( 213291 )  2024/09/19 16:47:08  
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高卒と大卒では、生涯年収に数千万円単位の差があり、大学進学が経済的に無理をしてでも価値があるとされる傾向がある。

しかし、現実には大学卒業後に苦しい経済状況に直面する人もいる。

この記事では、奨学金の返済が給与に圧迫されるケースやライフイベントに影響を及ぼす事例が取り上げられており、現在は返済不要の奨学金や企業による支援が増えていることも紹介されている。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

学歴など関係ない……とはいうものの、高卒と大卒では、生涯年収の差は数千万円単位。多少、経済的に無理をしてでも、大学には進学したほうがいいというのが昨今の傾向です。しかし、ちょっと無理して大学進学を果たしたその先には、なんとも苦しい未来が待っていました。 

 

▼【早見表】年収別「手取り金額」150万~2,000万円を50万円ずつ早分かり 

 

――月4,000円でもキツイですよね 

 

竹山海斗さん(25歳・仮名)。専門商社に勤務する、社会人3年目です。4,000円というのは家賃の値上げのこと。大学生の頃から住んでいる東京のアパート。月7万1,000円でしたが、今回の更新で4,000円アップしました。引越しをするかどうか迷いましたが、引越し費用を考えると家賃4,000円アップを飲んだほうがいいという結論に達したといいます。 

 

総務省統計局『小売物価統計調査統計調査』によると、2024年7月現在、民間借家の家賃は全国平均4,494円/月(1畳あたり)。1畳=3.3平米と考えると、1人暮らし25平米ほどの部屋だと、全国平均3.4万円ほど、という計算。都市別にみていくと、東京都区部では9,747円/月。25平米の部屋だと7.3万円ほどです。東京都市部の府中市では6,634円/月、25平米なら5万円ほど。八王子市なら5,772円/月。25平米で4.3万円です。 

 

大卒サラリーマン(平均年齢42.6歳)の平均給与は月40.8万円、年収673.6万円。学歴計で月収36.3万円、年収で596.9万円なので、“大卒”というアドバンテージは大きいといえるでしょう。しかし大卒であっても20代前半では月収で24.3万円、年収で356.1万円程度。 

 

ちょうど平均くらいの給与だという竹山さん。手取りは月19万円ほどだといいます。 

 

 

 

【月収24万円・25歳サラリーマンの手取り額】 

 

額面:24万円 

 

手取り:18万9,812万円 

 

(天引き内訳) 

 

・所得税…4,697円 

 

・住民税…1万0,083円 

 

・健康保険…1万2,000円 

 

・厚生年金…2万1,960円 

 

・雇用保険…1,440円 

 

一方、1人暮らし男性の1ヵ月の支出をみていくと、月17万円程度。ただこれは全国平均で、家賃にあたる居住費は月3.6万円。倍以上の家賃を払う竹山さん。平均的な1人暮らし男子の暮らしは難しい水準です。 

 

 

 

【1人暮らし男子の1ヵ月の支出】 

 

消費支出…16万8,797円 

 

(内訳) 

 

食料…4万2,747円 

 

住居…3万6,289円 

 

光熱・水道…9,161円 

 

家具・家事用品…4,998円 

 

被服及び履物…5,735円 

 

保健医療…4,113円 

 

交通・通信…2万0,838円 

 

教育…7円 

 

教養娯楽…2万5,907円 

 

その他の消費支出…19,004円 

 

※34歳未満/勤労男性の場合 

 

 

さらに竹山さんの家計をひっ迫させているのが、奨学金の返済です。 

 

中央労福協が日本学生支援機構の奨学金を利用し、現在それを返還中の人を対象に行った『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』によると、奨学金の借入額は平均310万円。また毎月の返済額は月1.5万円でした。また返済に関して4割が「苦しい」と回答。困窮具合は年収で左右されますが、竹山さん同様「年収300万円~400万円未満」では5割弱が奨学金返済が大きな負担になっていると回答。さらに大卒サラリーマンの平均年収、600万円台になっても3割強の人が奨学金返済に負担感を覚え、さらに8人に1人は「かなり苦しい」と窮状を訴えています。 

 

 

 

【年収別「奨学金返済」負担感】 

 

年収200万円~300万円未満…55.2%(27.7%) 

 

年収300万円~400万円未満…48.9%(19.2%) 

 

年収400万円~500万円未満…41.9%(22.6%) 

 

年収500万円~600万円未満…41.3%(15.9%) 

 

年収600万円~700万円未満…34.7%(12.6%) 

 

年収700万円~800万円未満…32.7%(10.5%) 

 

年収800万円~900万円未満…28.0%(8.5%( 

 

年収900万円~1,000万円未満…36.4%(16.9%) 

 

年収1,000万円以上…29.0%(12.3%) 

 

※数値は「かなり苦しい」と「少し苦しい」の合計、(かっこ)内は「かなり苦しい」のみの数値 

 

30代後半くらいまでかかる奨学金の返済。なかには結婚したり、子どもが生まれたりとライフステージが変化している人もいるでしょう。そうなると、奨学金返済にあてる月1.5万円でも、大きな負担を感じるようになります。 

 

大学を卒業したばかりで社会人経験が浅く給与も低い。奨学金の返済が苦しいのはいまだけ……そう歯を食いしばっている人たちにとって、いまよりも給与が良くなっても、奨学金の返済負担からは逃れられない(というケースもある)という事実には、絶望感を覚えるかもしれません。 

 

地方から大学進学のために上京をしてきたという竹山さん。「その先の就職を考えると、地元の大学よりも東京の大学のほうが有利だから」というのが上京の理由。家の経済的な事情を鑑みて、奨学金を利用し、アルバイトをしながら、大学に通ったといいます。しかし、この先も奨学金返済に苦しむ、地獄のような日々が続くかもしれません。 

 

――こんなことなら大学なんていかなきゃ良かった 

 

竹山さんのように、奨学金返済の負担感が、その先のライフイベントに大きな影響を与えていることがクローズアップされています。昨今は、返済不要の給付型奨学金も増加。また福利厚生の一環として、奨学金返済を肩代わりするという企業も増えています。 

 

進学したことを後悔することのないよう、返済のことも見据えて賢く奨学金を利用したり、キャリアを考えたりしたいものです。 

 

[参考資料] 

 

総務省統計局『小売物価統計調査統計調査』  

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』  

 

総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』  

 

中央労福協『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』 

 

 

 
 

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