( 208911 )  2024/09/05 16:26:35  
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ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、PlayStation5の価格を7万9980円に上げると発表した。

これは製造コストの高騰や円高の影響によるもので、PlayStation5は製品自体が赤字だという。

ゲーム機の単体では利益を上げられず、PlayStationを広めてソフトの売り上げを増やすことで利益を得ている。

しかし、PlayStation5の販売台数が伸び悩む中、営業利益にプラス効果をもたらすために値上げを行った。

一方、任天堂はNintendo Switchの後継機を発売する予定で、ゲーム機市場で大きな影響を与える可能性がある。

円高や競合他社の台頭など、ソニーが今後どのように事態に対処するかが注目されている。

(要約)

( 208913 )  2024/09/05 16:26:35  
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PS5衝撃の価格改定の裏には… 

 

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、9月2日から日本国内におけるPlayStation5の値上げに踏み切った。希望小売価格6万6980円だったものが、7万9980円となったのだ。2020年11月の発売当初の価格は5万4978円。4年ほどで2万5000円近く上昇したことになる。大幅な価格改定に踏み切った背景に、3つの要因が複合的に絡み合う姿が浮かび上がる。 

 

【図表】PlayStation4と5の販売台数 

 

今回の値上げに関して、ソニーは部材や製造、物流コストの高騰など経済情勢の変動を鑑みて決断したと説明している。これはその通りで、実はPlayStation5は製品単体では赤字なのだ。 

 

ソニーは2023年度の決算発表において、2024年度のゲーム&ネットワークサービス分野の見通しを示す際、「販売台数減少によるハードウェアの損失縮小」で営業利益にプラス効果が働くと説明していた。 

 

販売台数というのは、もちろん主力ゲーム機PlayStation5が大部分を占める。 

 

PlayStationはソフトで利益を獲得するビジネスモデルだ。グループ内で開発したソフトを販売するものはもちろん、PlayStation Storeで扱う他社製品には手数料として30%を徴収する仕組みが設けられている。 

 

つまり、ゲーム機単体で赤字だったとしても、PlayStationを世に広めてソフトの流通数が増えれば、儲かるという仕組みなのだが肝心のゲーム機本体の販売台数が伸び悩んでいる。 

 

2024年3月期のPlayStation5の販売台数は2080万台。PlayStation4が発売から3年目を迎えた年の年間販売台数を上回った。しかし、PlayStation5は半導体不足で流通量が滞った時期がある。販売から3年経過した年度の累計販売台数で比較をすると、4が6000万台、5が5920万台だ。 

 

今期は前期よりも1割以上少ない1800万台を計画しているが、すでにピークを過ぎてしまった感は否めない。 

 

しかも、2024年4-6月の販売台数は240万台で、今季の計画に対する進捗率はわずか13%。販売台数計画の下方修正も視野に入る数字だ。 

 

なお、2024年3月期は2500万台を計画していた。2023年4-6月の販売台数は330万台で、同じく進捗率は13%。この期の販売実績が予想を大幅に下回る2080万台だったのは見てきた通りだ。 

 

 

円高の悪夢も牙をむく。 

 

ソニーのゲーム&ネットワークサービス分野は、2024年3月期の営業利益が前期比16%増の2902億円だった。402億円の増益だったことになるが、そのうちの386億円(96%)が為替の影響によるものなのだ。 

 

日本銀行は7月31日の金融政策決定会合で0.25%政策金利を引き上げた。8月5日には一時1ドル141円まで円高が進行している。 

 

ソニーは8月7日の2025年3月期第1四半期決算発表において、急速な円高について言及しており、その一部を引用する。 

 

“8⽉以降にドル円が 10 円円⾼に振れ、ユーロ円もこれと同様に動いたと想定すると、為替感応度としては連結ベースで 700 から 800 億円損益が悪化することになるが、為替変動前に⼀部為替予約もしており、製品の価格調整やコストの⾒直しも実施するので、この感応度分析の数字が業績に直接的に影響するとは考えていない。” 

 

円高がPlayStationの価格改定につながっているのは明らかだ。 

 

ソニーはゲーム&ネットワークサービス分野の今期の営業利益を前期比7%増の3100億円と、増益予想を出している。円安による差益に期待ができないとなれば、値上げをする以外に手が打てなかったということだろう。 

 

急速な円高による営業利益へのマイナス効果が抑えられるというのはその通りかもしれないが、増益効果が働かないという点は見逃せない。下半期からの値上げで、今期1割近い営業増益を達成できるのかは注目のポイントとなるだろう。 

 

為替に関連する別角度のもう一つの問題点として、訪日外国人によるゲーム機の持ち帰りがあった。PlayStation5はアメリカだとおよそ500ドルで販売されている。1ドル145円換算で7万2500円だ。値上げ前の日本価格は6万6980円。インバウンド需要が盛り上がると、ソニーは結果的に損をするということにもなりかねない。 

 

ドル目線だと、今回の値上げは適正価格に戻ったといえそうだ。 

 

 

最大のライバルである、任天堂も脅威の一つだ。任天堂はすでにNintendo Switchの後継機を2025年3月期中に発売すると正式に発表している。 

 

古川俊太郎社長は6月27日の定時株主総会において、後継機が現時点において、部材の不足等によって生産に大きな影響を与えるとは考えていないと明言している。コロナ禍の半導体不足でゲーム機の流通が滞り、転売も横行することでゲーム機の市場価格が高騰。消費者にゲーム機が行き渡らなくなるという負のループが形成されたが、現在の任天堂はその課題を克服する術を磨いているようだ。 

 

市場に大量供給できる体制をすでに築いているのだろう、後継機の爆発的なヒットを予感させるものだ。 

 

Nintendo Switchは、今期中に累計出荷数が1億5000万台を超える見通しのモンスター級のゲーム機で、後継機が来年に発売されるとなれば、さらにPlayStationが苦しい立場になることも十分にありえる。 

 

言うまでもなく、Nintendo Switch販売後の任天堂は乗りに乗っている。鉄板ともいえるマリオシリーズやポケットモンスターに加え、スプラトゥーン、ゼルダの伝説、ピクミンを大ヒットIPに育て上げたのだ。 

 

PlayStationにおいては、看板タイトルの一つであるスクウェア・エニックスのファイナルファンタジーシリーズ最新作「FF16」の販売が弱含んでいるが、スクウェア・エニックスはPlayStation以外のプラットフォームでもゲームを開発する方針を発表している。ソニーがこの逆風をどう乗り越えるのか注目だ。 

 

取材・文/不破聡 写真/Shutterstock 

 

不破聡 

 

 

 
 

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