( 200947 )  2024/08/12 16:09:44  
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パリ五輪では、パリの難コースを走る選手たちが鮮やかなイエローのシューズを着用して注目された。

アシックスが新商品「メタスピード」を開発し、男子マラソンではナイキの厚底シューズに挑戦。

アシックスのシューズを履く選手が顕著に増え、市場でのシェアを奪い返した。

日本代表やアシックスだけでなく、フェンシングでも様々なブランドのシューズを履いた選手が面白かった。

日本のお家芸である体操やレスリングだけでなく、フェンシングでも活躍し、各スポーツメーカー間のシューズ争いが今後も続く可能性がある。

(要約)

( 200949 )  2024/08/12 16:09:44  
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パリの難コースを走る選手たちの足元に目立った鮮やかなイエローのシューズ(写真・時事通信フォト) 

 

 100年ぶりにフランスの首都・パリで開催された五輪は17日間の熱戦を終えた。日本が獲得した金メダル20個は2004年のアテネ五輪の16個を抜いて海外開催での最多獲得数を更新。総メダル数も45個となり2016年のリオ五輪の41個を上回った。また、日本代表の選手たちだけでなく、選手を支える日本企業にとっても、高い壁への挑戦が実る結果となった。 

 

【写真】「メタスピード」第三世代でパリ五輪マラソンに挑んだアシックス ナイキ厚底シューズとは対照的な仕様に 

 

 大会最終盤の陸上男女マラソンでは、日の丸メーカーのアシックスが復活を懸けて選手をサポートした。かつては2000年シドニー五輪の高橋尚子、2004年アテネ五輪の野口みずきら金メダリストの足元にはアシックスのシューズがあったが、近年は米ナイキの「厚底シューズ」の大ブームが到来。市場を席巻していた。 

 

 アシックスでは2019年11月、当時社長の廣田康人氏(現会長)が直轄の「Cプロジェクト」を立ち上げ、反撃に転じる。Cは「頂上」を意味する。開発コスト度外視で進められたプロジェクトの結果、2021年には2種類の走法にマッチした新商品「メタスピード」を発表。パリ五輪に先駆けては今春に「メタスピード」の第三世代をリリースして、今夏の大舞台に挑んでいた。 

 

 8月10日に本番を迎えたパリ五輪の男子マラソンでは、遠目にも鮮やかなイエローの「メタスピード」を着用する選手の多さがわかった。一時はナイキに独占された市場をアシックスは少しずつ奪い返していた。大手スポーツメーカーの営業担当者が言う。 

 

「今回の五輪の男子マラソンでは、ナイキの厚底シューズを武器に世界新記録や非公式記録ながら“2時間切り”を打ち立てた五輪2連覇中のキプチョゲ(ケニア)が早くから脱落。“時代の変化”を象徴するレース展開となりました。 

 

 選手だけでなく、シューズも“時代の変わり目”を迎えている。五輪史上最も過酷なコースといわれたレースを制したトラ(エチオピア)が選んだのはアディダスのシューズ。そして、銀メダルのアブディ(ベルギー)が履いていたのがアシックスのメタスピードでした。アブディは東京五輪と2022年世界陸上で銅メダルを獲得し、パリ五輪に向けてアシックスと契約した選手でした。頂上まではあと一歩でしたが、アシックスのアスリートが表彰台の2番目に立ち、ナイキに一矢報いた」 

 

 女子マラソンでは、アシックスのメタスピードを履いて今年1月の大阪マラソンで19年ぶりに日本記録を更新した前田穂南に期待がかかったが、右大腿骨疲労骨折のためレースを欠場。とはいえ、女子マラソンでも途中までの先頭集団にはアシックスのシューズを着用する海外選手が目立ち、数年前には考えられないほどの“日の丸ブランド復活”を印象づける結果となったのは間違いないだろう。 

 

 

「陸上競技だけでなく、パリ五輪の試合会場ではアシックスのイエローシューズに注目が集まっていました」と話すのは、スポーツジャーナリストだ。 

 

「男子バレーボールチーム、男子バスケットの河村勇輝がアシックスのイエローシューズでしたし、サッカーでも履いている選手がいた。五輪での結果は、今後のシェアにも影響してくる。陸上で言えば、年明けの箱根駅伝やニューイヤー駅伝でのシェアがどうなるかに注目です。2021年の箱根駅伝ではナイキ一色となり、“シェアゼロ”の屈辱を味わったアシックスだが、ようやくここまで戻ってきた感がある」 

 

 前出の大手スポーツメーカーの営業担当者は今大会を振り返りながらこう話す。 

 

「パリ五輪では日本のお家芸の体操やレスリングで金メダルラッシュとなったが、多くの人が驚いたのはフェンシングの強さでしょう。男子フルーレ団体、男子エペ個人で金メダルを獲得し、男子エペ団体では銀メダル、女子フルーレ団体、女子サーブル団体も銅メダルを獲った。 

 

 中継で面白かったのは選手たちがアシックス、ナイキ、ミズノ、デサント、アディダスと様々なブランドのシューズを履いていたこと。各社ともフェンシングの専用シューズは開発していないのです。競技人口が少なく市場規模としては期待できないかもしれないが、これだけ強いと宣伝効果は大きい。今後、各社による争奪戦がスタートするのではないか」 

 

 パリ五輪を経て、日の丸メーカーもさらなる進化を目指すことになる。もちろん、マラソンシューズで表彰台の「C=頂上」を目指すアシックスの戦いも続くことになる。 

 

 

 
 

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