( 202787 ) 2024/08/18 00:58:01 0 00 写真:LIMO [リーモ]
8月5日の日経平均株価は終値ベースで前日比4451円安となり、1987年10月に記録したブラックマンデーの3836円安を超えました。三井住友フィナンシャルグループやJTなど、配当利回りが高く、個人投資家から絶大な人気を誇る超優良銘柄ですらストップ安の憂き目にあいました。投資の世界に「絶対大丈夫」などないことが証明された、まさに歴史的な一日でした。
◆【主な新発債の利率一覧表】国債・地方債・社債のリターンが一目でわかります
株価の乱高下に一喜一憂し、資産価値の変動リスクを抑える必要性を痛感している個人投資家は多いのではないでしょうか。こうした機会にぜひ考えたいのが「分散投資」と「質への逃避」です。
分散投資とは、文字通り一つの投資先ではなく、複数の異なる資産に投資を行うことや一括ではなく複数回に分けて金融商品を購入することを指します。どのように分散させるかは、株式や債券・リートなど資産の特性、国や通貨、銘柄やセクターなど、さまざまな観点から可能です。
本記事では「株式や債券・リートなど資産の特性」の観点からの分散投資をみていきます。
また、足元のように株式や為替市場が大きく上下に変動し、先行きが見通しにくい環境下では、運用資産を相対的にリスクが低く、流動性の高い資産に移す動きが強まります。こうした動きを「質への逃避」といい、長期で安定した資産形成を考える際には、有効な手立ての一つといえます。
「分散投資」と「質への逃避」の観点から、金融商品のなかでもリスクが低く、株式とは反対の値動きをするとされている「債券」に注目してみましょう。
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一口に債券投資といってもさまざまな種類や手法があります。投資信託やETFに組み込まれた債券に投資する方法もありますが、今回は債券の現物についてみていきます。さらに、債券のなかでも個人投資家が購入しやすい、新規発行かつ円貨建ての債券について解説します。
この記事で紹介する債券の特徴
・現物 ・新発債 ・円貨建て債 新発債の場合、国や地方公共団体、企業(債券では発行体といいます)が発行する債券を購入すると、発行時に決められた利率に基づいた利息を受け取ることができます(利息には20.315%の税金がかかります)。その後、満期を迎えるタイミングに債券の額面金額が払い戻されます。
個人で購入できる円貨建ての主な債券は以下の通りです。なお、債券では発行体がもつ元利金の支払い能力や財務の健全性などの「信用力」に基づいて利率が決定されます。信用力が高いほど利率は低く抑えられ、低いほど利率は高くプライシングされるようになっています。また、満期までの年限が長くなるほど利率は高くなります。
・個人向け国債 ・地方債(住民参加型) ・社債(事業債)
国債は、国が発行する債券です。元本や利子の支払いは国が責任を持って行うため、安全性が高いとされています。
個人が購入できる国債は3種類あります。実勢金利に応じて適用金利が変わる変動金利型10年債のほか、満期まで利率が変わらない固定金利型5年債、固定金利型3年債とがあります。マーケット環境の変化などにより実勢金利が下落した場合でも、年率0.05%の最低金利が保証されていることなどが特徴です。
最低1万円から1万円単位で、証券会社、銀行等の金融機関や郵便局で購入できます。
都道府県や市町村など地方公共団体(地方自治体)が発行する債券です。元本や利子の支払いは各自治体が責任を持って行うため、国債に次いで安全性が高いとされています。地方債の利率は国債と社債のあいだの水準になるため、国債の利回りでは物足りない、かといって社債では不安という人には地方債がおすすめです。
2024年4月発表時点では、東京都や埼玉県などが住民参加型市場公募地方債の発行を予定しています。購入を検討している地方自治体が個人向けの地方債を発行しているかは、各自治体のホームページなどで確認できます。発行している場合、発行条件や募集期間、取り扱い金融機関なども併せて調べておくとよいでしょう。最低5万円や10万円から、5万円単位、10万円単位などで購入できます。
※状況の変化等により、発行予定時期、発行予定団体及び発行予定額は変更の可能性があります。 発行の詳細については、各発行予定団体にお問い合わせください。
一般の事業会社が発行する債券です。社債、事業債などと呼ばれます。日本の債券市場では、100億円単位のまとまった額の資金を定期的に調達する必要がある電力会社の「電力債」が代表格です。ただ、電力債は個人向けの発行もありますが、主に機関投資家向けが中心です。個人向けでは、大規模なM&Aなどで資金調達のニーズが多いソフトバンクグループがたびたび社債を発行することで有名です。このほかでは、民鉄やJR、ノンバンク、メガバンクなどが個人向け社債を発行しています。
社債への投資を検討する際に参考にしたいのが、外部の格付会社が発行体の信用力を分析したうえで付与する「格付(かくづけ)」です。格付とは、発行体がもつ元利金の支払い能力や財務の健全性など、安全性や総合力をアルファベットとプラスマイナスの記号でランク付けしたものを指します。格付会社は、日本では格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)の2社が存在します。
R&IとJCRの格付は同じ符号で表され、AAA/AA/A/BBB/BB/B/CCC/CC/Dまでのランクがあります。投資適格はBBB(トリプルB)以上となります。なるべくリスクを取らずに安全性の高い社債に投資したいと考える方は、格付会社からシングルAクラスやAA(ダブルエー)クラスの高い格付を付与されている債券を検討するのがおすすめです。なお、R&Iで最上位のAAA(発行体格付)を付与されている日本の企業は、トヨタ自動車、デンソー、トヨタファイナンスです(2024年7月31日時点)。
