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経済アナリストの森永卓郎氏は、新NISAが投資ブームを拡大させ、「投資依存症」の人が増えていると懸念している。

投資依存症は、株価や為替相場の変動に冷静に対応できず、損失を取り返そうとして更に資金を投じることで破滅するリスクがあると指摘している。

森永氏は、投資から撤退することや投資をギャンブルと認識する必要性を訴えており、バブル崩壊時に最も影響を受けるのは投資依存症の人たちだと警告している。

彼の訴えに対しては懐疑的な声もあるが、森永氏は自身の終末期の体験から財産の失いを避けるために人々を助けたいと考えている。

(要約)

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新NISAをきっかけに「投資依存症」の人が増えていると警鐘を鳴らす森永卓郎氏(写真/共同通信社) 

 

 昨年12月にすい臓がんであることを発表して以降も、ベストセラーを連発するなど精力的に活動する経済アナリスト・森永卓郎氏が新著『投資依存症 こうしてあなたはババを引く』を上梓した。なぜ、投資ブームに逆行する警告を発するのか──その真意を聞いた。 

 

 政府が打ち出す「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、投資を始めた人は少なくない。この状況に森永氏は強い危機感を抱いている。 

 

「私は今、金融市場に参加する多くの人が『投資依存症』になっていると考えています。しかも、“患者数”は確実に増えている。今年1月に始まった新NISAをきっかけに投資の裾野が広がったことが大きな要因です」(森永氏、以下同) 

 

 ギャンブルで負けた時、取り戻すためにカネを投じ、負けを繰り返して手持ち資金が底をつく……ギャンブルで破滅する人の典型パターンだが、投資においても同様の“症状”がみられるという。 

 

「日銀が金融引き締めの姿勢に転じたことは、理論的には中長期的な株価の下落と円高をもたらします。ところが、依存症になった人たちは変化を意に介さない。結果、そうした人たちの買いで株価はさらに上がり、為替相場も円安に向かった。 

 

 だが、順風は永遠には続きません。問題は相場が値下がりトレンドに転じた時。冷静に判断できる人は損切りして手仕舞いしますが、投資依存症の人は損失を取り返そうとさらに大きな資金を注ぎ込む。資産の一部で安全に運用してきた人も、やがて全財産を投じて破滅への道を歩んでしまうことが懸念されるのです」 

 

 バブル崩壊の最後にババを引くのは、投資依存症の人たちだというのだ。 

 

 森永氏は、今年7月26日までの10日間(8営業日)で日経平均が3608円も下落した際、ラジオ番組や連載コラムなどを通じて「バブル崩壊に向かう可能性が高いので、今すぐ投資から撤退するべきだ」と注意喚起した。 

 

 実際、日経平均は8月5日に史上最大の大暴落を記録。しかし、翌6日には一転して史上最大の値上がりとなった。 

 

「ギャンブルで損を被った時に最もやってはいけないことは、損失を取り返そうともっと大きな資金を注ぎ込んでしまうこと。ところが8月5日の大暴落で損をした多くの人が、この禁じ手をやってしまった。8月6日の史上最大の株価急回復は、図らずも投資依存症が日本中に蔓延していることを証明したのです」 

 

 乱高下相場のなかで森永氏の「投資撤退提言」はネットを中心に激しい非難を浴びた。“株価は中長期的に必ず上がっていくもの。森永は経済を全くわかっていない妄想家”というのが大方の意見だったという。 

 

 たしかに長期の折れ線グラフではニューヨークダウも日経平均も上がっているように見える。それゆえ、老後資金を株式市場に投じる人が増えているわけだが、その理解が根本的に間違っていると森永氏は指摘する。 

 

「資本主義の宿命と言ってもよいバブルが生じるからです。この200年間、世界は大きなバブルを70回以上経験してきた。資本主義の歴史は、バブルの発生と崩壊の繰り返しです。そして、バブルが弾けると大衆は軒並み破産状態になり、得するのはバブルの期間に手数料をとり続けた運用会社などの“胴元”だけ。 

 

 投資の本質も勝つ人がいればその分、負ける人がいるゼロサムゲームで、他のギャンブルと同じ。うまくいくかは“運次第”。老後資金をNISAで運用する人は、老後の生活をかけて競馬や競輪をやっているのと同じです。 

 

 株式市場は鉄火場と化しているのに政府は『貯蓄から投資へ』の看板を下ろさず、投資依存症を拡散する政策を続けている。誰かが止めないと日本中に破産者が溢れてしまいます」 

 

 森永氏が投資のリスクについて警鐘を鳴らすのには理由がある。 

 

「がんの終末期を迎えた私には、予測を当てて名声を得ようといった考えは一切ありません。近い将来、財産の大部分を失い、暗い老後を過ごさざるをえなくなる人を一人でも多く救うこと。それが私に残された短い人生の役割だと強く思っているからです」 

 

 

「一時的な急落に動揺せず長期・分散・積立投資を続ければ資産は増える」とする“金融村”の喧伝に森永氏は反論する。 

 

「結局のところ、株式投資は“安く買って高く売れば儲かる”という単純な話でしかないのです。長期積立投資は安いところでも買うけれど、高いところでも買わされる。また、分散投資をすると利回りは低下します」 

 

 現在も続く日本市場の乱高下は「バブル崩壊の序章に過ぎない」と言う。 

 

「暴落はこれから本格化し、日経平均株価は最終的に3000円くらいになると考えます。歴史を振り返ると、バブルが崩壊すれば株価は8割以上、値下がりするし、バブルはいずれ必ず弾ける。 

 

 投資依存症から脱却するには、まず投資から手を引くこと。そして投資はギャンブルに他ならないと認識し、少しずつ考え方を立て直すしかないのです」 

 

 投資ブームに沸く日本人は、この警鐘をどう受け止めるか。 

 

※週刊ポスト2024年10月4日号 

 

 

 
 

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