( 202662 ) 2024/08/17 16:40:08 0 00 東大生の「キャリア官僚離れ」が進んだ背景とは(イメージ)
内閣人事局調査によれば、2024年の通常国会中(2月5日~3月31日)、「官僚が答弁を作り終えた時刻の平均は、委員会当日の午前0時48分」だったという(朝日新聞2024年7月24日付け)。霞が関官僚の長時間労働の問題は今に始まったことではないが、何度も俎上に載せられながら、なぜいっこうに改善されないのか? この現実こそ、日本の機能不全の象徴ではないのか──。
【グラフで一目瞭然】公務員採用試験の申込者数の推移。総合職は3割超、一般職も4割減
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
* * * 最近、日本の崩壊の足音が聞こえてきたと痛感するのが、国家公務員人気の陰りである。
採用試験の申込者数の落ち込みは顕著だ。人事院によれば2022年の総合職試験は1万8295人にとどまり、2011年の2万7567人と比べて33.6%減だ。
2024年の春試験でも人気の陰りは続いており、総合職試験の申込者数は過去最少の1万3599人となった。倍率も7.0倍と過去最低を記録した。
地方公務員も受験者数が大きく減ってきているのだが、なぜ公務員離れが鮮明になってきたのか。要因は複雑だ。国家公務員と地方公務員とでは異なる部分もある。
人事院によれば、国家公務員採用試験申込者数の落ち込みは総合職だけではない。2011年と2022年を比較すると一般職試験(大卒程度試験)は39.5%減、一般職試験(高卒者試験)は43.1%減だ。
このうち総合職に関しては、人気の陰りを象徴する大きな変化がもう1つ見られる。東京大学からの合格者が激減しているのである。
国家の政策の企画立案などに携わる総合職と言えば、「キャリア官僚」と呼ばれる各省庁の幹部候補であり、東京大学出身者が例年トップを占めてきた。2023年の春試験においても大学別では東大の193人が最多だったが、前年度と比べて24人減った。現行の総合職試験制度となってから最少だ。東大からの合格者が200人を下回ったのは初で、10年前と比べると半減である。
2024年の春試験における合格者は、東大はトップをキープしたものの前年の春試験より4人少ない189人で、過去最少を更新した。総合職の合格者総数は1953人なので、東大は1割にも満たないということだ。
東大生の「キャリア官僚離れ」が進んだ理由はいくつもあるが、長時間労働の常態化が主要因の1つと見られている。若い世代では働き方に対する関心が高まっており、過酷な職場に対して「受け入れ難い」と感じる人が少なくない。国会議員からの事前の質問通告が遅く、国会答弁作成終了時間が夜中に及ぶといった官僚の過酷な働きぶりが敬遠されているのである。
こうした官僚を取り巻く労働環境の悪さを知って、東大生に限らず他の一流大学でも「同じ激務ならば、官僚になるよりも、より多くの報酬を得られる外資系企業などに勤めたほうがよい」と考える学生が少なくないのだ。起業する人も増えている。
現状を見るにつけ、国家の土台部分が崩れ始めている印象を受けるのは私だけではないだろう。
【プロフィール】 河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。
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