( 192816 ) 2024/07/20 14:57:46 1 00 現職の小池百合子氏が3選を果たした東京都知事選挙について、候補者の多様性や議論などが話題となった。
内海聡候補は、反ワクチンやサイエントロジー教会などの主張を展開し、ワクチンを否定する立場をとっている。
選挙での候補者たちの多様性や主張の相違についての報道は有益であると述べられており、選挙における候補者のありようが注目を集めている様子が伝えられている。 |
( 192818 ) 2024/07/20 14:57:46 0 00 Adobe Stock
現職の小池百合子氏が3選を果たした東京都知事選。都民の安定、継続志向があらためて浮き彫りになった形だったが、「当落を目指さない候補」の乱立も印象に残る選挙だった。ニュースサイト『やや日刊カルト新聞』主筆でもあるジャーナリスト・作家の鈴木エイト氏が、独自の視点で今回の都知事選候補を振り返るーー。
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56人が立候補し様々な話題を呼んだ都知事選。フリー記者からの質問を浴びないよう苦心した現職の小池百合子氏が約291万票を獲得し3期目の当選を果たした。当選を目的としない候補者がいるなど、掲示板の枠が足りなくなる問題が起こるなど何かと論議を呼んだが、個性的な主張を行う候補者がいるのは毎回のことであり、選挙のありようが議論されるのは有益なことである。
選挙運動中は候補者・政治家の生の声、対応、有権者にどう向き合っているかなど、多くのことが可視化される貴重な場だ。私はこれまで、様々な選挙において具体的な追及対象者が立候補している場合や応援に入っている場合は現場に行き、直撃取材を行ってきた。いわゆる「選挙漫遊」(※スポーツ観戦のノリで街頭演説などに足を運び選挙を積極的に楽しむこと)として、選挙取材に行き、候補者の話を訊き、現地で起こったことを記録してきた。
今回の都知事選でも各候補者の街頭演説を観て回った。私が着目したのは反ワクチンや陰謀論など突飛な主張を繰り出す候補者や応援演説者たちだった。そして選挙戦最終日に抱いた新たな懸念についても記そうと思う。
まずチェックしたのは内海聡候補の演説。ハンドルネームで「キチガイ医」を自称するように内海氏は「医師」ではあるものの、反ワクチン・反WHOを掲げる界隈のスポークスマン的存在の池田利恵氏とともに反ワク政治家のネットワーク「チーム日本」の中心メンバーでもある。内海氏自身も2018年以降は政治団体を作って活動している。
内海氏は2015年、Facebookへ投稿した以下の内容が非難されるなど何かと物議を醸してきた人物だ。
「障害の子どもさんが生まれるというのは、いかに産む前妊娠前に両親が食と生活が乱れているかの証、それは一生かけて反省しなければなりません」
「障害者の親は一生反省してもらってけっこう」
特徴的なのが現代医療への否定的論調、精神医学・向精神薬治療を否定していることだ。その点においてサイエントロジー教会系の『市民の人権擁護の会』とも親和性が見られる。
経営するクリニックではニセ医学のホメオパシー*1などを導入。2013年にNPO法人薬害研究センターを設立、ワクチンについても効果を否定し逆に病気が増えると主張している。「自閉症や発達障害はワクチンが生み出した」などの 理論を展開、HPVワクチンにも否定的で子宮頸がんワクチン被害者の会の事務局長である日野市議の池田利恵氏との親和性も高い。新型コロナワクチンについても「効果がなく副反応の問題が大きい」と否定、製薬会社と国の意図をほのめかしており、都知事選公約にも「ワクチンの闇を暴く」とある。
私が主筆を務めるウェブメディア『やや日刊カルト新聞』において同紙総裁の藤倉善郎氏ともに内海氏について複数回取り上げてきた。サイエントロジー教会フロント団体との関係、内海氏が結成にかかわった日本母親連盟の問題などを報じてきた。2018年に内海氏が設立し顧問に納まった日本母親連盟は、現在内海氏が政治活動を行う「市民が作る政治の会」の前身である。地方議員には同会から数人を送り込んでいる。相当数の反ワクチン地方議員が存在しており、当選を果たしている。
私は内海氏から相当警戒されており、これまでの取材で顔を合わせると「何しに来たんですか、スパイですか」「クソみたいなジャーナリストが来ている」などと言われてきた。
今回は2度、内海氏の選挙運動を取材した。最初は6月21日に池袋で行われた街頭演説。電磁波を防ぐためとしてマイクにアルミホイルを巻く内海氏は医師であることのアピールであろう、紺色のスクラブを着ている。演説内容にはワクチン推奨への疑義など反ワクチン発言が目立つ。
