( 208621 )  2024/09/04 18:15:34  
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スポーツ産業は世界で急速に成長しており、2023年には約73兆円の市場規模に達する見込み。

ただし、日本のスポーツ産業は成長の波に乗り遅れており、特にJリーグが英プレミアリーグに劣っていることが指摘されている。

その背景には日本のスポーツ全体を覆う「経営意識」の希薄さがあるとし、スタジアムやクラブの赤字体質や収益源の確立が課題とされている。

一方、バスケットボールではBリーグの設立が競争力向上の要因となり、日本代表の成績も向上している。

日本のスポーツ産業ではリーグや競技団体の経営力強化や他産業との連携による変革が進んでおり、企業の参入も増えている。

(要約)

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写真=Press Association/アフロ 

 

 あまり知られていないが、スポーツは世界屈指の巨大成長産業だ。欧米系調査会社のビジネス・リサーチ・カンパニーによれば、2023年の世界のスポーツ産業市場規模は4849億ドル(約73兆円)で、5000億ドル前後とされる半導体やスマートフォン、再生可能エネルギーに匹敵する。今後10年間で1.8倍の8626億ドル(約129兆円)に成長する見込みだ。 

 

【関連画像】世界のスポーツ産業の市場規模予測 

 

 インターネット配信の普及でスポーツを視聴する人が増加。「スポーツツーリズム」も広まり、周辺産業を巻き込んで成長している。パリオリンピックの観戦チケットは1000万枚のうち950万枚超が売れ、過去最多となった。 

 

●Jリーグ、英プレミアの背中遠く 

 

 だが、「日本は成長の波に乗り遅れた」と多くのスポーツビジネス関係者が悔しさをあらわにする。国内市場規模は、10年ほど停滞したままだ。特に引き合いに出されるのが、1991年設立の「Jリーグ」だ。 

 

 2023年度のJリーグ所属クラブ合計の売上高は過去最高の1517億円を記録している。だが、ほぼ同時期の1992年に設立された英国の「プレミアリーグ」と比べるとかすむ。90年代、両リーグの売上高はほぼ同等だったが、2022~23年シーズンのプレミアリーグの売上高は60億5800万ポンド(約1兆1500億円)。7倍以上の差を付けられた。 

 

 1985年、英リバプールFCのサポーターによる暴動で39人が死亡する「ヘイゼルの悲劇」が起きた。イングランドのクラブチームは5年間、欧州での国際大会から締め出される。抜本的改革を迫られた英国サッカー界はプレミアリーグを創設。国際試合が解禁されると、近隣の欧州諸国との選手交流が活発化し、英国は再び競争力を取り戻す。デビッド・ベッカム選手のようなスターも登場した。 

 

 日本との格差が大きく開いた理由はいくつも挙げられる。地理的・文化的背景が大きく異なり、単純比較は難しい。それでもスポーツ関係者らが嘆くのは、自力で克服できたはずの大きな要因が国内にあるからだ。日本のスポーツ全体を覆う「経営意識」の希薄さだ。 

 

 EYストラテジー・アンド・コンサルティングの岡田明パートナーは「スポーツをコンテンツとして捉えず体育の一環として扱ってきた。産業として育てるビジョンを描けていなかった」と分析する。 

 

 自治体主導で整備したスタジアムや体育館は、赤字体質が当たり前。クラブの多くは赤字が出てもオーナー企業の補塡に頼る。 

 

 そうしている間に、海外では様々なスポーツリーグが自立的で多様な収入源を確立している。プレミアリーグ飛躍のきっかけも、無料の地上波から有料放送にシフトし、巨額の放映権料を得るようになったことだった。 

 

 そんな日本のスポーツ産業で、ようやく反攻が始まろうとしている。リーグや競技団体などの経営力強化やスタジアムの収益性改革、他産業との融合による新市場の創出などが全国で進み、多くの企業がオーナーやスポンサーとして参入し始めている。 

 

 変化の象徴がバスケットボールだ。男子バスケ日本代表は、約50年ぶりに自力でパリオリンピックに出場。銀メダルのフランスを、あと一歩まで追い詰めた。競争力向上の要因には、2016年に創設された「Bリーグ」がある。23~24シーズンの入場者数は約452万人に上り、各地で満員御礼が相次ぐ。 

 

 一体何が起きているのか。第2回は「稼ぐ力」を追求した改革に迫る。 

 

(次回に続く) 

 

齋藤 英香、朝香 湧 

 

 

 
 

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