( 193053 ) 2024/07/21 01:01:14 0 00 石丸伸二氏にマスメディアへの思いを聞いた(酒井真大撮影)
先の東京都知事選で2位に躍進した石丸伸二氏(41)。「マスメディアは当初から自らを取り上げてくれなかった」と批判するが、産経新聞を含む既存の新聞やテレビは、どう映ったのだろうか。記者と政治家のあるべき関係性など、さまざまな問いをぶつけた。
【画像】都知事選で注目の石丸伸二氏をモチーフにした映画「掟」のポスター
■阿吽の呼吸になっている
ーー石丸さんは著書で、「既存のメディアも政治家と多少べったりしすぎて、そこに引っ張られすぎているんじゃないか」と書いた。私は政治記者を約20年やってきたが、率直にどう映るか。
石丸 阿吽の呼吸になっちゃっている気はする。ときにそれは取材対象者、すなわち政治家が望むようにばかりなっているというわけではないが。
例えば、選挙の後のインタビューには大体お決まりのパターンがある。聞く方も答える方も「これでいこうね」みたいなものがある。聞きやすいし、しゃべりやすい。お互い楽しているなと。
一方、今回蓮舫さんは、選挙の後は気分を害されているようにお見受けする。あれはやはり、(メディアが)いつものパターンでやりすぎちゃっていると思う。「決して政治家に甘いという意味ではない」というのが、その動きに現れている。ただ「やればいいでしょ」というのが、度が過ぎるというか...。その光景が見ていられない。現状は、テレビやメディアの扱いが弱い者いじめに映っちゃう。そうだとしたら、失敗じゃないか。
ーー政治記者の立場で言うと、操られているのかもしれないが、政治家に本音を聞き出すのは難しい。例えば普通に話を聞けるようになるまで 1カ月間ずっと自宅に通い続けたり、自分の立場を分かってもらう努力をしたりした末に、話をする。ただし、経験から言うと、ゴマばかりすり続ける記者には本当の情報が来ない。「素晴らしいですね。すごいですね」って言っているだけの記者には。政治家だって記者から情報が欲しかったり、自分がどうみられているのか聞きたかったりする。
石丸 権力の監視役なのに権力者の機嫌を取っていると映るときはある。でも、それは今おっしゃった通り、その関係性を築く際に、どうしてもそうなってしまうのも分かる。じゃあどうしたらいいか…。全部同じように「塩対応」したらいいんじゃないですか。とにかく厳しく接する。それで対応してくれなかったら、「こいつは逃げた」と烙印(らくいん)を押せばいい。
もちろん取材相手に敬意は払わなければいけない。失礼な態度をとってはいけない。しかし、「優しくして甘くしてもらおう」というのは、本来のメディアと権力の関係からいって不健全だ。
ーー著書に「対立を恐れてはいけない」ともある。対立を逃げているのはメディア側の甘えか。
石丸 そうですね。楽なんだろうな。対立というのはむやみに衝突しろというのでなく、「立場や役割が違うから分けてください」ということだ。アクセルとブレーキは対立しないと困る。
やっぱり読者や視聴者って、それほどアホじゃない。「こいつらなんか仲良くやってんな」っていうのがみえる。それこそ、今、自民党の裏金問題(ママ)に対して、メディアが自民にいいとか悪いとかいう。「もっと追及してよ」という声が、実は多いのではないか。「なんでそこでつるし上げないのか」と。ものすごい強力な伝家の宝刀を持っているのに、それを抜こうとさえしないように見える。
「自民はいけないと思います」というなら、お前がたたき切れと。それもありなんじゃないか。マスメディア以外にできない。
私は「ジャーナリズム」にものすごい期待をしている。それがないと、本当に民主主義が終わる。その力はこれからも変わらないし、揺るがない。
■さりげなく混ぜる
ーー石丸さんとは対立してもOK。
石丸 そう思う。悪いところがあったら「これはダメだ」と。
ところで、客観的事実を報じるのは大事だが、そこに主張をあまり入れない…みたいなことがありますか。それに努めているか。
ーー話を聞くときには、何者かわからないと答えるのも厳しいと思うので、思いは少しずつ入れている。人間なので、全部フラットには聞くことができないし。
石丸 あの…朝日新聞がパッと思いついたのでいっちゃいます。朝日新聞の良くないクセは、事実と感想を混ぜてくることだ。そう思いません? 同意を求めても答えにくいですか。
ーーあると思う。
石丸 他の新聞より多いというのが、私の感想だ。
ーー特定の方向に行こうとする思いが(朝日は)強すぎる気はする。
石丸 もちろん完全無色で事実を伝えるのは難しい。情報を人が扱う以上、それはできない。それでも、そこにちょいちょい自分の思いを混ぜて練ってくるみたいな。
ーーそれがあまりに強すぎると。
石丸 「無味無臭だと思っていたら、フレーバーが入っているのか」というような。朝日と産経は対極でそれぞれあるのだろうが、朝日の方が自然に、さりげなく混ぜている気がする。悪いとは一概に思わないが、「こういう風に思うよね、みんな」というような、誘導的な印象がある。
ーー僕はデスクとして、後輩らの原稿をチェックして出稿する立場にある。手元に届く原稿に「という指摘もある」とか、「という見方もある」とか、「になりそうだ」という内容が結構ある。なるべくそういうものをそぎ落とそうとは思っている。それが強くなりすぎると、機関紙のようになる気がする。
石丸 その視点はすごく大事だ。「という指摘がある」といっても、そりゃ、探したらどこかにある。でも世論として本当にそうなのか。アンケートを取っているわけでもない。個々の声を拾うのは大事だが、それをずいぶん拡大して引き伸ばすのをときどき見かける。
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