( 193866 )  2024/07/23 15:11:14  
00

7月7日の東京都知事選挙で小池百合子氏が圧勝し、石丸伸二氏が2位に入ったことで注目を集めた。

立憲民主党や共産党の支持者からは、蓮舫氏の敗北に対する疑問や落胆の声が上がっている。

蓮舫氏は選挙後もネット上での行動が話題となっており、その姿勢には賛否両論がある。

蓮舫氏は128万3262票の支持を受けたが、今後は負けを謙虚に受け止める姿勢が求められると指摘されている。

蓮舫氏自身も国政復帰を考えていないとしているが、支持者は彼女が再起する姿を期待している。

(要約)

( 193868 )  2024/07/23 15:11:14  
00

Adobe Stock 

 

 7月7日投開票の東京都知事選は、現職小池百合子氏の圧勝で終わった。しかし政界を驚かせたのは、2位が蓮舫氏ではなく、元安芸高田市長・石丸伸二氏だったことだ。自民党の裏金問題が尾を引き、衆院補選など連敗が続いているなか、まさかの3位転落だった。今回の都知事選を巡っては、決着がついてもその議論がネットを中心に話題にのぼっている。一体なぜこうなってしまったのか。ルポ作家の日野百草氏が取材したーー。 

 

【動画】小池都知事「え、蓮舫さん(笑)。何言ってるの?」東京の弱体化に猛反対!ワタクシはこれだけ東京を変えました…神宮再開発推進のワケ 

 

「ネットでバトルして、いちいち反応して弁護士だの新聞社へ抗議だの、蓮舫さんはどうしてしまったのか」 

 

 立憲民主党の市議会関係者(40代)が心配そうに語る。非自民系の支持者ばかりが集まる場にも関わらず異口同音に「蓮舫さんはどうしてしまったのか」だった。 

 

「政治家でも、元政治家でも誰でもネットで声を上げるのは自由です。でも記者の書き込みにあの反応はね。ネットで面白がるのはごく一部で、有権者の多くはひいてしまいます」 

 

 元参議院議員の蓮舫氏のこと。7月7日の東京都知事選に立候補するも、現職の小池百合子氏に大差をつけられての敗北、知事選は現職有利とはいえ、その差は立憲民主党だけでなく「共闘」した日本共産党も落胆の色を隠せなかった。 

 

「離党して、参議院議員を辞めての覚悟は見事でした。結果はともかく選挙は水物で仕方がないけど、その後の姿勢が大切では」 

 

 蓮舫氏はいまやすっかり「ネットを賑わせる人」になってしまっている。7月16日、X(旧Twitter)上の記者のポストに対して「弁護士と相談しているところです」、その記者の所属する新聞社に「抗議ならびに質問状を出したい」とポストした。 

 

 これについては別の場で日本共産党の方々とも話をすることができたが、蓮舫氏の行動を「よくわからない」とこちらも異口同音に語っている。ネット上では「共産党べったり」の部分が気に障ったのではという意見が散見される。70代党員の話。 

 

「べったりなんて言い方は気に入らないけど、共闘したのは事実じゃないですか。蓮舫さんとがんばったのに、よくわからない」 

 

 当該記者は謝罪したが、そもそも連合(日本労働組合総連合会)芳野友子会長の「共産(党)が前面に出過ぎて逃げた票もあったのではないか」という見解を引いて「間違いじゃない」と肯定した国民民主党、榛葉賀津也幹事長の会見記事を「貴方に言われたくない」とした蓮舫氏に対する記者のポストであった。 

 

 別の立憲関係者は「他の理由があるのでは」と語る。 

 

「榛葉さんとは遺恨があるから。十年くらい前は二人いっしょに静岡で街頭演説とかしていたけどね。いまに至るまで、いろいろあったことは事実」 

 

 

 それはともかく蓮舫氏、敗れたとはいえ128万3262票もの支持を受けたこともまた事実で、128万人以上が蓮舫氏を支持してくれた。 

 

 だからこそ、その後の姿勢は彼らのためにも大事なように思う。「負けは謙虚さと慎重さの母」とは野村克也監督の言葉だが、負けたときこそ謙虚さと慎重さ、つまるところそうした姿勢が必要ということか。 

 

 人は勝っているときでなく負けているときこそ本来の人間性が露呈する。蓮舫氏がそうだとは言わないが敗軍の将、とくに政治家はそれが求められる。 

 

 まだ44歳だったころの田中角栄にこんな逸話がある。角栄と東京タイムズ記者(当時)だった早坂茂三とのやりとりである。 

 

