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甲子園の開会式で整列する審判団。

熱戦の内幕だけでなく、今大会では「誤審疑惑」の問題もたびたび話題に上がった。

審判員は微妙なジャッジをどう考えているのか、その一端が紹介されている。

(要約)

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甲子園の開会式で整列する審判団。熱戦の内幕だけでなく、今大会では「誤審疑惑」の問題もたびたび話題に上がった photograph by JIJI PRESS 

 

 連日熱戦の続く真夏の甲子園。球児たちの全力プレーに胸が熱くなる一方で、今大会も度々話題になるのが微妙なジャッジを巡る“誤審問題”だ。先のパリ五輪でも多くの判定が物議を醸しただけに、高校球児たちの晴れ舞台でも侃々諤々の議論が巻き起こっている。そんな喧騒を現役の審判員はどう見ているのか。話を聞いた。《全2回の1回目/つづきを読む》 

 

【写真検証】「こ、これでアウトはさすがに…」“疑惑の判定”に審判団が誤審を認めたケースも…横浜、大阪桐蔭、早実のあの選手も…甲子園のレジェンドOBたちの高校時代も一気に見る(30枚超) 

 

 この夏の甲子園。 

 

 ある試合の後半での出来事だ。 

 

 2死三塁。左バッターが引っ張った一塁ゴロ。 

 

 ベースカバーに走った投手に一塁手からボールが送られて、駆け込んだ打者走者より、投手の方が一瞬先に一塁ベースを踏んで、間一髪、アウト!  

 

 そう見えたプレーだったが、次の瞬間、一塁塁審が決然と両手を広げ、「セーフ!」と叫んでいた。 

 

 アウトだと思って駆け抜けていた投手がびっくりして振り返り「ちょっ、ちょっと、待ってくださいよ」とばかりに、右手を振って、「違う、違う」のジェスチャーだ。 

 

 エエーッという表情で、どうしたらよいかわからなくて、口を開けて、笑っている。 

 

 人間、驚きや悲しみがつき抜けると、うっかり笑ってしまうことがあるが、まさにそんな、笑うしかしょうがない……アウトを訴えたくても、誰も味方になってくれそうもない、そんな空気を嗅ぎとってしまった時の、悲しげな笑いだった。 

 

 スロービデオで確かめてみたら、一塁ベースカバーの投手は、右足のかかとでベースの外野寄りを踏んでいるように見えた。 

 

 踏んだ直後に、投手の体が左側に傾くようにバランスを崩しかけたのも、高さのある一塁ベースをかかとで踏むという、難しい動作をしたための崩れに見える。 

 

 もし踏み損なっていれば、「しまった」という思いが多少なりとも顔に出るのが人間だろう。まして高校生なら……今回は、そんな気配が全く見えなかった。 

 

「テレビで見てましたから、逆によく見えてました」 

 

 ある自治体で、高校野球のジャッジをしている現役審判員の方だ。 

 

「確か位置的に、投手のかかとは一塁ベースの上にありましたから、から足っていうんですか。スパイクはベースの上にあったけど、接触はしてない……そういう究極の判定をされたんじゃないですかね」 

 

 甲子園球場100周年の夏の大会。 

 

 熱戦続出に盛り上がる一方で、アンパイアの微妙なジャッジも話題に挙げられていた。 

 

 同じ試合の終盤。 

 

 遊撃手の前に緩いゴロが転がる。 

 

 明らかに、内野安打狙いの「当て逃げ」だったから、一塁へ向かった打者走者のスピードは素晴らしく、懸命に突っ込んで捕球即アンダーハンドから繰り出した遊撃手の送球も、ヘッドスライディングの手が一瞬早く一塁ベースを「捉えた!」と思った瞬間、ジャッジは「アウトー!」。 

 

 まわりで見ていた4人が、全員「ええーっ!」。  

 

 スロービデオの「おさらい」を待ってみたが、画面にスロービデオは出されなかった。 

 

「基本、手でベースタッチにいくヘッドスライディングは片方の手でブレーキをかけることが多いので、スピードが落ちてタイミングアウトがほとんどなんです。頭から滑るから、怖いんですね、選手たちも。一塁へのヘッドはむしろ、ベースの上にドーンとダイビングする感じでいったほうがセーフになりやすいんです」 

 

 一塁ヘッドスライディングの「ほんとのところ」を教えていただいてしまった(※諸説あるようです)。 

 

「微妙に見えるジャッジはいろいろあると思うんですけど、アンパイアのジャッジがいちばん正しいんです」 

 

 そう自信をもって答えてくれた審判員の方。その理由はつまり、こういうことだという。 

 

<次回へつづく> 

 

(「マスクの窓から野球を見れば」安倍昌彦 = 文) 

 

 

 
 

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