( 210606 )  2024/09/11 01:01:22  
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兵庫県知事の斎藤元彦は、維新からの辞職勧告を受けたが応じず、県議会で辞職を求める動きがある。

斎藤知事は幾つかの疑惑に関して刑事事件に至る可能性がある。

特に、金融機関からの補助金を使い、阪神・オリックスの優勝パレードに寄付金をキックバックさせたという疑惑が高い事件性がある。

斎藤知事と前副知事による背任行為の疑惑で、特捜部に刑事告発状が出されている。

金融機関も補助金と寄付をセットにして求められたとし、斎藤知事が背任罪の共犯として問われる可能性がある。

これに関して、内部告発によって真相解明が求められている。

(要約)

( 210608 )  2024/09/11 01:01:22  
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維新の辞職勧告にも辞職しない意向を示した斎藤元彦知事 

 

 兵庫県の斎藤元彦知事は9月9日、2021年の知事選で推薦を受けた日本維新の会の共同代表・吉村洋文大阪知事から辞職勧告を受けたが、応じなかった。県議会は全会一致で辞職を求める動きを見せている。後がなくなってきた斎藤知事だが、たとえ知事を辞職したとしても、それで終わりではない。いくつかの疑惑については、刑事事件に発展する可能性が残っている。 

 

【写真】金融機関から集めた寄付金が使われた優勝パレードはこちら 

 

 斎藤知事の数々の疑惑のなかで、実は事件性が高いと言われるのが「阪神・オリックスの優勝パレードの寄付金集めのため、金融機関に補助金をキックバックさせた」という疑惑だ。AERA dot.編集部は、この疑惑について、ある金融機関幹部から重要な証言を得ることができた。 

 

■犯罪捜査のような告発者捜し 

 

 9月6日、兵庫県議会の文書問題調査特別委員会(百条委員会)で片山安孝前副知事が証言に立った。 

 

 元県民局長が作成した内部告発文書を斎藤知事が入手した後、その文書を誰が作ったかを調査したことについて、片山前副知事は、 

 

「知事の指示だった。誰がどういう目的で出したか、『徹底的に調べてくれ』と言われた」 

 

 などと証言。元県民局長の公用パソコンを押収するとともに、「疑わしい」と見立てた複数の県職員のメールの内容を調査したり、スマートフォンの中のLINEのやり取りを写真で撮影したりするなど、犯罪捜査のような徹底した告発者捜しをしていた経緯が明らかになった。 

 

 この日の委員会の調査テーマは、公益通報制度からみた斎藤知事や県の対応の妥当性と、斎藤知事が贈答品を多数受け取っているという、いわゆる「おねだり」疑惑だった。だが、その枠を越えた質問が、竹内英明県議(ひょうご県民連合)から飛び出した。 

 

 元県民局長の告発文書には、阪神タイガースとオリックス・バファローズの優勝パレードをする際、寄付の集まりが芳しくなかったので、信用金庫など金融機関向けの県補助金を増額し、それを寄付として金融機関からキックバックさせた、という内容が記されている。 

 

 竹内県議は、その疑惑に切り込んだ。 

 

 

■「できる限りのご協力をお願いした」 

 

「パレード前には50万円しか信用金庫からは寄付が集まってなかった。あなた(片山氏)が(信用金庫を)訪問した後、具体的には、パレードの終わった後に(寄付が)振り込まれて、総額が2千万円になっている。50万円が、あなたが行ったことによって、1950万円増額された。2千万集めてくれって、訪問された信用金庫の理事長に言われたんですか?」 

 

 予定になかった追及に、片山氏は慌てた口調で、 

 

「委員長、ちょっと今日の内容と違うんですけど、それはよろしいんですか」 

 

 とうろたえる。百条委員会の委員長で弁護士資格も有する奥谷謙一県議が、 

 

「記憶の限りで、お答えできる範囲でお答えください」 

 

 と促すと、片山氏は、 

 

「お願いに行きました。具体の金額を頼んだ覚えはありません。できる限りのご協力をお願いしますと言いました」 

 

 と信用金庫に寄付を求めたことを認めた。 

 

■3億円も膨らんだ金融機関向け補助金 

 

 問題となっているのは県の金融機関向けの「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」による補助金。2023年12月の補正予算での補助金額は、11月14日の財政課長査定の段階では総額1億円だったが、16日には総額3億7500万円に増額され、最終的に斎藤知事の判断で「きりのいい金額」ということになり、総額4億円の補助金が計上されている。優勝パレードは11月23日。告発文書で「幹事社」と名前が挙がっていた信用金庫が寄付の受付をしたのが11月17日と28日で、その後、13の金融機関が相次いで寄付をして、「その総額は2千万円になったことを確認している」と竹内県議はいう。 

