( 209866 )  2024/09/08 16:53:23  
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日本銀行の利上げにより、金融機関は住宅ローンの変動金利を引き上げる可能性が高まっています。

現在低金利が続いているため、固定金利の選択を考える人もいますが、専門家の一部は変動金利のままが良いと考えています。

長期金利と短期金利には日銀の政策が影響しており、既存の変動金利型の住宅ローンにも影響が及ぶ可能性があるため、金利上昇に対する適切な対応が求められています。

金利上昇局面は短期的なものであり、借り換えるタイミングには慎重に検討する必要があります。

(要約)

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日銀の追加利上げを受けて、金融機関は住宅ローンの変動金利の引き上げに動く公算が大きい 

 

 家を購入した世帯の多くが利用する住宅ローン。日本銀行の追加利上げによる影響は必至だが、専門家はそれでも変動金利のままがいいという。経験則から導いたその理由とは。 

 

【写真】1%引き上げなら借り換えは早計 

 

 日銀は3月に開催した金融政策決定会合で「マイナス金利政策」を解除し、17年ぶりに利上げを実施した。さらに7月末には、それまで続けてきた長期国債の買い入れを減額するとともに、短期金利の誘導目標を0~0.1%程度から0.25%程度に引き上げることを決めた。 

 

■利上げはローン金利に影響 

 

 住宅ローン金利の行方について探る前に、まずは住宅ローンに関する必要最低限の基礎知識をきちんと身につけておく必要があるだろう。そもそも住宅ローンは、(1)全期間固定金利型、(2)固定金利期間選択型、(3)変動金利型に分類される。 

 

 (1)は、当初に定められた金利が完済までずっと適用され、(2)は、一定期間は当初に定めた金利を適用し、以後はその時点における金利水準に基づいた変動金利型に移行するか、再び固定金利期間を設定するかを選択する仕組みだ。残る(3)は、一定期間ごとに折々の情勢を踏まえて適用金利が見直される。 

 

 今が低金利で将来的に上昇する可能性が高いなら、ローンを借りる側は(1)を選びたくなるが、逆に銀行側からすれば、そのような局面で(1)で借りられるのは不都合だ。そこで、同じ時期に設定された各タイプの適用金利を比較すると、一般的には(3)が最も低く、(1)が最も高くなっている。足元まで国内では長く低金利が続いてきたため、住宅ローンにおける人気の中心は(1)だった。 

 

 続いて知っておくべきは適用金利の決まり方で、固定金利型の場合は長期金利(10年物国債の利回り)の水準を参考にしている。10年物国債は日々市場で取引されて利回りが変動しており、その推移には日銀の金融政策が大きな影響を及ぼしている。長期国債買い入れの減額は長期金利の上昇要因となりうるが、それよりも大きな影響を及ぼすのが実は短期金利の情勢である。 

 

 一方で変動金利型の適用金利は、短期プライムレート(銀行が最優良企業への1年以内の貸し出しに提示する最優遇金利)を基準に決定している。この短期プライムレートは、日銀の政策金利(短期金利の誘導目標)に連動するようになっている。つまり、固定金利型と変動金利型のどちらに対しても、今回の日銀追加利上げは影響を及ぼす可能性があるということだ。 

 

 

 現にメガバンク3行(三菱UFJ、三井住友、みずほ)、りそな銀行、三井住友信託銀行は、日銀の政策を踏まえて短期プライムレートを9月から引き上げる。その影響で、変動金利型の適用金利は10月以降に引き上げられる公算が大きい。逆に足元で長期金利は低下傾向を示してきたことから、先の5行は9月から固定金利期間選択型(固定金利期間10年)の適用金利を引き下げることを8月30日に発表した。 

 

■1%の上昇で借り換えは早計 

 

 すでに変動金利型でローンを組んでいる人は、金利の引き上げに戦々恐々となっているかもしれない。今のうちに固定金利型へ借り換えたほうが無難かもしれないと考えている人もいることだろう。 

 

 だが、バブル期の頃から金利の推移をリアルタイムで観測してきたファイナンシャルプランナーの深野康彦さんはこうアドバイスする。 

 

「9月には変動型の適用金利が見直されるでしょうし、日銀の審議委員の中にはさらなる追加利上げを実施すべきだと唱える人もいます。とはいえ、たとえ現在の適用金利よりも1%引き上げられたとしても、変動金利型から固定金利型への借り換えは無用でしょう。これから新たにローンを組む人の場合も、変動金利型を選んだほうが賢明かと思います。実は、金利の上昇局面は意外と短いというのが経験則で、バブル期でさえ1年半程度に留まっています。金利が上昇期を迎えても、35年間の返済期間を見渡せば一時的な現象にすぎず、均してみれば全期間固定型よりも低いか、もしくは同等程度の金利になるでしょう」 

 

 ただし、適用金利が引き上げられると総返済額が増えてしまうのも確かだ。それでも変動金利型の増額分が全期間固定型のそれを上回ることはまず考えがたいが、借りている側にとってはネガティブな話であることに変わりはない。 

 

 深野さんはこうアドバイスする。 

 

「3千万円を借りていて金利が1%上がれば、単純計算した年間の利息負担増加分は30万円で、月々では2万5千円。その分だけ元金の減りが遅くなってしまいますが、だからといって全期間固定型や固定金利期間選択型への借り換えを行うのは早計でしょう。利息負担の増加はもったいないと感じるなら、ボーナスなどのまとまった資金を繰り上げ返済に充てて、元金を減らすのが効果的です」 

 

大西洋平 

 

 

 
 

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