( 205755 )  2024/08/27 15:07:51  
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NHKのラジオ国際放送で中国籍の男性スタッフが突然「尖閣諸島は中国の領土である」と主張するなどの不適切な発言を行い、NHKは契約を解除し検討中。

この男性は中国出身でエリートとして活躍し、日本や中国のメディア関連の仕事をしていた。

中国の愛国心からNHKで不適切な行動を起こしたのか、または何か背後にある事情があったのか、動機には疑問がある。

この出来事は中国でも報道され、議論を呼んでいる。

(要約)

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写真:現代ビジネス 

 

「釣魚島と付属の島は古来から中国の領土である」 

 

8月19日13時過ぎ、日本の公共の電波で、突如そんな「宣言」が発せられた。 

 

【写真】「富士山が見えないから切った」中国資本ホテルが隣人宅のヒノキを無断で伐採 

 

NHKのラジオ国際放送の中国語ニュースで、靖国神社の落書き事件について原稿を読み上げていた男性スタッフが、「『軍国主義』『死ね』などの抗議の言葉が書かれていた」という原稿にはない文言を勝手に加えて発言。 

 

そして、冒頭のように尖閣諸島が中国の領土であると主張したうえ、「NHKの歴史修正主義宣伝とプロフェッショナルではない業務に抗議する」と批判したのだ。 

 

さらにこの男性スタッフは、英語でも「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」と語るなど、20秒以上にわたって原稿にはない発言を繰り返した。 

 

NHKによると、これらの発言を行ったのは'02年から外部スタッフとして契約していた中国籍の男性。同局は男性との契約を8月21日付けで解除し、損害賠償請求や刑事告訴を検討しているという。 

 

公共放送が突如ジャックされるという異常自体だけに、NHKの管理体制にも疑問の声が上がっているが、そもそもこの中国人スタッフはいかなる人物だったのか。 

 

NHK関係者によると、この中国人男性スタッフ(以下・K氏)は中国山西省の出身で、現在49歳。留学生として日本に来たのは20代のときで、最終学歴は東京大学大学院卒というエリートだという。 

 

K氏はナレーター・レポーターとして幅広く活躍していたようで、ナレーター派遣会社のHPにはこんなプロフィールが記載されている。 

 

〈NHK国際放送局のアナウンサーをはじめとして、フリーのジャーナリスト、ラジオ番組司会者、テレビ番組コーディネーター、ライター、翻通訳者として、多岐にわたり活躍している〉 

 

また、これまでのナレーションを務めた経歴をみると、 

 

〈NHK「ラジオ・ジャパン」、「テレビで中国語」、「みんなでニホンGO!」、「プロジェクトX」(中国語版)、「東京の歩き方」、「Weekend Japanology」など〉 

 

と列記されており、NHKとの関わりの深さがうかがえる。だが、K氏の「仕事相手」はNHKだけにとどまらない。「経歴」の「その他」の欄には、 

 

〈トヨタ自動車、ソニー、パナソニック、東芝、京セラ、ユニクロ、資生堂、ニコン等日本の大手会社、内閣府、経済産業省、警察庁等官庁の中国語VPナレーション実績百件近く〉 

 

とも記されている。詳しい業務内容については書かれていないが、プロモーションなどの仕事をこれらの企業や官庁で担当したと思われる。 

 

 

さらにK氏は、日本だけでなく中国メディアからの仕事も請け負っていたようだ。中国のSNS「ウェイボー」で検索すると、K氏が中国の衛星テレビ局「フェニックステレビ(鳳凰衛視)」の「特約記者」として、カメラの前で日本の現地報道を行う動画が複数ヒットする。 

 

たとえば今年1月3日には、前日に滑走路上で航空機衝突事故が起きた羽田空港からレポート。また昨年8月24日には、福島第一原発の「汚染水放出」についても現地からレポートし、住民による抗議活動などについて伝えたのちに「地元水産業は致命的な打撃を受けるだろう」と締め括っていた。 

 

そんなK氏が起こした今回の「NHKジャック事件」については、中国国内でも報じられ、話題となっている。K氏の実名こそ今のところ特定されていないが、 

 

「日本の宣伝機関を乗っ取り、真実を伝えた彼は真の英雄だ」 

 

「央視(中国中央電視台)は彼を特別待遇で迎えるべき」 

 

などと、愛国発言を行った「名もなきナレーター」を称賛する声があふれている。 

 

Photo by gettyimages 

 

K氏は中国への愛国心から、突如としてNHKで「不適切発言」を行ったのだろうか。しかし、K氏の仕事仲間はこう首を傾げる。 

 

「たしかに彼は、中国への愛国心を相応に持っていたと思います。しかし責任が強く、自らの思想・信条や一時の名声ために職場に迷惑をかけるようなことはしない絶対にしないタイプです。実際、これまでに問題を起こすようなことはしたことがありませんでした。 

 

そもそも、不規則発言をするような人物は中国系メディアや企業も起用を敬遠するので、今後のキャリアにも悪影響を及ぼす。なぜあんな発言をしたのか、理解できません」 

 

一方で、こんな憶測も出ている。 

 

「誰かに命令され、それを断ることができない事情があったとすれば、合点がいきます。彼が『特約記者』を務めていたフェニックステレビは、表向きは民間企業ということになっていますが、中国共産党の直接的な影響力のもとにあり、党の工作員が局員として多数出向していると言われています。それだけに、彼が工作活動に利用された可能性も否定できません」(同前) 

 

現段階では陰謀論に過ぎないが、たしかにフェニックステレビには日本国内で「工作活動」の前科がある。'07年8月、海上自衛隊横須賀地方総監部を訪問した中国国防相の取材に同行していた同局クルーが、撮影を禁じられている海自の潜水艦や米海軍のイージス艦を隠し撮りしていたことが発覚しているのだ。 

 

事情を聞くべく、K氏の携帯に連絡をしたが電話には出ず。また、都内にある自宅も訪れたが、インターフォンを押しても応答はなかった。 

 

前代未聞のNHKジャック事件の裏には何があったのか。動機の解明が待たれる。 

 

……・・ 

 

【さらに読む】『NHKが国際放送で「尖閣諸島は中国の領土」と発言し波紋…外国人労働者が増える日本で起きる「重大な問題」』 

 

奥窪 優木(フリーライター) 

 

 

 
 

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