( 199577 )  2024/08/08 15:32:53  
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29歳の男性「日傘男子」は、神奈川県から来ており、約1万円で完全遮光の日傘「サンバリア100」を購入して猛暑に備えている。

日本全体で猛暑が続く中、男性の日傘姿が増えており、市民権を得つつある。

取材では、男性たちが日傘を愛用する理由や女性の印象などが語られており、男性用日傘の普及が進んでいる様子がうかがえる。

(要約)

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神奈川県から来た29歳の「日傘男子」。「サンバリア100」の完全遮光の日傘を約1万円で買って猛暑に備えたという(撮影/上田耕司) 

 

 日本全域で記録的な猛暑がつづくなか、日傘を差す男性の姿を多くみかけるようになった。かつては少数派だった「男の日傘」は、ここ最近は完全に市民権を得たようにみえる。そこで、AERA dot.が東京・銀座で日傘を愛用している男性たちを取材すると、「日傘でないとダメな理由」がうっすらと見えてきた。また、街の女性たちにも「日傘男子」の印象を聞いてみた。ルポでわかった「男の日傘」の最前線。 

 

【写真】数万円の高級品を持つ「日傘男子」はこちら 

 

*  *  * 

 

 休日の買い物客でにぎわう東京・銀座のアーケード街。最高気温が36.7度を記録した8月4日、記者が取材で街中に出ると、汗が一瞬で吹き出し、日差しで肌がチクチクと痛むほどだった。 

 

 当然、日傘をさしている人も多くいるのだが、そのうち、男性の日傘姿も多く目につく。記者は日傘をさす習慣はなく、どこかまだ気恥ずかしさも感じてしまうのだが、「日傘男子」たちに抵抗感はないのだろうか。 

 

 母親と食事をするために神奈川県から銀座に来たという、黒色の日傘をさす男性(29)はこう話す。 

 

「もう、暑いとかじゃなくて、痛いじゃないですか。日傘は陰を作れるので、日陰の中を移動している感じになるのがいいですね。日傘の表面を触ると熱くなっているし、ささなかったらだいぶ紫外線(UV)を食らっていると思います」 

 

■他の男性もさしているので「恥ずかしくない」 

 

 この男性がさしている傘はブランド物で、価格は1万円弱とそれなりのお値段。男性はIT系の会社に勤めているが、出勤時も使っているという。 

 

「昨年は、もっと大きくて雨傘っぽい日傘を使っていました。でも大きいのはやはり目立つので、このくらいのサイズ(約55センチ)がいいですね」 

 

 銀座を歩いていると、3~4分に1人くらいは日傘を持った男性と出くわす。ビアホールで知られる「ライオン銀座七丁目店」では、入店待ちの客が長蛇の列を作り、道の角を曲がってもまだ行列が続いていた。行列の中に、ベージュの日傘を持っている男性がいた。話しかけてみると、足立区から来た50代の会社員だという。 

 

「この日傘は1週間くらい前に北千住(東京・足立区)のマルイで買いました。きょうは直射日光を浴びながら行列に並びたくなかったので、日傘を持ってきました。恥ずかしくはないですよ。他の男性も日傘をさし始めてますから」 

 

 また、銀座のショッピングビルに勤務している男性(24)もこう話す。 

 

「紫外線を浴びると、日焼けするだけじゃなくて、顔とか腕にシミもできますよね。男が(日傘を)することに全然抵抗はないです。この日傘はサイズが50センチくらいなのでちょっと小さいけど、折りたためるので、持ち運びに便利。手に長い傘を持ちたくないので重宝しています」 

 

 

■女性からも「男性の日傘はいいと思う」 

 

 取材に応じてくれた人は一様に「恥ずかしさはない」と話す。やはり、他の男性も日傘をさすようになったことが大きいと思われる。 

 

 女性からみても日傘をさす男性に抵抗はないようだ。 

 

 夫婦そろって黒の日傘を差して歩いていたカップルの妻(33)はこう語る。 

 

「熱中症対策と美肌のためにも、(夫には)さしてもらったほうがいいですね。老化の対策にもなりますし。ただ、私が勧めたわけじゃないんですよ、夫が勝手にさし始めました(笑)」 

 

 夫(30)もこう続ける。 

 

「日傘は女性が使うものだろうと思っていたんですが、さしてみたらとにかく涼しい。Amazonで、3000円くらいで購入しました。UVカット機能と遮光がついているのでお得だと思います」 

 

 夫婦で日傘をさしている人は意外と多い。建設業だという男性(42)と妻(42)にも話を聞いてみた。 

 

「日傘をさすようになったのは今年の夏からです。帽子は持っていますが、私は仕事現場ではいつもヘルメットをかぶっていますから、休みの日くらいは帽子はかぶりたくないなと」 

 

 隣で話を聞いていた妻は「男性の日傘はいいなと思います。たまたま、百貨店で傘職人のイベントがあったので、その時に買いました」と続けた。確かに夫婦が持っているのは高級そうな日傘だ。麻糸で作られていて「2~3万円くらいした」(妻)という。 

 

■帽子ではなく日傘をさす理由 

 

 若い「日傘男子」もいる。男女で仲良く1本ずつの日傘を差して歩いていた大学3年生の男性(21)は、帽子をかぶったうえに日傘もさしていた。 

 

「帽子は頭に熱がたまってしまうので、日傘をすれば少し温度が下がるし、日焼け対策にもなります。それに、汗っかきなので、少しでも熱量を下げたい。大学へ行く時も日傘で行っています」 

 

 横にいた女性は「私は日傘大好きです。男性もしたほうがいいと思います」と、日傘男子を歓迎しているようだった。 

 

 日傘を「売る側」も変化を感じ取っているようだ。創業94年の東京・東日本橋の洋傘専門店「小宮商店」の広報・加藤順子さんはこう話す。 

 

「昨日も今日も、朝、男性が一人で来られて日傘を買っていかれました。男性客が毎日、何十人といらっしゃいますね。『朝の通勤時、いつも電車で一緒になる男性が日傘を持っていたから、僕も我慢していたけど、日傘がほしくなった』とおっしゃった男性客もいました。『他の人がさしているから、もうさしてもいいかな』とおっしゃるお客さんも多いですね」 

 

 

■ビジネスシーンになじんできた日傘 

 

 特に今夏は、スーツや白シャツ姿のビジネスマンが、日傘をさしながらカバンを手に持っているスタイルを見かける機会が増えた。 

 

「今までは、男が日傘なんてというネガティブなイメージがあったのかもしれませんが、逆に今は健康に気を使っている、熱中症対策をしているというポジティブなメッセージになっているように思います。汗だくになって、取引先へ行くのはちょっと恥ずかしいですよね。スーツで帽子をかぶるわけにもいかないですし、日傘はビジネスシーンにもなじんできたと思います。男性用の日傘は、昨年までは黒や紺色が主流でしたが、今年は色の薄いカラーも売れるようになりました。夜になると折りたたんでカバンにしまえるくらいの、55センチくらいが主流ですね」(同) 

 

 まだまだ猛暑が続くなか、「日傘男子」はますます増えていきそうだ。 

 

(AERA dot.編集部・上田耕司) 

 

 

 
 

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