外資のファイザーと東京都との福祉・保健医療分野での連携協定凍結を利益相反ではないかと糾弾する場面では、聴衆が一斉に拍手喝さいを送っていた。市民が漠然と不安に思う「薬害」「副反応」「副作用」などを示す手法であり、支持者が盛り上がるポイントを押さえている。演説終盤になると「都民ワーストの会 ゆりこいけ」「無所属共産党 ソ連邦」の幟を持った小池百合子知事と蓮舫氏のコスプレ男性が登場。聴衆は大ウケだったが、この手の“悪ノリ”は、コアな支持者以外からは反感しか買わないだろうと感じた。
内海氏は選挙戦最終日の7月6日、国会議事堂前で「集え、1万人」と題し「令和の一向一揆」を掲げ『国会前街頭演説』を行った。事前に告知されていた応援弁士の16名の顔ぶれを見ると、池田利恵氏を始め反ワク界隈の著名人が目立つ。街宣車の上からの演説のトップバッターは近代史研究家で作家の林千勝氏。「我々の敵は~」「3発目の原爆が落とされようとしているんですよ!」などと聴衆を煽る。参加者からは林千勝氏に「林先生も急に活動家になっちゃったな」の声も飛んでいた。
その他の演説者も扇動的な発言を連発、内海氏を支持する地方議員も数人が演説を行った。右派系の主張をする論客も多い。これまでの反ワクチン運動は左派系が中心だったが保守系による国民運動が反ワクを取り込んでいる印象だ。市民運動の殻をまといながら勢力を伸ばしている印象もある。しかしながら思想的な背景が異なる市民が共闘する場面においては少なからず軋轢が起こっているらしく「売国奴がいる」「彼らにやられてしまう」「我々同士でいがみあってはいけない」「団結が必要」などの発言が複数の応援弁士から発せられていた。
利害が一致する局面では協働し、パイを取り合いながら、マーケットを増やしていく必要があるのだろう。「諦めない」「天が見ている」などの発言を含め、私には如何にして支持者を繋ぎとめ増殖させていくのかという「信者ビジネス」の側面が垣間見えた。
4月に池袋、5月に日比谷で開催された大規模な反ワク反WHOデモや集会にはそれぞれ約5千人、約1万人の「同志」が参集していたが、その流れが都知事選に持ち込まれた格好だ。今回、内海氏は「1万人を集める」と豪語していたが、多く見ても2千人ほどだった。だが、確実に界隈の人口が増殖していることは否定できない。
なぜこれほど拡大したのか。コロナ禍を経てワクチン行政に対する漠然とした不安につけ込み偏った情報がYouTubeなどを通して拡散、自己増殖していったと言える。ニセ科学やニセ医学に傾倒してしまう人は書籍やYouTubeなどから取り込まれてしまう傾向がある。聴衆には幼い子どもを連れた親の姿も多かった。2世の問題も遠からず顕在化するだろう。
同じく都知事候補の田母神俊雄氏も内海氏の国会前演説に登場。田母神氏は5月の日比谷野外音楽堂での集会に参加し満員の聴衆から大歓迎を受けていた。今回の国会前での共闘アピールの場面では、田母神氏の応援演説を各地で行ってきたデヴィ夫人がマイクを握り「私もワクチン反対です!あんな一年足らずで作られたもの、怖くて打てません!」と発言し大喝采を浴びていた。
田母神候補のスタッフや応援には、反ワク的な思想背景が指摘される参政党の関係者が入っていたことも確認されている。
途中から豪雨となる中、内海氏の最終応援演説は池田利恵氏。
「この雨はワクチンで亡くなられた方々からの応援です!」
界隈の戦略はすでに次の展開に向けていると見られ、ある応援演説者は「内海氏と田母神氏で何票取れるかに注目」と発言していた。
演説の一部に反ワクチンなどの陰謀論的要素を入れている内海氏とは違い、ど真ん中直球の陰謀論を展開していたのが未来党の候補者・木宮光喜氏だ。木宮氏が出馬表明の会見で主張した政策は「人類史上初の徳政令である『GESARA(ゲサラ)法』の実現」だ。
『GESARA(ゲサラ)法』によって、すべての国民の借金・各種ローンが帳消しになるという。その財源は「闇の政府」である『ディープステート(DS)』に奪われた金の利子が充当され、日本のみずほ銀行にあるとの主張だ。選挙戦最終日に新宿アルタ前で行ったマイク納めも一貫して『GESARA(ゲサラ)法』、陰謀論全開だった。
「すべての借金が帳消しになり税金も消費税もなくなり、毎月無条件に一人24万円がもらえる国際法GESARA法の実現のために国会の同意が必要」
「国際法の国内での適応される条件」
「これまで20年以上前に日本も賛成して成立した国際法」
「これまで政界財界宗教界メディアは国民に存在すら知らせなかった」
「日本国民が目覚めた」
“世界のジャンヌダルク”を自称する木宮氏は止まらない。
「戦争しないことが条件。戦争させて武器を売って敵味方を作ってカネを貸してきた文化複合体を作って過去数百年お金を儲けてきた」
「DSから妨害された」
「敵味方を作ってしてお金を儲けてきたディープステートという勢力から賄賂、便宜 政界財界宗教界メディアのトップ」
「トランプ改革を中心に解体することに成功した」
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