( 212701 )  2024/09/17 17:24:37  
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新型コロナウイルス禍でトイレに設置されているハンドドライヤーの使用が日本で禁止され、その影響を受けた東京エレクトロンの井上社長は風評被害だと感じている。

世界保健機関はハンドドライヤーの使用を奨励していたが、日本では使用禁止が続いた。

結局、東京エレクトロンの売り上げは激減し、科学的な根拠があるにも関わらず、業界団体はガイドラインを変更しなかった。

国がハンドドライヤーの使用を許可したのは比較的遅く、まだトイレには使用禁止の紙が残っているところも多い。

井上社長は国を訴えることも考えたが、「一度悪とみなされると巻き返しは難しい」と述べ、現在も売り上げが回復していない状況が続いている。

(要約)

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トイレに設置されているハンドドライヤー。日本では新型コロナウイルス禍で軒並み使用が禁止された=東京都千代田区で2024年9月9日、和田大典撮影 

 

 「私は今でも風評被害だと思っています」 

 

 東京エレクトロン(神奈川県)の井上聖一社長(74)は言った。 

 

【図解・写真まとめ】売れ残ったハンドドライヤーが山積みに 

 

 同じ社名で世界的に有名な半導体装置大手があるが、そことは違う。トイレに設置されているハンドドライヤーの製造会社である。社員5人の中小企業だ。 

 

 ハンドドライヤー業界は新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた。スーパーやレストラン、ホテルといった各業界団体が2020年5月以降に作成した感染防止ガイドラインに軒並みハンドドライヤーの使用禁止を盛り込まれたからだ。 

 

 東京エレクトロンの売り上げは例年の1割ほどにまで激減した。 

 

 井上社長は納得できなかった。 

 

 ハンドドライヤーの使用について、世界保健機関(WHO)はむしろ奨励していた。そして、使用禁止の対応を取っているのは日本だけだった。 

 

 井上社長は自ら実験をし、ハンドドライヤーが感染拡大につながる可能性は「極めて小さい」ことを明らかにし、インターネット上で公開した。 

 

 「科学的に安全と分かれば、世間は必ず理解してくれるはず」。井上社長はそう信じていたが、業界団体の大半はガイドラインを変えようとしなかった。 

 

 国が「ハンドドライヤーは使用できる」との見解を公表したのは22年10月。遅ればせながら、科学的見地に沿ってガイドラインの改定を促した。 

 

 ただ、それでも依然としてハンドドライヤーに「使用禁止」の紙が張られたままのトイレは多かった。すべての張り紙が外されるのは、コロナの感染症法上の位置付けが「5類」となる23年5月以降のことだ。 

 

 井上社長は一時、国を訴えることも検討したという。 

 

 「一度でも『悪』とみなされると、巻き返しはできない。結局、科学的に正しいかどうかは関係ないんです」 

 

 会社の売り上げは、現在もコロナ前の4割ほどに過ぎない。【川上晃弘】 

 

 

 
 

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