお陰もあってか、中国の自動車メーカーBYDの認知度が向上している。日本で販売する「ATTO 3」と「ドルフィン」と言う2台のBEV(バッテリーEV)が販売好調だという。その理由のひとつが「お安い」であり、購入動機の上位に来ているようだ。
【写真11枚】BYDのプレミアムBEV「SEAL」。タイカンに面立ちの似たスポーツセダン
これまでの状況を見るとエンジン車より2~3割以上高額になるのがBEVだが、BYDの日本販売モデル第3弾のスポーツセダン「SEAL(シール)」の価格はシングルモーター仕様528万円、ツインモーター仕様605万円。エンジンを搭載した同セグメントのドイツ車などと同じような値付けで、BEVが手に入ることになる。はたして走りや車内の質感など、プレミアムセダンとしての総合力はどうなのか。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。自動車ライターの佐藤篤司氏がBYDの「SEAL」をレポートする。
日本での第1弾としてSUV「ATTO 3」とコンパクトカー「ドルフィン」の2台のBEVを発売したBYDですが、2023年1月から2024年5月までの累計受注台数は2300台を超えています。そしてここに来てのBYDの広告戦略が、これほど上手く運んでいるとは……。
ある女性ライフスタイル誌の取材現場に、たまたま「ドルフィン」に乗って参加したときのことです。「あ、これですね、長澤まさみが乗っているヤツ」と、現場ではそれなりに高い関心を持たれたのです。さらに驚いたのは「これ、中国の自動車メーカーの電気自動車でね」と言ったのですが、「へぇ、コンパクトで可愛くて乗りやすそう」という感想は出てきても、「中国製」に対するアレルギーのような反応はほとんどなかったのです。
白状すれば「そうですか、中国製ですかぁ」という感想が出て、欧州ブランドに対し高い信頼を寄せる女性達や周りのスタッフの話は、それ以上進展しないかもしれない、と予想していたのです。ところが最近の若者達や女性達の中に、中国製に対するアレルギーのような感覚は、予想に反して希薄だったわけです。確かに電化製品でも自動車でも、サプライチェーンプラニングにおいて「メイドinチャイナ」は欠かせない存在ですから、我が身の感覚も更新しなければいけないと少々反省しました。
そんな中に登場した「SEAL(シール)」は、ちょっぴりポルシェのBEV、タイカンに面立ちの似たスポーツセダンです。モデルの構成はベースモデルとなるFR(後輪駆動/シングルモーター)と、4WD(4輪駆動/ツインモーター)の2仕様です。安さがひとつの特徴というわけですが、前述のようにシングルモーターが528万円、ツインモーターの4WDが605万円、どちらも「35万円」のCEV補助金(クリーンエネルギーヴィークル補助金)があります。シングルモーターは500万円を切ることになります。さらに日本導入記念として1000台限定で特別価格を設定したため、シングルモーターが495万円、4WDは572万円で上限に達するまで販売され、どちらのモデルも35万円の補助金があります。
輸入車のDセグメントと言えばメルセデスCクラス、アウディA4、BMW3シリーズなどなど、世界的に見てもボリュームゾーンにあたります。エンジン搭載車の価格帯でもると400万~700万円と言ったところが中心。これがBEV(SUVも含めて)となると、やはり少なくとも1割以上はシールより高額となります。唯一、価格面で戦えるBEVとすれば、500万円台で揃えた「テスラ・モデル3」と言ったところで、おまけにテスラのCEV補助金は65万~85万円となっています。
ちなみにこうしたメーカーや車種によって補助金に差が出るのは航続距離などの電費性能や、充電ネットワークなどのインフラ整備の貢献度が評価されたため。テスラはスーパーチャージャーという独自の充電施設を全国に展開していますから、それも評価されたのでしょう。当然ながら国産勢のBEVは日産を筆頭に充電網を現在拡充していることもあり、85万円のCEV補助金が出ます。
割高なBEVをお手頃に、ということで「シール」も、これから支持率が向上するのは間違いないでしょう。では、プレミアムセダンとしての仕上がりはどうでしょうか?
