( 193526 )  2024/07/22 14:57:05  
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都知事選での蓮舫氏の落選について、SNS上での議論が続いており、特に「モノ言う女性への批判だ」という論調も見受けられる。

蓮舫氏は物言う女性であることと選挙結果に直接関係はないとの主張がなされている。

選挙後も蓮舫氏に対するSNSでの言及数が多く、蓮舫氏自身も他の有名人やジャーナリストに対して批判や発言を行っており、それに対して反論がなされている。

批判と反論が繰り返されることで、一般人からの支持が低下するリスクがあると指摘されている。

(要約)

( 193528 )  2024/07/22 14:57:05  
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 7月7日投開票の都知事選が現職小池百合子の圧勝で終わった。当初2位と目されていた蓮舫氏は元安芸高田市長の石丸氏にも破れ3位になった。しかしこの選挙、ネット上では未だに議論が続いている。そんな中で蓮舫氏に対する批判は「モノ言う女性への批判だ」という論調まで見かけるようになった。エッセイストのトイアンナ氏がこの問題を斬る。「物言う女であることと、今回の選挙の勝ち負けとに強い関係はない」なぜなのかーー。 

 

【動画】「本気で勝つ気ありますか?」前安芸高田市長「石丸伸二」が語る熱すぎる野望…「東京弱体化計画」の具体的中身を語りつくす! 

 

Yahoo!リアルタイム検索におけるSNS投稿の感情分析 

 

  2024年の都知事選が終わって1週間たつ。にもかかわらず、今回は異様である。選挙後も熱意たっぷり、多くの人が都知事選の話を続けているのだ。 

 

 中でも目立つのは、蓮舫氏を巡るやりとりである。まさかの石丸伸二氏が2位となり、3位落選となった蓮舫氏は、7日に「結果を出せなかったことは、ただ私の力不足によります」とコメント。これで選挙戦についての言及は終わると見られた。 

 

 ところが、そうはならなかったのである。 

 

 以下の画像は、7/10~7/17の7日間で、小池百合子氏、石丸伸二氏、そして蓮舫氏がどれだけSNSで言及されたを示すグラフである。 

 

 

 差が圧倒的なのは、その件数だ。小池百合子氏についてはこの7日間で、わずか2万3605件しか投稿されていない。対して蓮舫氏はその8倍に当たる約19万4000件の投稿が見られる。実際、Xでは都知事選についてほぼノータッチだった私すら、蓮舫氏を援護したり、バッシングしたりする投稿を見かけた。 

 

 しかも、その件数は選挙後に増加傾向にある。いわば「祭り」である選挙が終わったはずなのに、言及数が増しているのだ。 

 

辻愛沙子さんの投稿 

 

 まず、蓮舫氏をネタにして、デーブ・スペクターさんが「蓮舫がテレビ司会者に転身→ヒステリーチャンネル」と書いた。それに対して、株式会社arcaのCEOであり、Xでフォロワー8万人を抱える辻愛沙子さんが「物言う女を「ヒステリー」と呼び必死で矮小化したい男」とデーブ・スペクターさんを批判したことで、議論が勃発……と、ここまでは一貫して場外乱闘であり、国内政治に関心がある方であれば、そんなもんかと見ていられたかもしれない。 

 

 異例だったのは、これを蓮舫氏がリポスト(自分のフォロワーへ見られるかたちで掲示)したことである。 

 

 辻愛沙子さんの投稿。上部に蓮舫氏がリポストした記録がある。 

 

 

 大物政治家が自分へのバッシング、あるいは援護をリポストすることは珍しいのではないだろうか。なぜなら、反対派は政治家本人が見ていることを喜んでさらにバッシングを追加するだけであるし、援護派ばかりを再投稿すれば何も知らない方から「内輪で固まっている」ように見えて敬遠されるからである。 

 

 たとえば、岸田首相が自分を援護する投稿ばかりをリポストしていたらどう思うだろうか。「一国の首相が、日本の未来を考えることを怠けて、自分を持ち上げる投稿ばかりを掲載している」と、好感度を下げてしまうリスクがある。 

 

 また、リポストすることで結果として、支援者に同意したと思われてしまうリスクもある。実際、「特段の言及がないリツイートは賛同を示す表現行為」だと、裁判で認められたケースもある。つまり、蓮舫氏はデーブ・スペクター氏による発信を、「物言う女」をヒステリーと呼び必死で矮小化したい男であると感じて、リポストしたことになるのだ。 

 

Yahoo!リアルタイム検索におけるSNS投稿の感情分析 

 

 さらに、蓮舫氏はそこから一歩踏み出す。自身のInstagramにおいて「女、政治家、負けた。何言ってもいい的な構図で、すごいよね」と発言したのだ。 

 

 先程の図をもう一度見てみよう。 

 

 

 Yahoo!では、投稿にどれくらいネガティブな意見・ポジティブな意見が含まれていたかを分析する機能がある。これを見ると、政治家というものは批判されがちであることがわかる。岸田首相も、米元大統領のドナルド・トランプ氏に対しても、総じてネガティブな投稿が多い。政治家な時点で、好かれるのは諦めろといわんばかりである。 

