( 202310 )  2024/08/16 16:24:43  
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ミスタードーナツはV字回復を果たしており、コロナ禍で業績が回復して再出店を計画している。

業績が悪化した要因は少子高齢化とカフェの台頭であり、特にカフェチェーンのスターバックスが強力な競合となっている。

しかし、コロナ禍により家族向けのテークアウト需要が高まり、ミスドは好調な業績を維持している。

100円セールを終了し、高付加価値商品や食事メニューの充実、店内改装などの施策を行い成功を収めている。

(要約)

( 202312 )  2024/08/16 16:24:43  
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V字回復を果たしたミスドの取り組みに迫る 

 

 ミスタードーナツがV字回復を遂げている。2013年のピーク時と比較して300店舗以上を閉鎖し、事業売上高も500億円台から350億円台まで減少したが、コロナ禍で業績が回復し、再出店を計画している。 

 

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 日本上陸から50年以上がたち、少子高齢化も進んでいるが、なぜ今になって回復を果たしたのか。同社の取り組みを見ると、コロナ禍以前からの施策が効果を発揮していることが分かる。 

 

 ミスタードーナツは、エアコンクリーニングで知られるダスキンが直営店とフランチャイズ(FC)店の運営を行っている。元はアメリカ発祥のドーナツチェーンだが、ダスキンの創業者が渡米した際、ドーナツの味に感動してビジネスチャンスになると考え、日本に持ち込んだ。 

 

 1971年に国内1号店を構えたのち、3年後には早くも100号店をオープン。1971年に国内1号店を構えたダンキンドーナツが有力な競合だったが、ミスドの勢いを前に、1998年に日本から撤退している。ちなみに本国である米国にミスドは1店舗しかなく、日本とは反対にダンキンドーナツは9000店舗以上構えている。 

 

 その後、2006年に日本1号店をオープンしたクリスピー・クリーム・ドーナツや、コンビニによるドーナツ販売など、新興勢力の参入に見舞われたものの、ミスドは1000店舗以上を展開する唯一のドーナツチェーンとして日本市場を抑えてきたのがこれまでの歴史だ。 

 

 ミスドの店舗数は2013年3月期末の1376店舗で頭打ちとなり、2020年3月期末時点では1000店舗を下回った。業績悪化を前に不採算店の閉鎖を進めたためである。ダスキンのフードグループ事業は主にミスド事業によるものだが、2013年3月期に売上高488億円・営業利益11億円だった同事業の業績は、2020年3月期には売上高362億円・営業利益6億円にまで縮小した。 

 

 ミスドの業績が悪化した要因としては「少子高齢化」と「カフェの台頭」の2点が考えられる。テークアウト主体でファミリー層を主なターゲットとするミスドにとって、子どもの減少はパイの縮小を意味する。また、高齢化に起因する健康意識の高まりが、高カロリーなドーナツから消費者を遠ざけたと考えられる。 

 

 また、都市部では外資系チェーンのカフェが競合であり、ミスドの凋落と好対照に業績を伸ばしてきた企業が多い。特にスターバックスはコーヒーのイメージが強いものの、甘さを求めて飲むフラペチーノ類が充実しており、ドーナツの有力なライバルとなる。 

 

 この間、ミスドは不定期で「100円セール」を実施し集客を図ったが、セール期間以外の売り上げが低迷し、2016年に終了した。なお、ダスキンは低迷の背景として「以前の1等地が1等地でなくなる商圏の変化もあった」と主張しており、業績悪化を前に不採算店の閉鎖を進めてきた。 

 

 一方、外食チェーンのほとんどが苦しんだコロナ禍では業績が伸びた。2020年3月期から24年3月期におけるミスドの国内チェーン全店売上高及び店舗数は次の通りである。 

 

チェーン全店売上高:771億円→780億円→929億円→1055億円→1248億円 

 

店舗数:977→961→979→998→1017 

 

 同期間中は発売した商品がいずれも好調な売れ行きとなった。また、テークアウト需要の高まりも追い風となった。前述の通りミスドはファミリー層を主体とし、売上高に対するテークアウト比率はおよそ6割だ。外出自粛ムードの中、家族で楽しめるものとして以前よりテークアウトとの相性が良かったミスドが注目されたのだろう。何回か実施した値上げも売上高をかさ上げした。 

 

 

 コロナ禍が明けた2024年3月期も好調が続いていることから分かるように、ミスドのV字回復には巣ごもり需要以外の要因もある。例えば、100円セールを終了して以降、商品の付加価値を高める施策を行ってきた。 

 

 その一つが2017年から販売している他社との共同開発商品「misdo meets」だ。第1弾では京都の宇治茶専門店「祇園辻利」とコラボした抹茶オレや「わらびもち抹茶」ドーナツなどを販売している。他にも、2022年にはバレンタイン時期に合わせてベルギーのチョコブランド「ヴィタメール」と共同開発商品を販売。3種類のハート型ドーナツはいずれも本体価格が税別240円と、通常品の価格帯が150円前後であることと比較すると高めである。 

 

 ドーナツ以外のメニューとして「ミスドゴハン」の強化も2017年以降進めてきた。期間限定でさまざまな麺類を発売し、最近では2023年10月に「ピザッタ」を発売。直近では6月にもミスドゴハンシリーズとして、カレーパンのような生地にたまごやメキシカンミートを挟んだ「ザクもっちドッグ」を発売している。 

 

 ミスドは商品施策以外にも、「V/21」と称する居心地を追求した新型店舗として、既存店の改装を進めた。2024年3月期は約100店舗の改装を行っており、都内のリニューアル店を見てみると、内壁は白いレンガを模したデザインで、店内にはゆったり座れるソファ席が置いてある。カフェのような雰囲気があり、サードプレースとしてくつろげる印象だ。店舗改装による効果か、店内では1人でくつろぐ女性客や勉強する学生客が今まで以上に目立つようになった。 

 

 100円セール廃止後の施策をまとめると「高付加価値ドーナツの提供」「食事メニューの充実」「店内改装」の3点だ。中でも食事メニューの充実と店内改装はイートイン強化を目的とした施策であることは注目に値する。テークアウトのファミリー層だけでなくイートインも取り込み、市場の変化とともに客層を拡大できたことが成功につながったといえる。 

 

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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