まずリチウムイオンバッテリー容量は82.56kWhで、1充電あたりの走行可能距離は、車両重量は2100kgのシングルモーター仕様の場合、WLTCカタログ値でシングルモーターは640km、ツインモーター仕様は575kmとなっています。「走行距離÷バッテリー容量」という単純計算による電費は、シングルモーターで7.75km/kWh、ツインモーターで約6.9km/kWhです。もちろん天候や走り方などで違いは出ますが、このクラスで電費が7.0km/kWh前後というのは良好な数値だと思います。
ひと通りスペックチェックを終え、日本で最上位モデルとなるシールの外観をチェック。フロントもリアスタイルもスッキリとしたデザインで好感が持てます。そして真横から見た低く、なだらかなフォルムはスポーツセダンと呼びにふさわしい佇まいです。車名の「シール」はアザラシを意味していますが、先にデビューして人気となっている「ドルフィン(イルカ)」の車名の方が、むしろふさわしいのでは、と思えるようなフォルムです。ちなみにドルフィンとシールは海洋生物の名前が与えられていますが、もう1台の「ATTO 3」は「100京分の1」という極めて小さな単位に由来しています。
さっそく車内に乗り込みます。最初の印象は広く確保された標準装備のパノラミックガラスルーフによる開放感でした。天井が低いセダンスタイルから来る圧迫感を解消してくれています。
また目の前に拡がるインパネ周りの風景はかなりスッキリとした印象。ドルフィンやATTO3にあったオーバーデコレート感はありません。最近のBEVはどんどんシンプルで情報や操作系が集約されていることを考えると、シールは90度回転する15.6インチの大型ディスプレイを中央に置き、ステアリングの奥にはもうひとつ10.25インチのディスプレイがあり、速度などが表示され、扱いやすく見やすいレイアウトになっています。
ヘッドレストが一体化となったナッパレザーのシートに身を預け、スタートしました。2.1トンの車重をものともせず、グングン加速していきます。0から100km/hまでの加速時間はシングルモーターで5.9秒、ツインモーターの4WDが3.8秒と切れ味抜群。モーターの強烈なトルク感と、そして静粛性を保ったBEVならではの走行感は、プレミアムの名にふさわしい味です。
さらに市街地やコーナリングではバッテリーセルをボディに組み込んだ最新のプラットフォームは剛性感が高く、上質な乗り味を実現しています。サスペンションの取り付け部の剛性も当然ながら高く、高速でも市街地でもフラット感のある乗り心地を実現しています。確かにBEVならではの重量感と、力任せの走行感覚はあるものの、そんな小さなネガをしっかりと吸収してくれる仕上がりです。
こうした性能を実現した上で、お買い得感のある価格に収めているのは、中国がレアアース生産では世界シェアの約7割を占め、さらにBYDがバッテリーに関するノウハウを持っていることやパーツの内製率が高いためでしょう。
一方でこうした状況を不公正、あるいは脅威と捉えた欧州連合(EU)規制当局は、中国製EVに対して現行税率の10%に加え、17.4~37.6%(メーカー別)の暫定関税を上乗せするとしています。欧州メーカーの競争力と強靭性を高めるための処置というのが理由でしょうが、ドイツ自動車工業会(VDA)はEU規制当局に対して、追加関税はドイツ国内産業に大きな打撃を与え、中国による報復関税のリスクもあると、取り下げるように要請を出したりしています。もはや車の性能とは別の次元の話になっているのです。ユーザーは「車の選択肢のひとつ」としてコスパのいい中国製BEVを考えているだけなんですけどねぇ……。
【BYD SEAL】 価格:528万円~(シングルモーター/税込み)※先着限定1000台は495万円~ 全長×全幅×全高=4,800×1,875×1,460mm ホイールベース:2,920mm 車重:2,100kg 最小回転半径:5.9m 最低地上高:未発表 駆動方式:FR モーター:永久磁石同期モーター 最高出力:230kW(312PS) 最大トルク:360N・m(36.7kgf・m) 一充電走行距離:640km(WLTCモード)
【プロフィール】 佐藤篤司(さとう・あつし)/男性週刊誌、男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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