( 210393 ) 2024/09/10 15:15:12 0 00 総裁選で「台風の目」となるか
自民党総裁選は9月12日に告示され、27日に投開票される。9月6日までに正式な出馬表明を行ったのは五十音順に石破茂(67)、小泉進次郎(43)、河野太郎(61)、小林鷹之(49)、林芳正(63)、茂木敏充(68)の6氏。そして高市早苗氏(63)は9日に出馬会見を行った。これをネット上では“真打ち登場”と受け止める声もあるようだ。
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確かに高市氏は“台風の目”となる可能性がある。日本テレビは9月3日と4日、自民党の党員と党友を対象に電話調査を行った。総裁選の立候補者のうち誰を支持するかを訊いたところ、次のような回答になったという。
【1】石破茂氏(28%) 【2】小泉進次郎氏(18%) 【3】高市早苗氏(17%)
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が8月24日と25日に行った世論調査でも、「次の総裁には誰がふさわしいか」という質問のうち、自民支持層の回答だけを抽出すると、次のような回答になった。
【1】小泉進次郎氏(29・4%) 【2】石破茂氏(23・0%) 【3】高市早苗氏(15・3%)
担当記者は「一部の民放キー局は今のところ高市さんを泡沫候補のように扱っていますが、ネットと世論調査では存在感を示していることが分かります」と言う。
「特に自民党の“岩盤支持層”と、ネット上の保守層が熱烈な支持を表明しています。Xで高市さんの名前を入力して検索してみると、支持者の熱心な投稿に圧倒されます。一方、ネット上で小泉さんの評価は低いのですが、そんな小泉さんと高市さんが世論調査で上位に顔を出すというのは非常に興味深いものがあります」
それではXに寄せられた投稿の中から、熱烈な高市氏の支持者と思われるユーザーのポストを見てみよう。
《移民政策を見直さないとダメです 次の選挙で高市早苗でないと終わります》
《是非高市さんの公演(註:原文ママ)見てほしい。 国を守る強い日本にしていくという信念を持っている》
《高市早苗の出番だ日本のサッチャーだ》
《高市早苗さんを総裁選で選び中国の土地買収、太陽光パネルの拡大を止めないと日本は酷いことになると思う》
高市氏は7月以降、『日本の経済安全保障 国家国民を守る黄金律』(飛鳥新社)、『国力研究 日本列島を、強く豊かに。』(産経新聞出版)、『日本を守る 強く豊かに』(ワック 註:9月15日刊行予定)と立て続けに3冊の著作を上梓した。タイトルと出版社を見れば、やはり保守層を強く意識していることが分かる。
デイリー新潮は9月5日、「永田町で急浮上する『決選投票は進次郎vs高市早苗』の声 党内に出回る“極秘データ”の中身と『麻生太郎』のたくらみ」との記事を配信した。
これまでに世論調査で石破、小泉、高市の3氏の人気が高いことが明らかになっているが、中でも小泉氏と高市氏を「本命視」する空気が濃くなり始めている、と報じた。
詳しくは記事をお読みいただきたいが、文中から政治部記者のコメントをご紹介しよう。
《高市氏は保守票の最大の受け皿になると見られています。ネット人気がズバ抜けている高市氏については、閣僚としての仕事ぶりに対する党内での評価も高く、“進次郎に乗れない”議員にとって有力な候補の一人に躍り出ようとしている。さらに麻生太郎・副総裁の動向次第では、『高市こそが進次郎の対抗馬になり得る』との声も囁かれ始めています》
Xだけでなくネットメディアのコメント欄を見ても、ネット上で高市氏が抜群の人気を誇っていることが分かる。決選投票に進んでも全く不思議はないのだが、“リアル”な政治の現場では高市氏に対する“逆風”も吹いているという。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「2022年に安倍晋三さんが銃撃されて亡くなりました。高市さんは保守派の政治家として『安倍さんの遺志を継ぐ』ことを全面に打ち出し、一部有権者の熱烈な支持を受けてきました」と言う。
