( 196597 )  2024/07/31 01:58:35  
00

日本銀行(日銀)の総裁である植田和男は、最も難しい立場にいる中央銀行のトップだと言われている。

彼は7月30日と31日に開催される政策決定会合で、長期間続いたゼロ金利や量的緩和(QE)政策を見直す必要があり、様々な選択肢を持っている。

三つの選択肢(何もしない、0.25%の利上げ、折衷案)があり、どれを選ぶにせよ、それぞれの選択には様々な議論が存在する。

植田総裁は一貫性を保ちつつ、難しい決断を下さなければならない。

日本の政治体制や円安問題、経済の過去からの背景もあり、彼の決定は難しいものとなるだろう。

彼がどの選択をするかは誰にも予測できないが、植田総裁は日本の金融政策において重要な立場にある。

(要約)

( 196599 )  2024/07/31 01:58:35  
00

Tomohiro Ohsumi/Getty Images 

 

植田和男日銀総裁は、中央銀行のトップとして現代史上、最も難しい立場に置かれているのかもしれない。 

 

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長や欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁、中国人民銀行の潘功勝総裁には失礼かもしれないが、彼らの中に植田総裁のような立場になったことのある人はいない。 

 

植田総裁は7月30日と31日に開催される日銀の政策決定会合で、市場が注目する利上げを実施し、25年間続いたゼロ金利と23年間続いた量的緩和(QE)を断ち切るかどうかを決断しなければならない。そして、その結果がどうであれ、その姿勢を維持しなければならない。 

 

さらに悪いことに、考えられる以下の3つの選択肢のどれを植田総裁が選んだとしても、頭の切れるエコノミストたちは、それぞれについてニュアンスの異なる、抽象的な、説得力のある議論を展開することができる。 

 

1. 何もしない 

日本が景気後退を回避し、内需が低迷している今、引き締めを行う時とは思えない。中国がデフレを輸出し、ヨーロッパがつまずき、FRBが利下げを遅らせているという事実があり、植田総裁らは何もしないという決定をするだけの根拠がある。 

 

2. 0.25%の利上げ 

最近になって為替トレーダーが円を買い上げていることからもわかるように、これが最も人気のある選択肢だ。日本は金利政策を「正常化」する準備ができていると主張するエコノミストたちも、この選択肢を支持している。また、日銀が何もしなければ、円は1ドル=170円に向かって急速に円安が進むというシナリオを掲げる声もある。 

 

3. 折衷案を採用 

この選択肢では、植田総裁らが金融政策を大きく転換することなく、債券や株式の買い入れ額を減らすことなどが考えられる。見通しがはっきりしない現在の状況を考えると、このルートを選択する可能性が最も高いのかもしれない。 

 

このどれを植田総裁が選択するにせよ、彼は鏡に写った自分を客観視する必要がある。2023年には利上げの機会が無数にあった。そのたびに、植田総裁は利上げを見送った。そしてそのたびに、ヘッジファンドは円を空売りしても大丈夫だと考え、円は下落した。 

 

後悔しているのは植田総裁だけではない。金利の正常化について最も考えを巡らせていたのは、前任の黒田東彦元日銀総裁だった。彼は、2013年から前例のない方法で日銀のバランスシートを拡大した当の本人だ。 

 

黒田元総裁の指揮の下、2018年までに日銀のバランスシートは5兆ドル(約770兆円)に膨れ上がり、日本経済全体の規模を上回った。しかし当時の日銀は、超大規模な量的緩和からの出口を描くことはしないまま、植田総裁にバトンタッチした。 

 

では、植田総裁はどうすべきなのか? それは誰にもわからない。おそらく、植田総裁や日銀の他の幹部たちもそうだろう。 

 

 

物事をより複雑にしているのは、日本の政治体制である。岸田文雄首相は過度の円安に対する懸念を示し、「ファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映し、安定的に推移することが重要だ」「過度の変動は望ましくない」と述べた。 

 

さらに最近では、河野太郎デジタル相も円安によるデメリットはメリットを上回ると警告。河野大臣はブルームバーグに対し、「為替は日本にとって問題だ」とした上で、「円は安過ぎる。価値を戻す必要がある」と付け加えた。 

 

そうは言っても、長い間、自民党は円安を支持してきた過去がある。実際、1990年代半ば以降の自民党政権が慣れ親しんだ唯一の経済政策は、間違いなく円安の支持である。 

 

自民党が円安という支柱なしで生きていけるかどうかは未知数である。そして、植田総裁が利上げ後も姿勢を維持し、踏ん張れるかどうかもわからない。 

 

きっと植田総裁は、2006年と2007年に2度の利上げを実施した福井俊彦元日銀総裁のことを思うことだろう。 

 

しかし、この利上げの動きは短命に終わった。2008年までに福井元総裁の後任者は金利をゼロに戻し、量的緩和を復活させた。2013年には黒田元総裁が登場し、日銀のバランスシートを拡大し、量的緩和を急速に進めた。確かにこの10年間、日本はある程度の成長を実現したし、この金融政策が生んだ円安と過剰流動性により、株価も史上最高値をつけた。しかし、家計が得た恩恵はそうでもなかった。 

 

四半世紀にわたる量的緩和がもたらしたのは、結局のところ先進7カ国の経済を、現代経済学が見たこともないような最悪の企業助成中毒者に変えてしまったことだけだった。今、植田総裁は「日本株式会社」を金融的な甘い蜜から引き離すための、依存症回復プログラムを考案しなければならない立場にある。しかし、彼にとって残念なことに、従うべき設計図も、参考にすべきケーススタディも、相談できる白ひげのノーベル経済学者もいない。 

 

植田総裁は本当に、物事を自分でイチから作り上げているのだ──特に、彼のチームが現在開催中の政策決定会合の席についている間は。日銀が3つの選択肢のうちどれを選ぶかわかっていると言う人は、まともに相手にすべき輩ではない。ただ一つ確かなことは、植田総裁は、彼の同僚たちも下すのを嫌がるような決断を迫られているということなのだ。 

 

William Pesek 

 

 

 
 

IMAGE