( 216533 ) 2024/09/29 01:49:07 1 00
2024年9月30日のAERA誌からの記事によると、自民党総裁選の候補者の中で金融所得課税の強化が議論されている。 |
( 216535 ) 2024/09/29 01:49:07 0 00 AERA 2024年9月30日号より
物価高や為替、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年9月30日号より。
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自民党総裁選の候補者9人が出揃い、政策についての議論も始まっている。そのなかでも特に議論を深めてほしいと思ったのが、金融所得課税の強化だ。早い話が、投資でもうけた人に増税するということだ。
「増税」という単語にアレルギーを持っている人は多い。中には、「お前は財務省の手先か」と血相を変えて怒りだす人もいるので、まずは冷静に聞いてほしい。
必ずしも、「増税=国民が損をする」ではないということだ。税金には、お金持ちからお金を回収して、そのお金をそれ以外の人に還元する「富の再分配」という機能もある。特に、金融所得課税の強化は、再分配の強化という意味合いが強い。
民間の経済活動だけでは、格差は広がる一方だ。これを解消するには、政府による再分配機能が不可欠になる。たとえば、都市部と地方の地域格差は地方交付税交付金などの政策によって埋められている。同様に、個人間の格差も税金や社会保険料を通じて政府が負担能力に応じて徴収し、再分配することで格差を縮小しようとしている。
所得格差を示すジニ係数と呼ばれる指標があるが、現在、それが過去50年で最大となっていて、政府の再分配の効果が追いついていないことを示している。また、貯金ゼロの世帯も増加傾向にある。単身世帯では2021年から23年にかけて33.2%から36.0%に、二人以上の世帯でも22.0%から24.7%に増加している。
この現状をどうにかするには、所得の多い人はもう少し税金を負担してもらう必要がある。所得の中でも労働所得については、すでに累進課税制度が適用されていて、所得の高い人ほど税率が高い。労働所得以外での課税強化を考えると、投資などでもうけた金融所得を対象にするのは妥当だろう。金融所得は富裕層に集中しているため、格差是正効果が相当高いと考えられる。
「税金の負担増が景気を下押しする」という反論もあるが、あまり心配する必要はないだろう。富裕層から集めたお金は消えて無くなるのではなく、再分配によって誰かが受け取ることになる。一般的に、富裕層に比べると、低所得者層の方が消費性向が高い(より高い割合で消費にお金を回す)。銀行口座で眠るお金が消費に回り、むしろ経済を活性化させる効果は期待できるはずだ。
「金融課税の強化は株価に悪影響を与える」という声も気にしなくていいだろう。株価を気にしている時点で、金融資産をたくさん持っている人である。貧困層が増えていることが問題なのだから、我慢してもらわざるを得ない。
重要なのは、徴収した税金をどこに配り、何に使うかという点だ。単に税金を取るか取らないかという議論ではなく、その使い道についてもっと議論を深める必要がある。たとえば、教育、医療、子育て支援など、国民の生活に直結する分野に再分配すれば、所得の少ない層の生活が改善され、結果として社会全体の消費が活発化する。
税金はただの負担ではなく、社会の仕組みを維持し、格差を是正するための大切な手段だ。「増税反対」と叫ぶ前に、再分配の意義を再確認し、持続可能な経済を目指すための議論を深めるべきだろう。
※AERA 2024年9月30日号
田内学
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