( 199802 )  2024/08/09 01:03:53  
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路線バスの運転手が苦労している様子が伝えられている。

路線バスの運転手不足が深刻であり、高齢化も進んでいる。

遅延や運転技術、クレームによるストレスが現実となり、しばしば理不尽なクレームに直面する運転手もいる。

路線バスは地域に根ざしたサービスであり、営業としての側面も持ちながら、運転手にとっては厳しい現実があり、無理なクレームに疲弊することもある。

(要約)

( 199804 )  2024/08/09 01:03:53  
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路線バスの運転手に苦労は多い(イメージ) 

 

 バスの運転手不足が指摘されて久しい。警察庁が発表している「運転免許統計」によると、路線バスを運転できる大型二種免許保有者は2023年で78万2694人。20年前の2003年では117万4799人だったことを踏まえると、その数は約4分の3になっている。さらにはバス運転手の高齢化も問題となっている。日本バス協会の資料によれば、全バス運転手に占める60歳以上の割合は23.3%(2022年7月末時点)で、今後、バスの運転手不足が深刻化していくのは必至の情勢だ。 

 

 市民の足となる路線バス。乗客との距離も近く、接客業(サービス業)としての側面も持つ。そうしたなかでは生活に根付くインフラとしてあたたかい触れ合いもある一方、理不尽とも言えるクレームに晒されることも少なくないという。 

 

 西日本で路線バスの運転手をしている西山さん(仮名・50代男性)は、この道20年超のベテラン。日中は20分に1本程度のダイヤで、最も多いクレームは「遅延」だと明かす。 

 

「路線バスは一般道路を走るので、事故や渋滞など、予測できない影響を受けやすく、常に遅延リスクがあります。無線で運行管理部と連絡を取りながら、随時運行状況の確認や調整を行ないますが、正直どうしようもないことも多い。 

  

 通勤・通学時に雨が降っていたりすると、送り迎えをする車も増え、バスも遅れがちになります。一度朝のピーク時に4日連続で遅延してしまったときは、高校生の保護者から『遅刻で学校の評定に傷がついたらどうするんだ』『時間を守るという責任感はあるのか』などと激昂されました」(西山さん。以下「」内同) 

 

 無論、西山さんとしても遅延させたくはない。「なぜ遅延したのか」と理由を問われたため、事実として雨による渋滞の影響があったことを伝えると、今度は「遅延を正当化するな」と言われたという。 

 

「もちろん改善点があれば努力しますが、クレームを言う人の中には、やり場のない怒りをぶつけたいだけの人もいて、こちらが何を言っても納得はしてもらえないことがほとんど。生活に影響が出るのは申し訳ないとは思いつつ、ひたすら謝るしかありません。 

 

 必要であれば遅延証明書を発行して、お客さまが不利益を被らないように努めますが、基本的にバスやタクシーなど、車道を利用する交通機関は必ずしも時間通りにはならないことは理解してほしいなと思います。ギリギリにならないように余裕をもって乗ってほしいというのが本音です」 

 

 

運転技術や速度についてのクレームも日常茶飯事だ。西山さんが続ける。 

 

「『運転が荒い』、『飛ばし過ぎ』といったクレームも多いです。運転が荒いと言われやすいのは急ブレーキをかけたときですが、路上に動物や子供、高齢者が飛び出てくるなど突発的なことはあるものです。 

 

 やむなく急ブレーキをかけた後には車内アナウンスでお詫びをいれますが、それでも『急ブレーキをかけるな、乗客の安全を考えろ』『急ブレーキのせいで飲み物がこぼれた。クリーニング代を出せ』などというクレームを受けたことがあります。そうはいっても、車内だけでなく道路上の方の安全も守らなくてはいけませんからね……。 

 

 速度に関しては法定速度をきっちり守るため、飛ばし過ぎということはないはずなのですが、お客さまの体感なのでしょうか。いずれにせよ謝るしかありません。そもそも車を運転しない人も多くなっているので、道路や運転事情について、あまりわかっていない人も増えているのかもしれません」 

 

 地域に根ざした路線バスならではのクレームもある。 

 

「偶然原付で暴走する集団がバスと並んだことがあり、『怖い道を走るな』と言われたことがありますね。そう言われても……と思いますが、『安全には気をつけます』とお答えするのが精一杯です。 

 

 また、私がバスを走らせている地域はほどほどに田舎で、乗客同士が顔なじみならではの会話も多く、そうした触れ合いがいいところでもあります。ただ、時として高齢の方同士が方言のきつい大きな声で世間話を繰り広げることもあって、これが若い人には不快に感じられたということで、クレームとして寄せられたことがあります」 

 

 その他、トイレ休憩やコンビニで体をほぐすためにストレッチをしていたら「サボるな」と言われたり、地元のヤンキーに「高校までタダで乗せてくれ」「飛ばしてくれ」などと無茶振りをされることも“あるある”なのだとか。 

 

 道路・交通事情は運転手に絡んでも仕方がない。理不尽なクレームに疲弊する運転手もいるのが現実だ。(了) 

 

 

 
 

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