( 209741 )  2024/09/08 14:33:36  
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河野太郎氏は自民党総裁選に出馬し、「年末調整廃止」「全国民が確定申告」する案を打ち出しているが、批判を受けている。

自民党の信用が失墜しており、SNSでは税金の問題や税務署の業務負担などに対する厳しい意見が多い。

河野氏は全国民に確定申告をさせる理由として、デジタルセーフティネットの構築を挙げているが、識者やSNS上では様々な懸念が示されている。

確定申告には税務署や国民の負担がかかることから、一部では確定申告のボイコットも懸念されている。

全国民に確定申告を求める前に、まずは政治家や自民党の議員がきちんと納税をしていることが求められている。

(要約)

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「年末調整廃止」を打ち出し批判を浴びている河野太郎氏 

 

 自民党総裁選に出馬表明した河野太郎デジタル相(61)が打ち出した「年末調整廃止」「全国民が確定申告」という私案に批判が相次いでいる。そもそも、裏金問題で信用が失墜している自民党に対して、SNSでは「その前に自民党がちゃんと税金払え」など厳しい批判が飛び交っている。また、税務署の業務がパンクするのではという懸念も根強い。識者は「確定申告のボイコットが起きかねない」と危惧する。 

 

【写真】「確定申告ボイコット」を引き起こした高級官僚はこちら 

 

*  *  * 

 

 河野氏は自民党総裁選に向けた公約で、「年末調整の廃止」「すべての国民が確定申告する仕組み」を整備すると打ち出した。実現すれば、企業がこれまで担っていた年末調整は個人が行うことになり、雑所得などを計算したうえでおのおのが税務署へ確定申告をすることになる。 

 

 全国民に確定申告させる理由について、3日に河野氏が投稿したXでは「真に支援を必要としている人を正確に把握し、迅速に支援に繋げるためのデジタルセーフティネットをつくります」と記し、「所得情報を迅速に把握できるので、必要な人にピンポイントでプッシュ型支援を行うことができるとともに、その年の収入に応じて住民税などを決めることができます。前年より収入が大きく減ったために負担できなくなるようなこともなくなります」と述べている。 

 

 だがSNS上では、「確定申告時の税務署の実態を知らないのか」「その前に自民党がちゃんと税金払えよ」などの声が続出している。 

 

 経済ジャーナリストの荻原博子氏もこう指摘する。 

 

「年末調整を会社(雇用主)が行っているのは、作業をすべて税務署に任せれば手間が大きくなりすぎるため、会社が担うべきだという前提があるからです。ただでさえ確定申告時の税務署は激務で疲弊しているのに、このまま全国民に確定申告をさせたら、税務署は破綻してしまいますよ。河野さんは、ボタンをポチッとするだけで確定申告が終わると勘違いしているのでは」 

 

 年末調整とは1947年に始まった制度で、当時、人材不足などを理由に税務署の処理能力が不足していたことから、国が雇用主に徴税業務を義務付けさせたものだ。国が「年末調整業務を税務署が行うことは負担」と認めた背景がある。 

 

 税務署だけでなく、確定申告をする側の国民の負担も小さくない。荻原氏はこう話す。 

 

「申告する納税者も日々の仕事で忙しいのに、領収書をまとめたり、消費税を計算したりと大きな手間がかかります。このままでは確定申告のボイコットが起きかねません」 

 

 

■まずは自民党議員が「納税」すべし 

 

 実際、過去には確定申告のボイコット運動が起こったことがある。 

 

 2018年2月。学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題で、佐川宣寿国税庁長官(当時)が公文書改ざんや破棄を指示した疑いがあることから、「国民なめんな」「納税者一揆」などのプラカードを掲げた市民が1000人以上集まり、国税庁が入る霞ケ関でデモが行われた。 

 

「政治家や官僚が都合の悪い書類を捨てているのに、私たちにはすべての領収書を取っておいて納税しろというのか」――当時は国民の怨嗟の声が相次いだ。 

 

 今回、国民には同じような不満が蔓延しており、河野氏の年末調整廃止論をめぐっては、SNSなどで「自民党の議員がまずは正確に確定申告をして、税金を納税すべきだ」という声も根強い。 

 

 自民党の裏金事件をめぐっては、河野氏が所属する麻生派でも、元秘書が東京地検に「裏の口座があり、そこに裏金をためていた」という旨の供述をしていたことが、毎日新聞の報道で明らかになっている。多くの議員が裏金をつくっていた自民党が、手間のかかる納税作業を国民に強いるとなれば、反発が出るのは当然だろう。 

 

 そもそも、国会議員は歳費(給料)とは別に調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)が毎月100万円支給されており、議員の「第2の財布」とも呼ばれる。自民党の裏金問題が表面化したことで、国会では見直しの議論も出たが、自民党は法改正を見送った経緯がある。 

 

「国会議員に毎月100万円支給される調査研究広報滞在費は、使途公開の義務がないため領収書は不要で、使わずに残ったとしても返金の義務もありません。いまだに現金支給されているので、外からチェックもできない。私たちに領収書を保存させて税金計算をさせる前に、まずはここのデジタル化を進めるべきではないでしょうか」(荻原氏) 

 

 自分たちは「領収書なし」で月100万円もの経費を使える権限を持ちながら、国民には1円単位で領収書提出を求め確定申告を義務付ける……国民が納得できるはずもないだろう。荻原氏は言う。 

 

「河野さんは裏金問題を起こした自民党議員に対して強く責任を迫る発言をしていません。まずは身の回りから襟を正すべきです。総裁選に立候補するのなら、国民が置かれている現状をもっと正確にくみ取るべきです」 

 

 河野氏には、こうした国民の声を「ブロック」しないで聞いてもらいたいものだ。 

 

(AERA dot.編集部・板垣聡旨) 

 

板垣聡旨 

 

 

 
 

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