( 215671 )  2024/09/26 16:55:10  
00

自民党総裁選と同時進行の立憲民主党代表選で、野田佳彦元首相が新代表に選出された。

野田氏は急速に人事工作を進め、新執行部を決定して党内で承認された。

一方で、野田氏に対して若手から「論功行賞だらけ」などの批判や不満が噴出し、挙党態勢への「ノーサイド」がうたわれている。

 

 

代表選では、野田氏が枝野幸男氏を破って勝利し、新執行部の中心に小川淳也幹事長を据えるなどした。

野田氏は政権交代を目指し、次期衆院選での選挙共闘などを図る意向を示しているが、野党連携や政策統一が難航する状況も指摘されている。

 

 

野田氏は「穏健な保守層」の取り込みを目指す姿勢を示し、政権奪取への意欲を強調しているが、過去の経緯や関係性によって党内の一体化が難しい状況も見られる。

そのため、野田氏の野党第1党党首としての責任や挑戦は非常に大きいと言える。

(要約)

( 215673 )  2024/09/26 16:55:10  
00

(写真:時事) 

 

 自民党総裁選と同時進行となった立憲民主党代表選が23日に投開票され、決選投票の結果、野田佳彦元首相(67)が新代表に就任した。野田氏は直ちに人事工作に着手し、翌24日に小川淳也幹事長(53=衆院議員=)を軸とした新執行部人事を決め、同日午後の同党両院議員総会での承認を受けて、野田新体制をスタートさせた。 

 

 これを受け野田新代表は、直ちに野党各党へのあいさつ回りをこなした後、新執行部人事について、記者団に「刷新感のある中堅を中心に選んだ」などと笑顔で胸を張って語った。ただ、党内からは「代表選での論功行賞だらけ」(若手)との不満、批判が噴出するなど、野田氏が叫ぶ挙党態勢への「ノーサイド」とは程遠い実態を露呈。他野党からも「政権交代どころか、党内混乱が大きな“落とし穴”になりかねない」(国民民主幹部)との声が相次いでいる。 

 

 立憲民主党は23日午後、東京都内のホテルで開いた臨時党大会で、野田氏を新代表に選出した。野田氏はこの代表選での1回目投票でトップとなったが過半数には達せず、決選投票で枝野幸男元代表(60)を破った。野田氏の代表任期は2027年9月までとなり、「政権交代による首相再登板」が“大目標”となる。 

 

 ただ、目前に迫る次期衆院選での野党選挙共闘が不発に終わって自公政権継続ともなれば、野党第1党党首としての責任を厳しく問われることは確実。このため、野田氏にとって「来夏の参院選までの約10カ月間が党首としての正念場」(政治ジャーナリスト)となることは間違いなさそうだ。 

 

■代表選、決選投票で野田氏が枝野氏を圧倒 

 

 今回の代表選は野田、枝野両氏に加え、泉健太代表(50)、吉田晴美衆院議員(52)の4氏が出馬。1回選の国会議員、国政選挙の公認候補予定者、地方議員、一般党員・協力党員による投票結果は、野田氏267ポイント、枝野氏206ポイント、泉氏143ポイント、吉田氏122ポイントとなり、事前の予想通り誰も過半数には届かなかったため、野田、枝野両氏による決選投票にもつれ込んだ。決選投票は国会議員、公認候補予定者、都道府県連代表者による投票で争われ、野田氏が232ポイントを獲得して、180ポイントだった枝野氏を圧倒した。 

 

 

 新代表となった野田氏は、直ちに人事工作に着手し、23日中に新執行部の骨格を固め、翌24日午後、国会内で開催した同党両院議員総会で提示、承認された。新執行部は実質的な党運営を担う「党3役」として、小川幹事長の他、政調会長に重徳和彦衆院議員(53)、国会対策委員長に笠浩史衆院議員(59)が就任。さらに、代表代行に長妻昭衆院議員(64)、辻元清美参院議員(64)、大串博志・元首相補佐官(59)の3氏を充てた。大串氏は選挙対策委員長も兼任する。 

 

 さらに野田氏は、自らの代表選出馬での“中核”となった党最長老・小沢一郎衆院議員(82)を次の衆院選に向けた総合選挙対策本部の本部長代行に起用する意向も固めている。 

 