最低10万円から10万円単位で購入できる銘柄が中心ですが、最低100万円から100万円単位の銘柄もあります。発行する債券の引受証券会社で購入できます。
個人が購入できる債券の種類が分かったところで、債券投資のメリットとデメリットをみていきましょう。
まずは債券投資のメリットについて説明します。
・手数料がかからない(円貨建ての場合) ・金融商品のなかでも安定性と安全性が高い ・株式と併せて投資するとリスク分散できる ●手数料がかからない(円貨建ての場合) 円貨建ての債券を購入する場合、手数料はかかりません。
●金融商品のなかでも安定性と安全性が高い 満期日まで定期的に利息が受け取れることに加えて、中途換金せずに持ちきれば額面金額が払い戻されます。
●株式と併せて投資するとリスク分散できる 株式と債券は「負の相関係」にあり、反対の値動きをするとされています。株式が上がっているときには債券が下がり、債券が上がっているときには株式が下がります。具体的にはマーケット環境が良好で、投資家が株式投資のリスクを積極的にとっていく姿勢のときは株式に資金が集中して、債券は売られます。反対に、景気後退などでマーケット環境が悪化した際は投資家がリスクを取りにくくなり、株式市場から資金が流出し、安全性の高い債券に流れ込みます。組み合わせて投資することで相互に補完し合い、リスク分散できることから、安定的な資産形成が実現しやすくなります。
続いて債券投資のデメリットについて説明します。
・新NISAの対象外 ・中途換金しにくい ・発行される債券の種類や発行量が限定的 ●新NISAの対象外 現物の債券を購入する場合は、新NISAの対象外となるため、税制上の優遇は受けられません。新NISAで債券に投資したいと考える場合は、株式など複数の資産に債券を組み入れた投資信託やETFを選びましょう。
●中途換金しにくい 株式同様、債券も中途換金することは可能ですが、株式とは異なり個人投資家が自由に売買できるセカンダリーマーケットが存在しません。このため、売却は金融機関を通じて行うこととなり、必ずしも希望価格で売却できるとは限りません。場合によっては元本を下回る可能性も出てきます。
ただし、国債は発行から1年が経過すれば中途換金できます(額面金額に経過利子相当額を加えた金額から、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685の中途換金調整額が差し引かれます)。
●発行される債券の種類や発行量が限定的 前述のように、個人が購入しやすい主な債券は国債や地方債、社債と種類が限定的です。このほかに、海外発行体が円貨建てで発行するサムライ債などもありますが、個人向けの発行はごく稀です。また、国債や地方債は定期的に発行されますが、社債の発行はまちまちです。
さらに、個人向けの社債を発行するのは、ソフトバンクグループなど特定の企業に偏っていることもあり、全体の発行量は多くありません。高めの利率でプライシングされた社債は人気が殺到し、即日完売となるケースも見受けられます。情報収集がやや難しく、口座を持っている証券会社のホームページなどで新発債の発行予定を小まめにチェックする必要があります。
以上のように、債券投資のメリットとデメリットを紹介しました。では、どんな投資スタンスを持っている人が債券投資に向いているのでしょうか。債券投資を検討している人は以下のチェック項目を確認し、ご自身の投資スタンスと合致しているかどうか、みてみてください。
・高いリスクを取りたくない人 ・日々の価格変動をチェックする手間を避けたい人 ・長い時間をかけて安定した資産形成を目指している人 ●高いリスクを取りたくない人 安全性の高い金融商品とはいえ、債券にも利払いが滞ったり元本の払い戻しが困難になったりする債務不履行のリスクが生じます。それでも、国債や地方債、できるだけ信用力の高い企業の社債を選べば極力リスクを抑えることは可能です。
●日々の価格変動をチェックする手間を避けたい人 個人向けの債券は満期まで持ちきることが前提の商品です。もちろん既発債の評価額は日々変動しますが、債券のセカンダリーマーケットは機関投資家向けであり、株式のように個人が自由に売買できるものではありません。
債務不履行が生じない限り、満期まで保有すれば年限分の利息が入り、額面金額が払い戻されますので、こまめに価格のチェックをする必要はないといえます。
●長い時間をかけて安定した資産形成を目指している人 債券の満期までの年限はさまざまですが、円貨建ての新発債の利率は決して高くないため、ある程度の投資妙味を得ようとするなら、投資年限を伸ばす必要があります。国債の変動利付型10年債をはじめ、地方債と社債でも5年債や7年債、10年債など満期までの年限が長いものもあります。
年限リスクが高くなる一方で、5年10年とゆっくり長い時間をかけて安定して資産を増やせるメリットが享受できます。例えば年限5年で利率1%の社債を100万円分購入したとして、年間1万円(税金の20.315%は考慮しないものと仮定します)の利息が5年間安定して得られることになります。
債券投資では、持ちきりを前提とすれば満期時に得られるリターンの総額が投資の初期段階から明確になっているため、将来の資金計画が立てやすくなるという利点もあります。上記の例では、満期時に払い戻された元本と併せて105万円が手元にある計算になります。
ただ、換金しにくいことから、投資資金は5年や10年のあいだ拘束されることになります。結婚や出産、子どもの進学や家を購入するなどライフイベントが直近に予定されておらず、まとまった資金を長期で投資できる方が債券投資に向いているといえるでしょう。
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