( 201024 ) 2024/08/12 17:25:34 0 00 photo by gettyimages
8月5日、米国の景気減速懸念の高まりなどで、世界的に株式市場は全面安の展開だった。日経平均株価は、2日の終値から4,451円28銭安(12.40%下落)の3万1458円42銭で取引を終えた。韓国でも株価が売り込まれ、主力企業で構成する韓国総合指数(KOSPI)は前営業日から8.77%の下落で引けた。
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一方、為替市場の状況を見ると、日韓の通貨の状況は互いに異なる。7月末の日銀利上げの影響もあって日本円は対ドルで買い戻され、5日の東京時間、アジア通貨の中でも対ドル上昇率が高かった。
それに対して、韓国ウォンは対ドルで下落。韓国では株安・通貨安の傾向が鮮明化し、まさに韓国売りという状況に陥った。
ここまで世界経済は米国に支えられてきた。米国の景気減速が鮮明化すると、世界全体で成長率が下振れる。特に、韓国は中国向けの輸出回復が遅れていることもあり、経済状況は厳しさを増している。そうしたリスクを回避するため、ウォン売りに回る海外投資家は増えつつあるようだ。
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韓国経済は、米国に大きく依存していると言ってもいいだろう。4~6月期、韓国の実質GDP(速報値)は前期比で0.2%の減少。金利上昇などで内需は弱い。
それを補ったのは、米国向けの半導体、自動車等の輸出だった。特に、SKハイニックスがAI向けの広帯域幅メモリー(HBM)で先行したことは、対米輸出の増加に重要だった。頼みの中国経済が停滞気味に推移する中、韓国の対米輸出は7月まで12カ月連続で増えている。
しかし、ここにきて米国経済の減速懸念が一気に浮上した。8月2日に発表された米国の7月の失業率が、予想(4.1%)を上回る4.3%だったのだ。米国の労働市場は軟化しつつある。
米国の個人消費もこれから少しずつ鈍化するかもしれず、世界経済に負の連鎖が起こるリスクは高まっている。今後、米国経済の減速がさらに鮮明化すれば、世界経済の下振れ懸念はさらに上昇するだろう。
米国の雇用統計の発表後、リスク回避に動く海外投資家は急増した。5日、わが国と韓国の株価は大幅に下落。午後、KOSPIの下落率が8%に達すると、韓国証券取引所は株式取引を一時中断する“サーキットブレーカー”を発動した。
売買再開後、日経平均株価が下げ幅を拡大したのに呼応して、韓国の株式市場はさらに下落し、一時、KOSPIの下落率は10%を超えた。新興企業が多く上場するコスダック(KOSDAQ)も前営業日から11.30%の下落で引けた。さらにサムスン電子も年初来の安値を更新し、同10.31%の下落だ。日韓ともに主力株は総崩れに近い状況だった。
一方、5日のアジア時間(欧州の取引が始まる16時まで)の外国為替市場で、円とウォンの対ドル為替レートの変化は対照的だった。米国の急速な利下げ期待の上昇、世界的なリスク回避度の高まりを背景に、主要投資家は円キャリートレードを巻き戻した。アジア通貨の中でも、円の対ドル上昇率は高かった。
逆に、対ドルで下落したのが韓国ウォンだ。アジア通貨の中でも同様の動きをした通貨はあまり見当たらない。株安・ウォン安で、一時、韓国売りという状況だった。
海外投資家は米国経済の減速が鮮明化した場合、サムスン電子など財閥系大手企業の海外事業の収益性が低下し、韓国経済全体の成長率が下振れる展開に警戒を強めたのだろう。わが国以上に韓国の少子化は深刻であり、一旦景気が落ち込むと回復に時間がかかる恐れもある。
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過去、米国の景気が減速したタイミングで韓国から資金が流出し、ウォンが急落したケースは多い。例えば2020年3月半ば、コロナショックによって韓国は急速な資金流出に直面した。
韓国政府と韓国銀行(中央銀行)は資金流出を食い止められず、FRBにドル資金の供与を依頼したほどだ。その時の記憶を頼りに、早めにウォンを手放してリスクを軽減する投資家は増えているだろう。
金融市場の動揺を抑えるため、韓国政府は『緊急措置として市場の変動に対応する』と声明を出した。状況によって、ウォン買いの為替介入を行い、通貨を防衛する意思表明なのだろう。
歴史を振り返れば、ウォンは世界経済の減速に対して敏感に反応してきた。今回、日韓同時株安の一方、韓国のみ通貨安が進んでいる。今後の世界経済の下方リスクの高まりを示唆しているかのようだ
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筆者連載『株価調整中のエヌビディア、これから絶好の「買い場」到来…?この局面で「損する投資家」』が盲信しがちな「ある数字」』もあわせてお読みください。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)
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