「一つ気になるのは、高市さんを支援する国会議員と党員が減っているのではないかという点です。2021年9月の総裁選で高市さんは議員票114、党員票74を獲得しました。ところが今回の総裁選では、20人の推薦人を集めるのに少し苦労した節が見受けられます。安倍さんの強力なバックアップがあって高市さんは存在感を発揮してきましたが、今回の総裁選は高市さんお一人でどこまでやれるのか、これが注目のポイントでしょう」
具体的に逆風の内容を見てみよう。高市氏が今後、総裁選で直面する逆風は大きく3つあるという。
「1つ目は、自民党が総裁選を大々的に宣伝している理由と直結しています。自民党は裏金事件で現在でも国民の強い批判を浴びていますが、それでも抜本的な改革は行わないようです。しかし、それでは選挙に負けるため、新総裁=新首相を誕生させて有権者の短期的な支持を得ようと考えています。そのために新総裁は有権者から広範な支持を得られる“八方美人”タイプだと都合がいいわけです。高市さんを熱心に支援する自民党員の“岩盤層”は15%から20%というところでしょう。そして彼女にはアンチの有権者も多いという弱点があります。彼女が新首相として総選挙を戦うとどうなるか、という点は自民党の国会議員も党員も熟考するはずです」(同・伊藤氏)
身も蓋もない言い方をすれば、次の総裁は“客寄せパンダ”だと自民党にとっては最高なのだろう。保守派の論客として知られる高市氏は果たして“パンダ”になれるのだろうか、という問題だ。
「2つ目は、安倍さんが首相だった時と社会情勢が大きく変わったことです。2012年12月に自民党は政権を奪取し、安倍さんが首相に就任しました。看板政策の『アベノミクス』は株価を上昇させ、好景気への期待が高まりました。しかしデフレ基調の経済を上向きにさせることは失敗し、国民は今と同じように低収入に苦しんでいましたが、物価だけは比較的、安かった。一方、現在はインフレが進行しており、実質賃金は減少の一途です。安倍さん流の安全保障や外交といった政策は、それ自体は重要であっても、党員や有権者は『そんなことより物価や景気を何とかしてくれ』が本音でしょう。高市さんが得意とする政策課題に関心が集まらない可能性があるのです」(同・伊藤氏)
生活が苦しいという国民の不満を反映し、一部の立候補者は経済政策の公約を強くアピールしている。例えば自民党幹事長の茂木敏充氏は総裁選出馬を表明した4日の記者会見で防衛力強化の財源とする増税と、少子化対策に充てる公的医療保険料への上乗せをやめると明言した。国民負担を軽減させるためだ。
「私は興味深い動きだと思っているのですが、小泉さん、高市さん、石破さんの3人より知名度が劣る候補者が政策論争を挑んでいます。内容も国民の不満を反映し、国民の所得を増やそうとする政策が目立ちます。政策で世論の関心を惹こうとするのは面白いですが、高市さんに吹く逆風の三つ目として、公開討論会の問題を挙げたいと思います」(同・伊藤氏)
論客の高市氏は討論会で存在感を発揮したいと考えているに違いない。ところが逆風となるのが候補者の数だ。
「これだけ候補者が多いと“各自5分間”の発言で終わってしまう可能性があります。そうなると高市さんが他の候補者に論争を挑むという場面が生まれないかもしれません。どの候補者も討論会でポイントを稼げなかったとなると、都知事選が似た動きになりましたが、結局は候補者のイメージ勝負となってしまいます。これは高市さんの望む展開ではないはずです」(同・伊藤氏)
かつて高市氏は松下政経塾に入塾し、渡米して下院議員の事務所で勤務したことがある。1989年に帰国すると、自民党はリクルート事件に端を発する政治改革論争で激震が続いていた。
高市氏の経歴に目を付けた自民党が「アメリカで政治資金はどうなっているのか」の解説を依頼したところ「予想に反して、高市さんは全く専門的な知識がありませんでした」(自民党関係者)との証言もある。
それから約35年が経過し、高市氏が政治家として存在感や知名度を高めてきたことは事実だ。「初の女性首相」という観点で取り上げられることも増えてきた。彼女は今回の総裁選で文字通りの正念場を迎える。“高市旋風”を巻き起こして決選投票に残るのか、はたまた再び敗北してしまうのか──。
デイリー新潮編集部
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