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日本ボクシング連盟が、パリ五輪での性別騒動の引き金となったIBAからの脱退を検討しており、新しい組織ワールドボクシングへの加盟も検討していることが明らかになった。

IOCは昨年からIBAを問題視しており、性別騒動に関連する問題でIBAが新組織を設立したことを支持している。

ケリフの弁護士もIBAを批判している。

(要約)

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日本ボクシング連盟がパリ五輪で性別騒動の引き金を作ったIBAからの脱退を検討。IOCから除外され金メダルを獲得したケリフの弁護士も批判している団体だ(写真・ロイター/アフロ) 

 

アマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟がパリ五輪の女子ボクシングで金メダルを獲得したイマネ・ケリフ(25、アルジェリア)とリン・ユーチン(28、台湾)を性別騒動に巻き込む発端を作ったIBA(国際ボクシング協会)を脱退し、新組織ワールドボクシングへの加盟を検討していることが17日までに明らかになった。同連盟は今日18日に都内で会見を開き今後の方針を発表する。IOC(国際オリンピック委員会)は、昨年からガバナンスに問題のあるIBAの競技統括団体の資格承認を取り消し、2028年ロス五輪での競技継続に向けて米国などを中心に立ち上がった新組織ワールドボクシングを支持する姿勢を明らかにしている。 

 

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 パリ五輪で話題を集めたのが女子ボクシングの性別騒動だ。 

 ケリフとリンの女子ボクサー2人が、SNSやネット上で誹謗中傷のターゲットにされたが、その苦難を乗り越えて金メダルを獲得して世界の賞賛を浴びた。 

 だが、日本ボクシング連盟は、今回の騒動に関しての意見や感想などのコメントを出していない。なぜか? 現在はまだ今回の騒動のきっかけを作り2人の資格を認めていないIBAに加盟しているからだ。 

 IBAは、パリ五輪が開幕すると、昨年の女子世界選手権で性別適格性検査を行い、ケリフとリンの2人から一般的に男性が持つとされる「XY」染色体が検出されたことなどを理由に2人を失格処分としたことを明かし、2人の五輪参加に“クレーム”をつけた。そのことが「男子が女子の大会に参加している」との誤解を生み騒動を広げることになった。 

 ただちにIOCは「すべての人間に差別なくスポーツを行う権利がある」との声明を出し、2人の五輪出場に問題がないことを示すと同時に、そのIBAの検査方法などが「不透明で欠陥がある」と指摘した。 

 昨年IOCは不正が横行しガバナンスが機能していないIBAの統括団体資格承認を取り消して五輪から排除していた。今大会は東京五輪に続きタクスフォースが運営していた。そのIOCとIBAの政治的対立が性別騒動の背景にあった。誹謗中傷問題の提訴に踏み切ったケリフの弁護士も、IBAの姿勢を糾弾。世論からの非難の声がIBAに向けられることになった。 

 だが、日本ボクシング連盟は現在その問題含みのIBAに加盟している。6月に同連盟の会長に就任したばかりの仲間達也氏は、その所信表明で、今後の検討課題として連盟内で議論を重ねているとしながらも、明確なスタンスを明かさなかった。 

 昨年11月には、全日本ボクシング選手権に合わせてロシアの実業家であるIBAのウマール・クレムリョフ会長が来日。日本ボクシング連盟がIBAに正式プレゼンしていたAIを利用した新採点システムを視察するなど親密な関係にあったからだ。同連盟は、提案した新採点システムに興味を抱き、組織の改革に乗り出しているIBAが、IOCと“雪解け”することに期待を寄せていた。 

 だが、今回の性別騒動でIOCとIBAの亀裂は決定的なものになった。その状況を受けて連盟内で具体的に議論が重ねられ、IBAを脱退し、新組織のワールドボクシングへの加盟に方針転換することが検討された。仲間会長がパリ五輪の視察に訪れて現地で情報を収集し、両団体との調整交渉も行った。 

 

 

 IOCのトーマス・バッハ会長は、五輪期間中の会見で、4年後のロス五輪でのボクシング競技継続の意向を示したものの、一方で五輪競技から除外されない条件として国際的な新運営組織の必要性を説き、米国を中心として立ち上がり、スイスに本部を置くワールドボクシングを支持する姿勢を明かしたことが、日本の方針転換を促す決定打になったとみられる。 

 日本はロンドン五輪の男子ミドル級で村田諒太が金メダル、同バンタム級で清水聡が銅メダルを獲得し、東京五輪では、女子フェザー級で入江聖奈が金メダル、同フライ級で並木月海が銅メダルを獲得するなど、五輪を目標に強化体制を整えて結果も出してきた。パリ五輪では金メダルを期待された岡澤セオンが初戦敗退、原田周大が準々決勝で敗退するなどメダルは獲得できなかったが、五輪を競技の中での最重要の位置づけとして考えるのであれば、IOCが支持するワールドボクシングへの加盟に舵を切ることを検討するのは、ある意味、当然の結論なのかもしれない。 

 ただIOCはワールドボクシングを正式な五輪運営の統括団体と認める条件として50か国以上の加盟を求めている。現在の加盟国は、米国、英国、カナダ、ドイツ、オランダ、イタリア、豪州、韓国、フィリピン、台湾など、まだ42か国に留まっている。アジアでは、パリ五輪の男子で5つの金メダルを獲得した強国のウズベキスタンや、女子で3つの金メダルを獲得した中国が加盟しておらず、特にアフリカ諸国がまだナイジェリア1か国しかなく、この地域の加盟国を増やすことが課題とされている。母国でケリフを盛大なパレードで出迎えたアルジェリアなどが参加の意思を表明しているが、ロス五輪までに条件を満たすことができるかどうかは不透明だ。 

 さらに男女の世界選手権はIBAが主催しており、日本がIBAを脱退すると参加できなくなる。4年に一度の五輪と共に世界選手権は選手にとって大きなモチベーションの大会。五輪に比べて参加可能な選手の人数も多いため、その目標がなくなることの影響も大きい。ワールドボクシング側も、すでにU19のワールドカップを実施、今年は世界選手権に代わるワールドカップの開催などを計画しているが、どの程度のレベルや規模の大会になるかもわからず、そこもIBAを脱退した場合の問題点としては残る。同連盟は本日18日に仲間会長らが「国際団体との関係性について」の会見を開き、今後の日本のスタンスを明らかにすることになっている。 

(文責・本郷陽一/ROSNPO、スポーツタイムズ通信社) 

 

 

 
 

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