( 211701 )  2024/09/14 16:06:43  
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いきなり!ステーキは業績が上向きになり、拡大に意欲をみせている。

2024年12月期には6期ぶりの通期黒字化を計画しており、今期は数十店舗の増加を目指す。

組織として動く文化が根付き、ボトムアップの提案も増えている。

家族客の獲得に力を入れ、リーズナブルで高品質なステーキを提供する方針は変わらないが、スタイルは変わっている。

東南アジアでも出店を進め、外食需要の大きさを感じている。

一瀬健作社長は、再び出店を目指している様子。

(要約)

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業績も上向きになり、拡大に意欲を示すいきなり!ステーキ。来期は数十店舗の純増を狙う(記者撮影) 

 

最盛期には約500店舗を展開、多くのファンを生み、一世を風靡した「いきなり! ステーキ」。2019年以降は過剰出店の影響やコロナ禍などで業績は低迷。店舗数は約180店まで減少した。 

厳しい経営が続いていたものの、前2023年12月期の営業損失は4.9億円と、2022年12月期の15.5億円の損失から大幅に縮小。第4四半期は黒字化を達成した。今2024年12月期は2018年以来、6期ぶりの通期黒字化を計画している。 

 

【写真】人気のワイルドステーキは「いきなり!ステーキ」の代名詞 

 

創業者の一瀬邦夫氏が2022年8月に辞任し、長男の一瀬健作氏が経営を引き継いでから2年。復活を目指す「いきなり! ステーキ」の今後の戦略や経営方針、社内環境の変化について一瀬健作社長に聞いた。 

 

■ボトムアップの提案も増えた 

 

 ――2022年8月に社長に就任してから2年が経ちました。どんな苦労がありましたか?  

 

 就任当時はコロナの影響が残り、過剰出店で業績も低迷していた。借入金の返済もあり、まずは会社の立て直しが課題だった。足元では2019年に実施した借入金の返済が終了するなど、会社の立て直しは一段落し、ようやく攻めの経営をできる土台が整ってきたところだ。 

 

 以前は前社長の強いリーダーシップがあった。それによって大量出店を実現できた側面もあり、すべてが悪いことではなかった。だが、そこに依存していた部分もあった。 

 

 現在は、組織として動く文化が少しずつ根付いている。イベントや販促などはボトムアップで考えている。特に集客など販売促進の部分で柔軟な施策を打てるようになった。グランドメニューにない新たな部位の導入や焼き方など、調理方法の工夫もボトムアップで提案が出てきている。 

 

 ――社員にとってもトップダウンからの転換は難しかったのでは?  

 

 6月に実施したVTuberグループのホロライブとのコラボは、ボトムアップで決まったものだ。いきなり! ステーキが10周年を迎えるにあたり、社内向けに「家族客の獲得」が課題と話した。その後、社員から提案があって実現している。 

 

 現場もボトムアップで変わっている。家族客の獲得が見込める店舗では、期間限定で税込み110円のお子様ランチも提供していた。 

 

 

 自分から発案した企画が通れば、社員も楽しく働けるだろう。うまくいかなくても成長につながる。いいサイクルを構築できていると思う。 

 

 ――今2024年12月期は6期ぶりに営業黒字化を計画しています。足元の状況はどうですか?  

 

 上期は赤字になる計画を組んでいたが、計画よりも順調に推移しており、かなりポジティブに捉えている。 

 

 4月に価格改定を実施した影響があり、現状は客数にマイナスの影響が出てしまっている。その影響が今後どうなるか見守る必要がある。ただ、粗利益の確保はしっかりとできている。通期では黒字化できる見通しだ。 

 

■父、邦夫前社長との関係は・・・ 

 

 ――現在、邦夫前社長との関係はいかがですか?  

 

 家族としてのコミュニケーションは取っている。お盆の時期に線香を上げに実家に帰った。父が両国でやっている「和牛ステーキ和邦(わくに)」の休憩時間に家に帰ってきて、テレビを見ながら「次はいつお墓参りに行こうか」といった話はしている。普通の親子の関係だ。 

 

 ペッパーフードサービスについては、退任したので口を出さないようにしているが、リリースなどは見ているようだ。ただ、リリースで知ると「なんで教えてくれなかったの」とさみしそうにするので、言える範囲で会話するようにしている。 

 

 ――いきなり! ステーキは、以前のスタイルから転換を進めています。 

 

 従来、ターゲットとしていたのは40~50代の1~2人で来店する層。立ち食いで回転率をできるだけ高め、利益を出すスタイルだった。 

 

 ただ出店から10年が経ち、リピーターの年齢も上がり、客層の拡大は課題だ。牛肉価格も上がり、集客は難しくなっている。それでも、ステーキを食べたいという需要はなくなっていない。リーズナブルで高品質なステーキを提供する方針は変わらないが、スタイルは変わっている。 

 

 具体的には、家族客を呼び込めるようにしている。会員ごと、グラム単位でポイントを付与していた「肉マイレージ」は、金額でポイントを付与するように変更した。家族でまとめて会計してもポイントが付与されるので、リピートしてもらえることを狙っている。 

 

 また、回転率を重視するのではなく、食事の時間を楽しんでもらえるレストランに近づいている。例えば、ステーキを焼く鉄板を店舗の中心に配置してステージのようにすることを考えている。食事だけでなく、料理の過程も楽しんでもらいたい。 

 

 

 ――それでは他チェーンとの差別化が難しくなる面もあるのでは?  

 

 牛肉価格が高騰する中で価格帯が変わり、客層も少し変わっている部分はある。しかし、以前の「回転率が高い」イメージは依然として強い。競合他社が多くいるようなカテゴリーに入ったとは思わない。 

 

 「リーズナブルで高品質なステーキ」を出す独自性は変わらない。商品の調達などで自社の強みをしっかりと打ち出していきたい。 

 

 ――ここ数年、店舗数は純減傾向が続きました。 

 

 飲食店としては、店舗数は多いほうがよい。が、過剰出店で不採算店舗も増え、コロナ禍もあり会社存続が危うい状況だったので、店舗数にこだわらず、まずは会社の建て直しが重要だった。足元は会社の基盤も強くなってきた。再び出店を目指していく。 

 

■東南アジアの外食需要は大きい 

 

 出店は、従来多く出店していた駅前や繁華街を中心に考えている。コロナの影響も少なくなり、外食を利用する人は確実に増えている。インバウンドの増加が追い風になっている店舗もあるので、人の多く集まる地域には一定数の店舗を出していきたい。 

 

 ――今後は海外でも出店を進めていく方針です。 

 

 現在は台湾、フィリピン、インドネシアに計5店舗を出店している。出店した店舗はいずれも好調だ。東南アジアは日本よりも外食の需要が大きいと感じている。 

 

 FCで展開しているため、現地のパートナーと協力して、商業施設などを中心に出店していく。国内と同様に店舗数を追いかけるのではなく、消費者のニーズがある立地を見極めていきたい。 

 

金子 弘樹 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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