 そこで新執行部の顔ぶれをみると、小川氏は衆院香川1区選出で当選6回。2021年の党代表選に出馬し敗れたが、泉健太代表(当時)の下で政調会長を務めるなど中堅若手の代表格の人物。また、重徳氏は衆院愛知12区選出で当選4回。2019年に中堅・若手議員でつくるグループ「直諫(ちょっかん)の会」を設立し、会長を務めるなど、党内に一定の地歩を築いている。さらに、笠氏は衆院神奈川9区選出で当選7回。民放テレビ出身で旧希望の党で国対委員長をつとめるなど国会運営の経験が豊富なベテラン議員だ。  

 

■「穏健な保守層」取り込みに意欲と自信 

 

 そもそも野田氏は、代表選出に先立つ党大会での演説で「格差を是正し、分厚い中間層を復活する」「金権政治を終わらせ、世襲を制限する。政権交代こそが最大の政治改革だ」などと訴えたことが勝利に結びついたとみられる。 

 

 野田氏自身は自らの勝因について、記者会見などで「コアな立憲支持者だけでなく、もう少し幅広く無党派、本来は自民支持の人たちに届くメッセージを出せる可能性に期待した人もいるのでは」と分析。さらに「リベラルな方向と仲良くやりすぎているイメージが立憲の抱える課題だ」と、「立憲共産党」とも揶揄された枝野氏の党運営を間接的な表現で批判してみせた。そのうえで、次期衆院選の基本戦略とする、裏金事件で自民に強い不満を持つ「穏健な保守層」の取り込みに、強い意欲と自信をにじませた。 

 

 

 野田氏は2011年9月から2012年12月の自公政権復活まで、旧民主党政権で3人目の首相を務めた。その中で、財務相経験者として、当時の野党だった自民、公明両党との間で、政権公約(マニフェスト)になかった消費増税を推進し、増税に反対する小沢氏らの反発によって党分裂を招き、2012年11月中旬の党首討論で衆院解散を宣言し、それを受けての12月中旬の衆院選で大敗し、退陣に追い込まれた。 

 

 そうした「過去」も踏まえ、野田氏は代表選勝利後、メディア出演などで「本気で政権をとりにいく」と繰り返す。その野田氏が最大のアピールポイントとしているのが、2022年10月に衆院本会議で行った故安倍晋三元首相の追悼演説だ。その中で野田氏は、生前の安倍氏が2人だけの密談で野田氏に伝えた言葉として「自分は5年で返り咲いた。あなたにも、いずれそういう日がやってくる」を紹介、議場をざわめかせたことが念頭にあるとみられる。 

 

■「野党1本化」や国民民主との「合体」も困難 

 

 ただ、野田氏にとっての“最大の弱点”は「突然の衆議解散断行で、民主党政権を終わらせた」(立憲若手)ことでもある。党内ではいまだに「絶対許せない」(同)などと不信感を漏らす議員は少なくない。それだけに、野田氏が次期衆院選までに、選挙戦略や掲げる政策などで党内の一体化に失敗すれば、その時点で野田新体制への批判が噴出しかねない。そうなれば「政権奪取」どころではない事態に陥る。 

 

 また、「政権奪取の最大のカギは野党の一本化」(選挙アナリスト)だが、日本維新の会を筆頭に国民民主党、れいわ新撰組、共産、社民両党まで数多くの党との連携は極めて困難とみられている。これら各党は、それぞれの選挙戦略や基本政策もバラバラで「話し合いの糸口すらみつからない」(政治ジャーナリスト)のが実状だからだ。その一方で野田氏は、旧民主党時代からの“同根”でもある国民民主との「合体」も視野に入れているとされるが、「選挙協力での共産党排除を明確にしない限り無理」(国民幹部)との見方が支配的だ。 

 

 

 さらに、立憲民主の政策担当者の多くが懸念を示すのが野田氏と財務省との緊密とみられる関係だ。野田氏は首相在任中の2012年8月に民主、自民、公明3党による「社会保障・税一体改革に関する合意」をまとめたが、「社会保障の財源としての消費税率引き上げを巡り、裏で財務省が動いた」(自民幹部)との見方が根強いからだ。この合意を受け、消費税率は5%→8%→10%と段階的に引き上げられたが、「それが日本経済のデフレを加速させた元凶」(経済アナリスト)との指摘があるだけに、政権奪取に成功した場合の「野田首相」の財政運営を不安視する声も少なくない。 

 

 そうしたことから、現在の政界の構図を踏まえれば「いくら国民の自民党離れが拡大しても、首相再登板への道筋は見えてこない」(政治ジャーナリスト)というのが、野田立憲民主新代表の置かれた厳しい立場といえそうだ。 

 

泉 宏 :政治ジャーナリスト 

 

 

 
 

IMAGE