 

 斎藤知事はこの問題について記者会見で問われた際には、補助金の増額は認めたが、 

 

「キックバックさせることで補ったとありますが、そのような指示をしたことはありません」 

「同時期に進んでいたが、補助金と優勝パレードは別の事業」 

 

 などと優勝パレードと補助金の関係については否定している。 

 

 

■特捜部に出された刑事告発状 

 

 この問題で、東京都の男性が9月2日に、斎藤知事と片山前副知事の行為が背任にあたるとして、大阪地検特捜部に刑事告発状を提出した。告発状には、 

 

〈被告発人斎藤と片山は、兵庫県で補正予算を組み、補助金の増額。その裏で同時期に極秘裏に対象金融機関と交渉し、増額と引き換えに優勝パレードへの寄附を要求。本来、不要な補助金の増額という税金投入のシステムを悪用して、優勝パレードへの寄附にあてさせた。被告発人、斎藤と片山は寄附をノルマ通り集めた実績で評価を高めたい目的で、兵庫県に損害を与えた、違背行為である〉 

 

 などと書かれている。 

 

 県は否定しているが、補助金増額と引き換えに寄付を求めたのかどうかが焦点になってくる。 

 

■「補助金と寄付はセットになっている」 

 

 この点について、AERA dot.編集部は、優勝パレードに寄付した、ある金融機関の幹部を直撃。重要な証言を得ることができた。 

 

 ―― 優勝パレードへの寄付はどう決まったのか? 

 

「もともと、うちのような小さな金融機関に優勝パレードに寄付なんて話はありませんでした。突然、うちの最高幹部から、『〇〇信用金庫から頼まれた。優勝パレードに300ほどうちから出す』と話が降ってきました」 

 

 ―― いつごろ、寄付してと言ってきたのか? 

 

「優勝パレードが終わってからです。寄付すればパレードに使用する車にロゴが入るなど、特典があるのですが、すでに終わっています。当然のように、『何のメリットもない、カネを捨てる気なのか』と内部で声があがりました。するとうちの最高幹部から、『県の金融機関向けの補助金増額が決まっているので、寄付はセットになっている。最終的にプラスになる、損はしない。優勝パレードの特典とか関係ない』との話でした」 

 

 ―― 寄付は誰が依頼してきたのか? 

 

「うちの最高幹部は『(当時の副知事)片山氏がどうしても寄付をと頼んでいる』と言っていました。片山氏は副知事になる前は、兵庫県信用保証協会理事長だった。つまり公的融資の保証人で、金融機関からすれば頭があがらない。『片山氏が斎藤知事のメンツを立ててと言っている』ともうちの最高幹部から話がありました。片山氏に加え斎藤知事からもとなれば、小さな金融機関にとっては天の声、神の声。他の金融機関にもこっそり聞くと、同じように補助金と寄付、セットになっている、寄付するつもりだとの話だった。そこで、歩調を合わせるべきと結局、300万円を寄付しました」 

 

 

 この金融機関幹部は、斎藤知事に対する内部告発の文書が報じられた後、 

 

「こういう裏があったのか」 

 

 とわかったと言う。そして、300万円を寄付したことを示す内部資料も見せてくれた。 

 

 この金融機関幹部に、この問題で刑事告発状が出されていること、被告発人とされている斎藤知事と片山氏に加え、金融機関も「背任罪の共犯となりうる可能性」と告発状に記されていることを伝えると、 

 

「ホンマですか、うちが共犯者になる? 特捜部に調べられるのでしょうか。いや、困った。寄付を取り消せないものか。天の声、神の声がなかったらこんなことにはならなかった」 

 

 と驚いた様子で、肩を落とした。 

 

■「寄付のために無駄な税金を支出させたのか」 

 

 百条委員会でこの問題を取り上げた竹内県議は、この疑惑についてこう話す。 

 

「この疑惑が本当ならば、増額した3億円の補助金をネタに、優勝パレードのための2000万円ほどの寄付を出させたということで、県に大きな損失を与えたことになります。百条委員会でも、斎藤知事は正面から質問に答えようとしない。真相解明には、捜査機関のような強制力が必要です」 

 

 また、前明石市長で弁護士でもある泉房穂氏は、こう話した。 

 

「私も内部告発の中でとりわけ事件性が高いと感じているのは優勝パレードの疑惑です。斎藤知事らが寄付を多く集めようとして、無駄な税金を支出させたというのなら看過できません。告発の罪名が背任罪というのは確かにその通りだ。斎藤知事が居座っている状況では、県政が停滞するばかり。不信任決議案なのか、捜査が先なのか。いずれにしても、県民として早急な対応を求めたい」 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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