 

 また、「物言う女であること」は、今回の選挙には無関係だ。なにしろ、戦って敗れた相手が女性の小池百合子氏だからである。それも、当時の現職だった石原慎太郎氏から「あの人はうそつき」「厚化粧の女に(都政を)任せるわけにはいかない」と人格攻撃やルッキズムを浴びながらの勝利だった。しかも、当時の街頭演説で「『女は聞き分けがいい』『女は使い勝手がいい』などとは思わせない」と、物言う女を堂々とやっての勝利である。 

 

 少なくとも今回蓮舫氏が落選した理由は、同じ都民の私から見るとこのあたりに見られる。 

 

 

・蓮舫氏の公約でトップラインに出たのが「神宮外苑再開発に反対」であり、都民の心に刺さらなかった。それよりも物価上昇、防災、少子化対策を重要な課題だと感じる都民が多かった。その後これらに対応する政策を出すも、出遅れた感が否めなかった 

 

・蓮舫氏の人気には「数少ない女性リーダー」という面もあったが、戦う相手も女性リーダーであったため差別化しづらかった 

 

・都知事は踏み台で、その後国政選挙に出るのではないかと疑われた 

YouTubeチャンネルの登録者数が石丸氏の30分の1と、SNSを活用しきれなかった 

 

・石丸氏が街頭演説228回と驚異的なスケジュールをこなし、蓮舫氏を含む他の候補を突き放した 

 

 つまり、物言う女であることと、今回の選挙の勝ち負けとに強い関係はない。私個人の意見では、総じてPR施策に失敗した、という見方である。 

 

 ここまでであれば「物言う女だから落選したとは思っていない。物言う女だから、落選後にバッシングされていると認識している」と言えばそれで通っただろう。 

 

 だが、その後の蓮舫氏は、エスカレートする。 

 

 まず、現職の小池百合子氏を支持した芳野会長を「現職に挑戦した私の敗因を、現職を支持した貴女が評論ですか」と批判し、さらに上沼恵美子さんの蓮舫氏に対する批判へも「私は笑えない」とやり返した。 

 

 偶然ながら、これらの有名人はいずれも「物言う女」たちである。彼女たちへ政治家が圧力をかけた、と見えかねない投稿であった。 

 

 さらには、同時期に自分の外見や性別ではなく行動を批判した新聞記者に対し「弁護士に相談」と、法的措置や勤め先へのプレッシャーをかけることで黙らせた……と思われかねない投稿をしている。 

 

 蓮舫氏は「私はね。黙らないよ。いま、最も自由に黙らない」と投稿しているが、やっていることは弾圧と戦っているというよりも、むしろ政治家の立場から、ジャーナリストや関係者を弾圧している側に見えてしまう。当然ながら、「自分は黙らないのに、自分を批判する人へは弁護士をちらつかせて黙らせるのか」と、蓮舫氏への批判が増えた。 

 

「『私はね。黙らないよ。いま、最も自由に黙らない。』と言うからには、他人の言論の自由も同じ位尊重できる人だと思いたかった。でも気に入らない事を言う記者には、メディアに圧をかけ弁護士までちらつかせ、言論弾圧する人だった。ここまでとは思わなかった」 

 

 

 これは、アーティストであるろくでなし子さんの投稿だ。後日、朝日新聞社へ抗議をしたのは蓮舫氏本人ではなく、他の立憲民主党の議員であるとわかったものの、他の部分については私も賛同する。 

 

 そもそも、政治家はこういった批判どころか、中傷へもやり返さない向きがある。なぜなら、やり返してもよいことがないからだ。 

 

 インターネットで他人へ反論しても、相手は頑なになるだけだ。改心など見込めない。さらには、その様子を見た人が「あの人、ずっとファンのことを見ずに、敵を見つけては喧嘩してる」と思い、自分から離れていってしまう。 

 

 脳の半分がXに埋もれている私にとってはブーメランが額へ突き刺さる事実だが、実際のところ批判へは「黙っていた方がお得」なのだ。 

 

 だが、Xには人に口論をさせたくなる魔力がある。自分への批判が直に届いてしまうからだ。しかも、言動一つに対し、批判は100も、1,000も届く。だからひとつくらい、言い返したっていいのではないかと思いたくなる。 

 

 蓮舫氏はその1つに返事をしてしまった。そして、批判と反論の無限ループに巻き込まれた。だが、このままネット論客になってしまったら、待っているのは国政選挙どころか、腫れ物扱いである。 

 

 誰にでも怒る権利はある。蓮舫氏は「私はね。黙らないよ」と言ったが、誰も権力を使って蓮舫氏を黙らせようとはしていない。だが、今ネットバトルを繰り返すことで、一般人から蓮舫氏への人気が低迷してしまうリスクがあるのも、やはり事実なのだ。もし黙らないのであれば、蓮舫氏には未来の政策について語っていただきたい。なぜならそれこそが、都民がもっとも聞きたい話だったからである。 

 

トイアンナ 

 

 

 
 

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