( 212676 )  2024/09/17 16:58:14  
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西九州新幹線が開業2年を迎える中、武雄温泉駅からの未整備区間について議論が進展せず、不透明な状況が続いている。

地元自治体や有識者の意見を踏まえると、今後の展望として、国の財政負担増や現在の在来線特急との「リレー方式」固定化、東九州新幹線整備へのシフトが想定される。

地元負担増による議論の停滞があり、国の負担増や新たな議論が必要とされているが、具体的な解決策は不透明なままである。

(要約)

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読売新聞 

 

 西九州新幹線(長崎―武雄温泉間、約66キロ)は今月23日、開業2年を迎える。佐賀県内の武雄温泉駅(武雄市)から九州新幹線までの「未整備区間」を巡る議論は、この2年進展せず、実現できるかは不透明なままだ。政府・与党や地元自治体の動向、複数の有識者の見方を踏まえると、今後の展望としては、〈1〉国の財政負担を増やしての整備〈2〉現在の在来線特急との「リレー方式」の固定化〈3〉東九州新幹線の整備議論へのシフト――が想定される。(池田寛樹、梅野健吾) 

 

【写真】在来線特急「リレーかもめ」と、西九州新幹線「かもめ」による「リレー方式」は解消のめどが立たない状態が続いている(佐賀県武雄市のJR武雄温泉駅で) 

 

 「整備新幹線は事業費の大幅な上振れが常態化しており、これを前提にする必要がある」。今月11日、佐賀県の山口祥義知事は県議会でこう述べた。山口氏は、国土交通省などが8月に公表した北陸新幹線の延伸ルート「敦賀―新大阪間」の建設費が、3・4兆~3・9兆円と試算され、現状の物価上昇が続けば5兆円を超えるとの見通しが示されたことに触れ、「(西九州も)拙速に議論を進めるようなものではない」と強調した。 

 

 整備新幹線の建設費のうち地方負担は、JRが支払う設備の「使用料」を除いた額の3分の1と法令で定められている。武雄温泉―新鳥栖(鳥栖市)間を佐賀駅経由で整備した場合、佐賀県は実質負担を1400億円超と見込み、「負担が大きすぎる」と主張してきた。 

 

 一方、与党検討委員会は佐賀駅ルートを基本とし、「沿線自治体はルール通りの負担をしており、佐賀県にだけ特別なことはできない」と制度の変更を否定してきた。長崎県とJR九州も同ルートの整備を求めているが、ある与党議員は「山口知事(昨年1月から3期目)の間は議論は進まないのではないか」と語る。 

 

 こうした状況を踏まえ、大阪産業大の波床正敏教授(交通計画)は、「北陸新幹線沿線でも、京都府など建設費高騰を理由に慎重な自治体が出てきている。国家プロジェクトの新幹線ネットワーク構築を進めるには、急激な物価高による地元負担増を軽くする必要がある。与党が政治決断し、国の負担を大幅に増やさなければ北陸も西九州も延伸は困難だ」との見解を示す。 

 

 

 与党内では、毎年800億円程度の国の整備新幹線事業費補助の増額を求める声が出ている。ただ、自民党総裁選に加え、解散・総選挙が近く行われる可能性もあり、先行きは未知数だ。 

 

 佐賀県内には現在、九州新幹線の新鳥栖駅があり、関西まで新幹線で行ける。また、佐賀―博多間は在来線特急で片道約35分。西九州新幹線を佐賀駅ルートで整備すると、長崎―博多間は30分短縮される一方、佐賀―博多間は15分短縮にとどまる。 

 

 西南学院大の近藤春生教授(財政学)は「佐賀は一定の交通インフラがあり利便性は低くない。人口減少を踏まえれば、新幹線整備の費用対効果は高くないだろう。国交省だけでなく、外部機関が費用対効果を客観的に算定・分析し、高い効果を見込めなければ、リレー方式の固定化でも仕方ないのではないか」とする。 

 

 大分県の佐藤樹一郎知事は10日の県議会で、東九州新幹線構想について「(具体的な手続きに入る)整備計画路線への格上げを国に訴えたい」と意欲を示した。同新幹線は福岡市から大分、宮崎両県を通り鹿児島市に至る構想。全国新幹線鉄道整備法に基づき、1973年に基本計画路線に定められたままとなっている。 

 

 大分県は昨年、従来の日豊線沿いのルートのほかに、新鳥栖駅から大分駅までの久大線ルートを調査。宮崎県も、新八代駅(熊本県)と宮崎市をつなぐ新たなルートの構想を打ち出すなど、議論が活発化している。 

 

 九州大の塚原健一教授(土木工学)は「西九州新幹線の議論が足踏みしていても、南海トラフ地震対策の意義がある東九州新幹線の議論は急ぐ必要がある。大分から愛媛、関西へつなげる豊予海峡ルートも、半導体産業で沸く熊本と大分のラインを発展させるために進めるべきだ」と指摘。 

 

 その上で、「九州の新幹線網をどう構築するかという重大な問題は、国も交えて九州の知事会や経済界が議論していく必要があるのではないか」と提案する。 

 

 

 
 

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