( 195917 )  2024/07/29 14:52:39  
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株主提案を行っている「テレビ輝け!市民ネットワーク」は、テレビ朝日の持ち株会社に政治圧力に屈しない報道を求めて株主提案をしてきたが、これは6月末の株主総会で否決された。

しかし、市民ネットでは支持が広がり、提案が無視されないことを示したとして前進を宣言している。

株主提案には不信を持ったテレビ朝日の報道審議会に第三者委員会を設立するなどの提案が含まれていた。

一方、テレビ朝日は報道の公正性を主張し、これらの提案を拒否している。

市民ネットは特に懸念を示し、報道の自由を守るために闘っており、その一環で訴訟が起きている。

(要約)

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記者会見する(左から)梓澤和幸弁護士、阪口徳雄弁護士、前川喜平・元文部科学事務次官、杉浦ひとみ弁護士。(撮影/本田雅和) 

 

 権力によるテレビ報道への介入に対して放送会社の株主の立場から監視し、民主的経営を促していこうと結成された「テレビ輝け!市民ネットワーク」(前川喜平、田中優子・共同代表)は、『テレビ朝日』の持ち株会社=テレ朝ホールディングス(HD)に「政治圧力に忖度・迎合せず、正確で偏りのない報道」を求める株主提案をしてきた。6月末の株主総会では同ネットの提出議案はいずれも否決されたが、前川代表やメンバーの弁護士らは「支持は確実に広がっており、市民提案を無視できないことを示した」と「手応え」を表明した。 

 

 同ネットはメンバー約50人で、テレ朝株を計約4万株購入。①報道番組などに権力介入が疑われたときには独立した第三者委員会を設立する②放送番組審議会が機能不全のときも第三者委を設立する③番審委員らの任期に上限を設ける④文部科学事務次官だった前川代表を社外取締役に就ける――などの4議案を提出していた。 

 

 これに対して取締役会側は「番審が機能不全」の状態では「ない」と否定し、第三者委の関与を定款で義務付けることは「業務の適時適正な執行を阻害するおそれがある」などとして反対を表明。多数派の大株主によって否決された。 

 

 市民ネットが特にテレ朝の「権力へのすり寄り」を懸念して警鐘を鳴らす理由は、テレ朝生え抜きの早河洋氏が社長になって以来(それまでのように大株主の朝日新聞社からの天下りによる社長などではなく)、2014年には会長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、出版社の幻冬舎の見城徹社長が番審委員を20年以上、委員長を10年以上していることに着目するからだ。 

 

 15年1月には「報道ステーション」コメンテーターの元経済産業省官僚・古賀茂明氏が当時の第2次安倍晋三政権を批判すると、当時の官房長官側近から連絡が入り、テレ朝側が忖度して同年3月に古賀氏と番組制作担当者を降板させた、との文献が存在する――との事実を指摘する梓澤和幸弁護士らは、「真実ならば憲法の保障する放送の自由を侵害する。調査せよということだ」と訴える。 

 

 

「大下容子ワイド!スクランブル」(23年10月17日放送)や「羽鳥慎一モーニングショー」(24年3月1日放送)では、番組内で「単なる(幻冬舎発行の)書籍宣伝に堕していると思われる」報道があった――とし、市民ネットはこれも「民放連 放送基準」(広告と報道の峻別)に違反する疑いが濃厚だとしている。これらについても、テレ朝側は他の多くの書籍も同様に番組で紹介している例をあげ、「宣伝ではなく報道」と反論している。 

 

 一方、インターネットメディア「Arc Times」(AT)が4月~5月にユーチューブに配信した映像番組で、田中共同代表がキャスター(AT記者)やAT編集長と鼎談。田中氏は市民ネットの株主提案の趣旨を述べたが、テレ朝HD株主総会直前になって、幻冬舎と見城社長が鼎談の内容に名誉毀損があるとしてATに謝罪広告などを求めるとともに、田中氏と記者、編集長、ATの4者は連帯して見城氏と幻冬舎に計1000万円を支払えという損害賠償請求訴訟を起こした。 

 

 原告側は訴状で、被告らの主張は「臆測」にすぎず、見城氏らは「報道の公正性・独立性の確保に尽力」し、「政権に配慮した報道を推奨」したことも「一切ない」とし、「社会的名誉を著しく低下させた」と主張する。が、筆者の取材申し込みには、幻冬舎広報担当者が「係争中につき一切お答えできない」と拒否している。 

 

 市民ネット事務局の阪口徳雄弁護士は「田中代表の発言は私たち株主提案の要旨を説明しただけ。名誉毀損と認定される事案とはおよそ思われない。株主提案封じの訴訟と言える。受けて立つ」としている。 

 

本田雅和・編集部 

 

 

 
 

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