( 207441 )  2024/09/01 15:54:10  
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自民党の自由な総裁選挙に向けて、多くの候補者が立候補の意向を示しており、激しい戦いが予想されている。

麻生派の麻生太郎副総裁は、派閥の支持を一本化せず、河野太郎デジタル担当相を支持する姿勢を示している。

派閥の力が弱まる中、候補者の多様化や派閥の影響力低下により、総裁選の行方が不透明となっている。

麻生氏は自分の影響力を維持しつつ、他の候補にも保険をかける戦略をとっているようだ。

他にも上川氏や小泉氏、石破氏など各候補が躍起になっており、総裁選と同時に党内での権力争いも激しくなっている。

(要約)

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自民党麻生派の夏季研修会で講演する麻生太郎副総裁=2024年8月27日 

 

 9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選では、最多の12人が出馬の意向を示し、これまでにない激戦・混戦が予想される。事実上、派閥の縛りがなくなり、各自の判断で候補を選ぶことができる。そんななか注目されるのは、いまだ派閥を継続している麻生派の会長、麻生太郎副総裁の言動だ。河野太郎デジタル担当相を支持する構えだが、派閥全体で一本化はしない。自らの影響力を残すための“保険”を他候補にかけているようにもみえる。キングメーカーにとっても難しい総裁選。政治ジャーナリストの安積明子氏に聞いた。 

 

【写真】それぞれ方向性が違う麻生派の“実力者”たちはこちら 

 

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「こういう大会を開いて、一致結束弁当みたいに縛り上げるつもりは全くありませんし、河野太郎もそれを期待してるわけでもありませんし、ぜひ皆さん、そういった気持ちをもって、志を同じくしているような人たちが、気持ちを是非、なるべく一致させてくれることが出来るのであれば、これに勝ったものはない、そう思っております」 

 

 8月27日に横浜で行われた志公会(麻生派)の研修会。党内唯一の派閥の領袖である麻生太郎副総裁はこのように、次期総裁選への出馬を宣言した河野太郎デジタル相を支援することを表明した。同時に派閥として縛りをかけず、他の候補を応援することも容認した。 

 

■上川氏を「その気」にさせたのは麻生氏 

 

 12人が立候補の意向を示している総裁選だが、出馬するには国会議員20人の推薦人が必要だ。衆参両院合わせて367人の“有資格者”がいる自民党でも、それを集めるのはなかなか難しい。 

 

 たとえば総裁選出馬に意欲を示す上川陽子外相は8月28日、「支持と推薦の間にこんなに大きなギャップがあるということを、改めて実感している」と本音を吐露している。その3日前の25日には、「20人というものを超える支持をいただいているところだ」と自信をのぞかせたばかりだった。 

 

 その上川氏を「その気」にさせたのは、麻生氏だった。麻生氏が今年1月に福岡県内で行われた講演で「俺たちから見てもこのおばさん、やるね」と持ち上げたため、上川氏は一躍、総裁候補に躍り出た。 

 

 

 派閥の解体もこれを加速した。岸田文雄首相が今年1月に宏池会(岸田派)の解散を宣言し、清和研(安倍派)、志帥会(二階派)、近未来政治研究会(森山派)が続き、茂木敏充幹事長が率いる平成研(茂木派)も政治団体の届け出を取り下げて「政策集団」になっている。 

 

 こうして派閥による「制約」が解除される一方で、党内には特定の候補を持ち上げる力もなくなった。総裁選で勝利するためには過半数を獲得する必要があるが、候補乱立では1回目の投票での決着は極めて困難と見られている。しかも決選に残るには上位2位までに入らなければならないが、果たして誰が残れるのかはわからない。 

 

 このように見通しが不透明な中で、“キングメーカー”も喘いでいる。自分が推す候補を勝たせるという時代ではなくなり、勝てる候補に乗っからなければならない。だから麻生氏は河野氏を応援しながら、派閥に縛りをかけなかったのかもしれない。 

 

■派閥の票を「ばらす」 

 

 現在のところ、志公会では、甘利明前幹事長ら4人が小林鷹之・前経済安全保障担当相を支持しており、山東昭子前参院議長ら3人以上が上川氏を支持しているが、いずれも1回目の投票で勝ち残れるかどうかは微妙なところ。もっとも麻生氏が推す河野氏が確実に勝利する保障もないから、こうして派閥の票を「ばらして」いくつもりなのだろう。 

 

 麻生氏が「敵」とするのは、麻生氏とキングメーカーの座を争う菅義偉前首相と、2009年に“麻生降ろし”の急先鋒を担ったと言われる石破茂元幹事長だ。次期総裁選を「最後の挑戦」とする石破氏と、菅氏が支持する小泉進次郎元環境相は、「次期総裁」の世論調査で常に上位を占める。しかし石破氏は党内基盤が薄く、15年や21年の総裁選では出馬を見送った。 

 

 来年7月には参院選が予定され、10月までに衆院選が行われる。その顔を選ぶ次期総裁選は、なんといっても国民にアピールできる存在でなければならない。 

 

 

 そういう意味で43歳の小泉氏は、変化のイメージとしては最強だ。一方で党の役職や重要閣僚の経験のない小泉氏には、党内から不安視する声もある。 

 

 総裁選は1回目の投票は国会議員票367票と地方票367票の計734票で決せられる。いずれの候補も過半数を取らなければ、上位2人の候補が国会議員票367票と地方票47票の計414票で2回目の投票を争う。決選投票では国会議員の意向がより反映されるというところがミソだろう。 

 

 麻生派の54票は、まとまれば党内最大の組織票になるはずだ。果たしてその票は最終的にどこに向かうのか。まずは12日にふるいにかけられ、27日までに大方が決せられる。そしてその動向を、岸田首相や二階俊博元幹事長も注視する。自民党を支配するキングメーカーの座をめぐり、総裁選とは別のもうひとつの戦いは、すでに始まっているのかもしれない。 

 

(政治ジャーナリスト・安積明子) 

 

安積明子 

 

 

 
 

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