( 212351 )  2024/09/16 16:44:43  
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福井駅は北陸新幹線の全列車が停車する拠点であり、福井市では再開発ビルや商業施設が集まる中心地となっている。

新幹線の金沢―敦賀間延伸開業から半年が経ち、観光客が増えたが、宿泊客数は伸び悩んでいる。

福井市内で滞在してもらうためにはどうすればよいか、課題が浮かび上がっている。

県は観光施設の整備を進めて観光客を誘致しているが、宿泊者数が期待ほど伸びておらず、影響が出ている地域もある。

観光客を周遊させ、長く滞在させるためには、福井市を含め魅力的な場所を充実させる必要があるとの指摘がある。

(要約)

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北陸新幹線の全列車が止まる福井駅。再開発ビルや商業施設が集まる(福井市で) 

 

 3月の北陸新幹線金沢―敦賀間の延伸開業から16日で半年を迎える。観光客が大きく増え、福井県内はかつてない活気に沸く。しかし、宿泊客数は伸び悩み、新幹線効果の恩恵に浴さない地域が出ている。訪日外国人客(インバウンド)の取り込みも低調だ。どうすれば多くの観光客らに県内で滞在してもらえるのか。にぎわいの裏に見える課題から迫る。 

 

 「福井の周辺にも魅力的な都市がたくさんある。福井で泊まってまで楽しみたいとは思えない」 

 

 8月25日に北陸新幹線で初めて福井を訪れた埼玉県上尾市の会社員(50)は語る。永平寺町を訪問し、おろしそばを食べた後、土産を購入した福井駅から帰宅した。 

 

 土日の北陸旅行。初日の同24日は金沢市内を巡り、そのまま金沢で宿泊した。「兼六園や金沢21世紀美術館といった観光名所がコンパクトにまとまり、食と観光を楽しめた」と評価する。一方で、福井について「東尋坊(福井県坂井市)まで足を延ばして海鮮を食べようとも考えたが、海の幸は金沢の近江町市場で食べることができたのでやめた」とした。 

 

福井駅前のティラノサウルスのロボット 

 

 県などは新幹線延伸に向け、多くの観光客に県内で宿泊し、観光名所を周遊してもらうことを目指し、観光施設などの整備を進めてきた。 

 

 県の推計では、県外からの宿泊客の消費額は日帰り客の3・7倍の平均約2万3000円。宿泊客増による地域振興を狙い、特に力を注いだのが玄関口・福井駅の周辺だった。県などが多額の補助金を投入して再開発を後押ししたほか、外資系ホテルを誘致し、20体を超える恐竜モニュメントを設けた。 

 

 その結果、延伸を機に福井駅から県内各地を訪問する観光客は増えた。県によると、延伸後の5か月間で、永平寺は前年同期比29%増、県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館(福井市)は10%増で、大規模改装を経て昨夏に再オープンした県立恐竜博物館(勝山市)も新型コロナウイルス感染拡大前の2019年同期より19%多かった。杉本知事は今月6日の記者会見で、「投資がされたところを中心に人が集まっている」と誇らしげに語った。 

 

 しかし、お膝元の福井市の宿泊者数は、コロナ禍前に戻るほど大幅に伸びているわけではない。市などによると、3~6月の宿泊者は19年同時期と比べ、それぞれ8~24%程度減少した。県内全体で見ても、3月から6月までの宿泊者数は、それぞれ19年より1割程度減っていた。 

 

 

 県は20年、延伸する24年の県内での宿泊者数を18年(406万人)より25%多い510万人、観光消費額を1700億円にするとの目標を定めていた。しかし、昨年1年間は324万人で、達成率は63%程度にとどまる。新幹線延伸後も福井を訪れた旅行者が周辺地域で宿泊している可能性があり、県の担当者は「原因を分析しなければならない」と危機感を募らせる。 

 

再開発したエリア 

 

 宿泊者数が「低迷」しているとみられることで、影響も出ている。 

 

 福井駅から徒歩約15分の繁華街・片町。複数の店舗経営者らは「期待ほど開業効果を受けていない」と口をそろえる。和食飲食店の女将吉田香澄さん(67)は「客足は開発があった駅前で止まってしまっている」とこぼす。「道路や街灯などを整備するための開発費用を片町にも回し、観光客らが来やすい街にしてほしい」と訴える。 

 

 観光客が滞在して福井各地をじっくり回らないのであれば、効果は駅前や特定の観光名所に限定されてしまう。県は6日、片町などを念頭に、新幹線の恩恵が十分に届かず、人の流れや売り上げが減った地域への支援を始める考えを明らかにした。 

 

 仁愛大の南保勝・特任教授は「新幹線ですぐ来られるようになったということは、すぐに県外へ出ていけるということだ」と指摘。「福井市内も含め様々な場所が、歴史や文化などそれぞれの魅力を磨き、魅力が多く混在する福井にしなければ、観光客を周遊させ長く滞在させることは難しい」と話す。 

 

来館者でにぎわう恐竜博物館(福井県勝山市で) 

 

 北陸新幹線延伸を受け、「恐竜王国」は観光客らの注目を集めている。 

 

 県立恐竜博物館(勝山市)では、再オープンした昨年7月から1年間の入館者数が初めて年100万人を超え、118万154人に達した。8月に初めて同館を訪れた東京都練馬区の大学院生(23)は「迫力満点で充実した展示に大満足です」と話す。 

 

 同館の担当者は「新幹線開業で福井の注目度が高まった成果が表れている」と分析する。 

 

 福井駅前では、肉食恐竜「ティラノサウルス」の実物大ロボットなど22体が観光客らを迎えている。 

 

 

 
 

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