早坂「あの記事を書いたのは私です」 

田中「そうか。君なら顔を知っている。新聞記者は書くのが商売、政治家は書かれるのが商売だ。こんどの勝負は君の勝ちだ」 

田中は全身で笑い、顔で笑い、眼まで笑った。 

※早坂茂三著『田中角栄 頂点をきわめた男の物語』(PHP文庫より抜抄) 

 

「あの記事」とはロバート・ケネディと角栄らとの日本の憲法改正と再軍備についての非公式懇談会をすっぱ抜いた記事だった。そんな早坂を角栄は面白がった。感心して、のちに早坂を重用した。 

 

 勘違いしないで欲しいが、早坂は角栄に呼び出されたのでなく、早坂が角栄のところに自分から行った上で「あの記事を書いたのは私です」である。「田中が、さすがにしょげていると聞いた」ので行ったとある。 

 

 角栄に極めて近かった早坂の著書であるという面は割り引くにせよ、角栄の稀代ともいえる人心掌握術と政治家としての「大きさ」は確かだろう。毀誉褒貶あれど認めざるを得ない。また、これだけの政治家がいまいるか、と問われれば答えるに難しい。 

 

 政治家としてのキャリアやメンツを考えれば、それこそ弁護士に相談だ、新聞社に抗議だとサラリーマン記者にキャン言わせる「わからせ」もよくある話。しかしこの時の角栄はそれをしなかった。善人とは思わないし策士であったことも確か、それでも器の大きさもまた、確かだったように思う。 

 

 

 都知事選後、蓮舫氏は国政復帰を考えていないとしたが「私はね。黙らないよ。いま、最も自由に黙らない」ともポストしている。 

 

 冒頭の立憲関係者。 

 

「『黙らないよ』は嬉しかったがそっちじゃない。矛先が違う。負けるが勝ちではないけど、ときに黙るのも必要なのでは」 

 

 別の立憲支持者の女性(70代)はこうも語る。 

 

「(辻元)清美ちゃんが落選したときはさすがやと思った。うちがアホやったとか、しんどいけどへこたれへん、うどん食べて出直すって、ほんま地元でいちからみんなと草の根でがんばった。蓮舫さんも勉強のときと思う」 

 

 同じ立憲民主党だった辻元清美参議院議員も「負け」を経験している。彼女は若いころから草の根で活動してきた人で、華々しい芸能界にいた蓮舫氏と異なる部分はあるが、蓮舫氏も学ぶところはあるだろう。角栄だって最初の選挙は落選だった。負けて大きくなった。 

 

 その角栄ではないが、敵が多くても味方もまた多ければいい。政治だけでなく商売だって、市井の人間関係だってそうだ。しかし敵ばかりになっては、とくに政治の世界は難しい。サラリーマン記者ひとりをとっちめてネットの話題になっても、ネット界隈でなくリアルの話となれば先の「面白がるのはごく一部で、有権者の多くはひいてしまうだろう」は的を射ているように思う。 

 

 ちなみに一番多くいただいた「共闘」した方々の言葉は「もったいない」だった。蓮舫氏の情熱をわかってくれている人はいる。だから128万3262票を誇るべきで、バッシングなど角栄のごとく「政治家は書かれるのが商売だ。こんどの勝負は君の勝ちだ」と笑い飛ばせばいいのだ。むしろそういう政治家のほうがずっと怖いし、強い。 

 

 7月17日の蓮舫氏のポスト「夕陽だ。上を向こう、ね。」こそ、等身大の「蓮舫さん」なのだと思う。それをもっとわかってもらうべきだ。本当に「もったいない」と思う。 

 

 いまや「捲土重来未知可」の蓮舫氏、この一節は項羽が劉邦に敗れたとき、悔しくとも恥ずかしくともしばらく身を隠し、力をつけて再起しようという部下たちの進言を聞かず、メンツにこだわりやぶれかぶれに戦って自害したことを嘆いたものだ。「人の意見を聞いて再起していれば……」はこの先の蓮舫氏にも当てはまる。項羽の轍を踏まなければまさしく「捲土重来」になる。 

 

 支持者は、共闘者は「ネットのおもちゃの蓮舫」など求めていない。「捲土重来の蓮舫」こそ期待している。 

 

 128万3262票、誰と比べるではなく一人ひとりの人間が、128万3262人が投じた票である。それは大きくて、確かな数字だ。小さなことでネット上の誰かを晒し上げるのでない、再び立ち向かう蓮舫を、128万3262人は待っている。 

 

日野百草 

 

 

 
 

IMAGE