( 193443 ) 2024/07/22 01:27:51 0 00 Adobe Stock
政府・日銀は7月11日に3兆円規模、12日に2兆円規模の円買い・ドル売りの為替介入を実施したとみられている。とはいえ、介入も虚しく、1ドル160円の水準まですぐに戻ってしまいそうだ。株式評論家で名物投資家の木戸次郎氏は「日銀・財務省は本気で円安を止める気はないだろう」と分析するーー。みんかぶプレミアム特集「円安狂騒曲」第1回。
さて、記録的な円安が進む中で、2022年の9月、10月と今年の4月、5月にドル売り円買いの為替介入を指揮した神田財務官が7月で退任し、後任には三村氏が財務官に就任する予定だ。
人事異動のタイミングのせいもあって一向に円安対策の話が財務省からは聞こえてこなくなった矢先、神田財務官は最後の置き土産とばかりに円買い介入を実施した。
しかし、このまま何もしなければ、再び161円、162円と投機マネーが暴れだすことになろう。
気が付けば、資産バブル崩壊時の1990年4月に記録したトリプル安の円安水準をも軽々と超えてきており、紛れもなくプラザ合意後の異常な最安値を円は連日で更新していた。介入の決定権を持つ鈴木俊一財務相はかねてより、「円相場については具体的な防衛ラインはない」としていて、一方で介入は「過度な変動」への対応という認識を繰り返しているが、今こそが過度な変動であり、効果的にするにはもっと集中的な介入を連続ですべきであろうと思う。
そもそも今日の円安は米国をはじめとする先進各国と日本の金利差によるものだということは容易にわかる。それでは日銀が何故、利上げに慎重なのかと言えば2000年のゼロ金利解除失敗のトラウマがあげられる。
このころはそれまで勢いを増していたITバブルが崩壊して、ライブドアや光通信、ソフトバンクなどの株価が急降下していた。そのタイミングで当時の速水日銀総裁が政府の反対を押し切ってゼロ金利解除をしたために、株価はさらに低下してしまい、景気の低下も招く結果となった苦い過去がある。実はこの当時、審議委員だった植田総裁はゼロ金利解除に反対していたのだ。
穿った言い方をすると日本は好景気の持続のために円安容認に舵を切ったようにも見える。以前もこのコラムで円安による原材料高、資材高、燃料費高に加えて人件費高で零細中小企業や外食産業がどんどん倒産しているという話を書かせていただいたが、今度は美容院の倒産が激増しているというのだ。2024年の1~4月まででも前年同期比48.3%増の46件で2015年以降の約10年間でも最多のペースとなっているそうだ。おそらく、米国の利下げ、日本の利上げということを考えると、もう暫く円安は継続されることとなろう。
つまり、まだまだ厳しい状況は継続しそうということになる。そうした場合に退場を迫られる企業はどんどん切り捨てられ、家計でも貧富の差が更に広がりを見せることになるであろう。
はっきり言って理論上だと円安は日本の輸出企業の業績には有利に働くのである。なぜなら海外売上高というのは会計上、円建て換算して計上されるため、円安は普通、海外売上比率の高い企業の利益を押し上げることとなる。また長期的に見ても、円安の進行で、日本の輸出企業は海外市場で競争力の高い価格設定が可能になる。だから、今を時めくAI関連や半導体関連、自動車などの輸出関連銘柄は円安が進めば進むほど独り勝ち状態になるのだと思う
これまで我々は土地神話、株神話、IT神話など様々な神話を潜り抜けてきている。今はエヌビディアをはじめとする生成AIバブルなのかもしれない。
木戸次郎
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