( 208216 )  2024/09/03 16:48:02  
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兵庫県知事が、県議会の百条委員会に出席して、職員へのパワーハラスメント疑惑について声明を述べました。

一見冷静な発言をしていましたが、微表情の分析からその発言と気持ちが一致していないことが分かりました。

知事は自身の合理性には正当性があり、反省の意をしっかり表明できない心理が推測されました。

会議中に見せた微表情には、自信や嫌悪感、幸福感などさまざまな感情が表れ、ネガティブな行為を弱く見せようとする心理が見られます。

(要約)

( 208218 )  2024/09/03 16:48:02  
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兵庫県議会の「文書問題調査特別委員会(第6回)」百条委員会に出席した斎藤元彦兵庫県知事(写真:東京スポーツ/アフロ) 

 

 8月30日、兵庫県の斎藤元彦知事が、県議会の百条委員会に出席して、職員へのパワーハラスメント疑惑について意見を述べました。 

 

 「記憶にない」「気分を害したならお詫びしたい」「反省している」 

 

 こうした発言を淡々と述べていたかのように見えた知事ですが、「微表情(※)」を分析すると、さまざまな感情の起伏が生じ、言葉と気持ちが一致していない様子がわかります。 

 

 (※抑制された「真の感情」がフラッシュのように一瞬で顔に表れて消え去る表情のこと。その多くは0.2秒以内の出来事で、通常の会話では80~90%が見落とされてしまう) 

 

 知事の見解の核は、明示的な発言からは、パワハラは認めない、職員からのパワハラ疑惑の声が上げられていることでも、記憶にないことがある。そして、「気分を害したならお詫びしたい」。こうした気持ちにとどまることがわかります。 

 

 微表情を含む非言語情報からは、自身の合理性には正当性があり、反省の意を心から表明することはできない。こうした心理が推測されます。知事の微表情と発言内容の重なりやズレに注目し、その心理を推測したいと思います。 

 

■自身の合理性が理解されないことに対する感情 

 

 委員会冒頭、自動車進入禁止の場所を約20メートル歩かされ、出迎えた職員を怒鳴った疑惑について。 

 

 知事は「歩かされたことではなく、動線が確保されていなかったことに怒った」「自身の指導には合理性があった」との見解を述べ、唇を強く結ぶ感情抑制・怒りの表情を見せます。自身の考える合理性にかなわない対応やそれが理解されないことにいら立ちを感じたのではないかと推測されます。 

 

 同様の表情を、知事は委員会中の随所で多数見せます。例えば、前県民局長の処分の是非、さまざまな取り組みに対する説明不足など、質問者との間で見解の違いがみられる場面です。よく言えば、自分の考えに自信がある、悪く言えば、自分の合理性に合わない見解は排除したい、そんな心理が推測されます。 

 

 一方、こうした自信を見せつつも、知事は、自動車進入禁止とは知らず、「そう知らされた記憶はない」と発言しつつ、額をこわばらせる恐怖の微表情を見せます。「知らされていたかもしれない」という自身の落ち度、あるいは、それを指摘されることに恐怖した可能性が考えられます。 

 

 

■嫌悪微表情と反省という言葉の矛盾 

 

 次に、関係職員に対し、チャットで夜間、休日に指示をするという疑惑についてです。知事は「重要政策含め、共有してほしいという思いが強かった」と見解を述べます。 

 

 しかし、質問者に資料をもとに、「重要性や緊急性がないと考えられる問題でも対応を求めているのではないか」と指摘されたところ、知事は、鼻にしわを寄せる嫌悪の微表情を見せ、「やりすぎた面はあったのではないかと思っています。反省しています」と述べます。 

 

 嫌悪微表情は抑制された感情の漏洩であり、反省という言葉と一致する形で生じていません。矛盾の指摘に嫌悪したものと考えられ、反省の度合いに疑問符が付きます。 

 

 同様の心理が、百条委員会終盤でも垣間見られます。質問者が、「今までの答弁聞いて、さまざまな発言がありましたけれども、大声での叱責、物を投げる、いろいろな理由があって斎藤知事は『私の認識としては』とおっしゃいます。大筋で事実であったとしても、パワハラと認めない。 

 

 ところが、『パワハラを知っている』『パワハラを聞いた』とアンケートで答えた職員は、38.3%、1750人から寄せられているということです」と指摘すると、知事は嫌悪の微表情を見せます。「真摯に受け止め、反省して、行動の襟を正していこうと思います」という旨を述べますが、実際に反省の表情は見えません。 

 

 自身の行為と部下への指導の矛盾をつかれる場面で、知事は、幸福の微表情を見せます。「送迎の際に、ご自身が遅れてくることはありますか」という質問に、「はい、あの、そういうこともあります」と知事は感情を抑制した表情で答えます。 

 

 すかさず質問者は、「ご自身が遅刻して来る。でも部下には主張する。これなかなか成立しないんじゃないかと思うんです。この点についてどうお考えですか」と尋ねます。 

 

 このとき知事は、なぜか幸福の微表情を見せ、即座に口角を引き下げ、真顔になろうとします。 

 

 「あの、いつもいつも遅れるわけではなく、遅れることもある」とやや口角が引き上がるのを押さえながら、「ご指摘はごもっともだと思います」と答えます。 

 

■幸福の微表情を見せた知事の心理とは?  

 

 

 質問者は追及の手を緩めず、「基本的に知事は遅れて来るものだと認識している」と述べます。知事は、頻繁な遅刻を自覚しているからこそ、弁明に無理が生じ得たと感じ、苦笑したのではないかと考えられます。 

 

 この後もやり取りが続くのですが、質問者は、結びに「ご自身は遅刻することがある、でも部下には指導する。これ矛盾してますから、まず部下に指導するのであれば、ご自身は時間をしっかり守っていただきたいということを申し上げます」という提言をします。 

 

 この提言に、知事は嫌悪の微表情で反応します。提言に納得していないようです。「遅刻には知事なりの理由がある」ということかもしれません。 

 

 ほかにも、付箋を投げたという証言に「1枚を折りたたんで放り投げた」と答え、叱責しながら机を叩いたことを机を「ポコッと叩いてしまった」と答え、嫌悪の微表情を見せます。 

 

 怒りという強い感情エネルギーがあった場面で、「ポコッと叩く」という描写は、矛盾を感じます。自己のネガティブな行為を弱く見せようとする心理がうかがえます。 

 

 知事の見解の正当性について、ここで判断することはさしひかえますが、微表情を分析すると、知事は自身の行為におおむね正当性があると考えているものと推測されます。 

 

清水 建二 :株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役 

 

 

 
 

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