( 206440 )  2024/08/29 16:48:47  
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プロ野球の試合で活躍する売り子のギャラシステムや稼ぎ方について、元売り子の田中春香さんの話が紹介されています。

売り子は主に日給と売上によるインセンティブで収入を得るため、売上を増やすためには笑顔やフレンドリーさが重要だとされています。

一杯売ったときのインセンティブには差があり、ビールよりもサワーの方が売れることが多いそうです。

また、天候に左右されることやファールボールの危険など、過酷な面もある一方で、リピーターを増やすことが重要だと語られています。

(要約)

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写真はイメージ 

 

 プロ野球の試合を球場で観戦していると、必ず目に入るのが、ビールなどのドリンク販売を行う「売り子」の女性たち。可愛いコスチュームと満面の笑顔でキンキンに冷えたビールやサワーを注いでくれるだけに、ついついたくさん買ってしまう人も多いのでは? 

 一見すると華やかではあるが、常に大きな樽を担いで階段状の観客席を上り下りしながら売り歩く。そんな体力勝負な一面もあるだけに、給料形態は気になるところ。そこで今回は、以前某野球場で売り子をしていた田中春香さん(仮名)に、ギャラのシステムから稼ぎを増やすコツなどについて、話を聞いてみた。 

 

 売り子たちがドリンクを販売できるのは試合中のみ。プロ野球の平均試合時間は、コールドや延長を除くと約3時間と言われているが、はたして1試合でいくら稼げるものなのだろうか。 

 

「私たちのギャラは主に日給と一杯売った時のインセンティブ、目標の杯数を売ったときの達成金の3つで構成されています。飲料メーカーに雇われているので、もちろんメーカーによって設定や金額は微妙に異なると思いますが、基本的に日給は低めでギャラのメインはインセンティブです。いっぱい売ればギャラが増えるし、売れなければギャラが増えない、というわかりやすいシステムだけに、やりがいはありますよ」 

 

 ギャラのメインがインセンティブということは売り子の技量次第で稼ぎは大きく変わってきそうだが……。それぞれの具体的な金額を聞いてみた。 

 

「私がやっていたところは日給が3,000円でインセンティブはビールが一杯33円、サワーだと20円。達成金は150杯売ったら500円、それ以降は20杯売るごとに500円もらえるという仕組みでした。私はサワーを担当することが多かったのですが、大体200杯売ると総額で1万円くらいになるイメージですね。基本の日給が3000円と聞くと安く感じるかもしれませんが、インセンティブの割合も多いですし、試合時間は3~4時間なので時給で考えたら悪くはないかなと思います」 

 

 

 一杯売ったときのインセンティブが高いだけに、売り子としては誰もがビールを担当したいと思うだろう。だが、必ずしもサワーよりビールの方が稼げるというワケではないそうだ。 

 

「野球場の売り子といったら、やっぱりビールが花形だし、一杯売ったときのインセンティブもサワーより高いので、みんなビールを担当したがります。でも、売れる杯数だけでいったらサワーの方が断然多いんですよね。ビールは最初の一杯だけと決めている人もいますし、そもそもの価格がビールよりもサワーの方が安いというのもあると思います。それと、基本的にビールの売り子の方が多いので、サワーはライバルが少ない。だから、あえて花形のビールを避けてサワーを売った方が結果的に稼げるなんてこともありますね」 

 

 田中さんが働いていたのは屋外の球場だったので、ドーム球場にはないツラさがいくつかあるという。なかでも一番困るのが、収入に直接影響がある天気の問題。仮に試合が雨天中止になった場合、収入の補償などはあるのだろうか。 

 

「天気が悪いと、単純に雨の中で売るのが大変というのもありますが、それ以上にギャラ的な面でツラくなります。雨で試合が中止になって一杯も売れなかった場合、基本の日当の6割しか支給されないんです。しかも、雨の日って天気の様子を見つつ試合開始が遅れることがあるじゃないですか。球場に来て待機させられた挙句、中止になったら1500円ちょい貰ってお終い。私は球場から少し遠いところに住んでいたので、最低の金額だと交通費で消えてしまいましたね」 

 

 たしかに、散々待たされて最終的に交通費程度しか貰えないとなったらダメージは大きいだろう。天候は努力でどうにかなるものではないだけに、なおさらツラいものがある。 

 

「そんなこともあって、東京ドームは倍率が高いって聞きました。天気に左右されないから収入的に安定するし、暑い寒いがないから肉体的にも働きやすい。真夏の屋外球場は、ナイターであってもメッチャ暑いですからね」 

 

 

 華やかそうに見えても、暑さや雨など気象状況によっては過酷になることもある。そんな肉体労働な一面もあるわけだが、さらにこの仕事ならではの危険な一面もあると田中さんは語る。 

 

「働いている時は常にお客さんを見ているので、試合はほとんど見ていません。なので、ファールボールが結構危ないんです。近くに飛んできたときは、お客さんが教えてくれたりもするんですが、グランドに背を向けているのでとっさに避けるのは難しいですから。過去にファールボールが当たってケガをして売り子を辞めちゃった子もいましたよ」 

 

 限られた時間内でいかに多く売るか、そして売れた杯数でギャラが大きく変わるの球場の売り子たち。ずばり、少しでも売上を増やすために重要となるポイントは何だろうか。 

 

「意外とリピーターさんも多いので、やっぱり笑顔とフレンドリー感が大事ですね。顔を覚えてもらって常連さんになってくれると、自分からも声をかけやすくなります。一杯売ったあと、飲み終えるくらいのタイミングで再び行って『おかわりどうですか?』って声をかけると、再び買ってくれることも多いんです。そういうお客さんを増やすことが一番重要だと思います」 

 

 最後に田中さんに「この仕事の魅力は?」と聞いてみたところ、「上手くいけば短時間でたくさん稼げるところもそうですが、やっぱりお客さんに『ありがとう』と言われて、楽しそうに野球を観戦しながら飲んでいるところを見ると嬉しくなりますね」と答えた。 

 

 野球場に行ったら、売り子ひとりひとりの営業スタイルに注目してみるのも面白いかもしれない。 

 

取材・文/日刊SPA!取材班 

 

日刊SPA! 

 

 

 
 

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