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青山商事が新しいモード服ブランド「CIS.(シス)」を立ち上げた。

これまでのイメージとは異なる先鋭的なデザインで、20代後半から30代の女性をターゲットにしている。

14点の商品はジャケットコートやシャツ、パンツから、ビスチェやジレ、ワンピースなど多彩。

洗濯機で洗える素材やストレッチ機能、放電テープなど機能性も兼ね備えている。

ブランドのディレクターはオフィスウェア未経験の黒石奈央子氏が務め、20~30代の女性へのアプローチを狙っている。

SNSを活用した販売戦略やローンチパーティーも実施し、新ブランドの成功を目指す。

(要約)

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(編集部撮影) 

 

 「人生でオフィスウェアをほぼ着たことがない」――。そんな外部人材を起用した新ブランドは「洋服の青山」のイメージを変えられるか。 

 

【写真】オーバーサイズのシャツなど、レディスの新ブランドは「洋服の青山」らしくない商品ばかり 

 

 紳士服大手の青山商事は今年の秋冬、大胆な勝負に出る。これまでの同社のイメージにはない、先鋭的なモード服のブランドを投入したのだ。 

 

 青山は9月20日、オフィスウェアの業態「スーツスクエア」(前身はスーツカンパニー)でレディスの新ブランド「CIS.(シス)」を立ち上げ、全国の旗艦店を中心に15店舗で販売を開始した。 

 

 青山といえば、郊外の大型店「洋服の青山」で販売するリクルートスーツや礼服をイメージする人も多いだろう。だが、シスには従来のジャケットとパンツのセットアップだけでなく、とがったアイテムがそろっている。青山はなぜ今、レディスのモード服を狙ったのか。 

 

【写真】どんなデザイン? レディスの新ブランド「CIS.」の商品を見る 

 

■デザインや素材にもこだわり抜いた 

 

 新ブランドは、スタイリッシュなデザインの服を職場でもプライベートでも着たい、20代後半から30代の女性をイメージしている。「仕事もがんばりたいし、ファッションも楽しみたい」と思う女性は少なくないだろう。 

 

 今シーズンに発売する商品は14点。ジャケットコートやシャツ、パンツなどのベーシックな商品から、ビスチェ(肩紐がなくコルセットのように体のラインをタイトに見せるトップス)やジレ(袖なしジャケット)、ワンピースなども投入する。体型に合わせて、ぴったりと着るジャケットやパンツとは異なる商品群だ。 

 

 デザインもシンプルすぎず、工夫を凝らした商品に仕上げている。例えば、ジャケットのフロントラインはS字やC字に曲線を描き、非対称のデザインにしているほか、ジャケットコートには半円形のポケットを採用している。 

 

 デニムのような薄い青色のコートやレザー、織って模様を描くジャカードなど、素材や色に関してもこだわった。 

 

 日々の着回しも意識している。トップスとボトムスのセットアップとして全身コーディネートを楽しめるほか、丈の長さが異なる2種類のスカート、ジャケットとベストを重ねるコーディネートなども提案する。 

 

 どの商品も従来の青山らしくないデザインだが、機能面では同社の強みを発揮している。ジャケットには洗濯機で洗えるウォッシャブル素材が採用されているほか、ストレッチ機能や静電気を抑える放電テープといった、洋服の青山やスーツスクエアのスーツでおなじみの機能が備わっている。 

 

 

 ブランドのディレクターを務めるのは黒石奈央子氏。カジュアルブランド「AMERI(アメリ)」などのディレクターを務め、ヴィンテージアイテムを取り扱うセレクトショップ「アメリ ヴィンテージ」も立ち上げている。 

 

 黒石氏はこれまで、スーツなどのオフィスウェアを監修したことはなく、「人生でオフィスウェアをほぼ着たことがない」という。今回は商品の生地からシルエット、裏地やボタンの細部まで監修した。黒石氏は「(職場という)縛られたルールの中で自分らしいファッションを楽しめるオフィスウェアを提案したい」と意気込みを語っている。 

 

■オフィスウェアを買わない層にアピール 

 

 青山がスーツになじみのない黒石氏を起用したのは、トレンドに敏感な20~30代の女性へのアプローチを狙っているからだ。 

 

 もちろん、青山もターゲット層に向けた服を作ることはできるだろう。しかし、従来のスーツにとらわれない商品を企画するのは、外部の人材でなければ難しい。 

 

 黒石氏は20~30代女性向けのブランドを立ち上げた実績があり、インフルエンサーとしての顔も持つ。 

 

 インスタグラムのフォロワー数は29万人(9月時点)。黒石氏を通じて、普段オフィスウェアを買わない層にも青山を知ってもらう狙いがある。 

 

 シスではSNSを活用した戦略を進めてきた。ブランドの告知は7月から始め、ブランド名やビジュアル、商品イメージを公開。全貌は公開せず、インスタグラムのアカウントで少しずつ情報を発信してきた。ECと店頭販売で期間を空けて販売する方法は、20~30代に響く戦略だという。 

 

 黒石氏も発売に先駆けて、商品を一つずつインスタグラムのライブ配信で紹介するなど、投稿を続けている。 

 

 青山の執行役員でTSC事業本部長の河野克彦氏は「(新ブランドで)当社になかった知見を生かしながら新規顧客を開拓する」と語る。スーツスクエアの店舗とECで売り上げを拡大していく構えだ。 

 

■ローンチパーティーも実施 

 

 青山は現在、スーツスクエアへのリブランディングを進めている。都市部を中心に出店してきた前身の「ザ・スーツカンパニー」をなど4業態を集約し、屋号を改めたものだ。そんな中で、シスは新たなイメージを打ち出す重要戦略の一つと言える。 

 

 今回のブランド立ち上げに際して、報道陣向けの発表会と併せてローンチパーティーも開催。ファッション誌関係者やインフルエンサーが来場し、商品を試着したり、スマホで撮影したりするなど、会場はにぎわいを見せていた。 

 

 パーティー形式でファッション関係者を呼ぶイベントは、広報担当者も「今まであまりなかった」と語るほど、従来の青山のイメージを覆す新しい試みになった。 

 

 異例の取り組みとなった新ブランド。SNSを起点にターゲット層に届けられるか。今年の秋冬は大勝負のシーズンになりそうだ。 

 

井上 沙耶 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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