( 218349 )  2024/10/04 01:46:21  
00

石破総理が日銀植田総裁との会談後に追加利上げに反対の立場を表明し、これまでの批判的な立場から一転した発言が驚きを呼んだ。

さらに、石破氏の最側近である赤沢経済再生担当大臣も利上げは慎重に判断すべきと述べ、新政権の方針に混乱が広がった。

その結果、市場では円安が進んだ。

石破政権の方針が不透明となり、総選挙を控えた時期には株安が懸念されている。

これに対し、日銀植田総裁は慎重な判断を強調し、対立が先鋭化するような様子はないと述べた。

(要約)

( 218351 )  2024/10/04 01:46:21  
00

TBS NEWS DIG Powered by JNN 

 

開いた口が塞がりませんでした。就任したばかりの石破総理が日銀の植田総裁と会談後、「個人的には現在、追加利上げするような環境にあるとは考えていない」と述べたのです。かつて「日銀は政府の子会社」と表現した安倍元総理をあれだけ強く批判していた石破氏が、総理になったとたん、中央銀行の独立性を軽んじる発言です。 

 

【画像】本コラムのポイントは? 

 

■日銀・植田総裁と会談後、驚きの発言 

 

石破新内閣が発足したのは10月1日午後でした。 

 

翌2日の夕方、異例の早さで、石破総理は日銀の植田総裁と会談しました。 

 

デフレ完全脱却が最大の政策目標ゆえに、石破総理にとっても、日銀にとっても、早めの意思疎通が重要でした。 

 

会談後、石破総理は記者団の取材に対し、デフレ脱却や成長をめざし、「政府・日銀で密接に連携し、経済財政運営に万全を期していく」と、まずは“模範解答”でした。 

 

そして、「日銀の政策を指図する立場にはない」としながらも、「個人的には現在、追加利上げするような環境にあるとはない」と踏み込んだのです。 

 

追加利上げに反対との立場を表明した発言で、市場には驚きが広がりました。 

 

この発言を機に為替市場では一気に円安が進み、3日は一時1ドル=147円台と、「高市トレード」で沸いた水準を超えて円売りが進みました。 

 

■これまで異次元緩和やアベノミクスを批判 

 

これほどまでに驚きが広がったのは、石破総理が元来、アベノミクスや異次元緩和に批判的で、日銀の目指す、緩やかな金融正常化を基本的には支持していると見られていたからです。 

 

私もそう信じて疑いませんでした。 

 

また、アベノミクスの過程で政府が日銀に圧力をかけるようなやり方にも度々、苦言を呈していたのに加え、石破氏は過度な円安にも懸念を示していたので、これほどあからさまに日銀をけん制するとは思いもしなかったのです。 

 

現に1日の総理就任会見で、石破総理は、「金融政策の具体的手法については、政府はあれこれ言うべきではない。日銀に委ねられるべきだ」「金融緩和の基本的な基調は維持される」と抑制的なトーンに終始していました。 

 

 

■前兆となった赤沢経済再生担当大臣「利上げは慎重に」 

 

実は、石破総理の“最側近”とされる赤沢経済再生担当大臣が、大臣正式就任前の1日に、官邸で記者団の質問に対し「金利の引き上げは慎重に判断して頂きたい」と日銀に注文を付けた上に、「あらゆる面で経済を冷やすようなことは絶対にここしばらくはやってはいけない」と述べていました。 

 

いきなりルール違反の越権発言だなと気になったものの、その夜に、先述の石破総理の抑制的な就任記者会見を聞いて、受け流していました。 

 

その赤沢経済再生担当大臣は、翌2日の記者会見で、「総理が金利引き上げに前向きだというのは、全体の絵として正しくない」とはっきり述べており、石破総理の驚きの発言は、石破政権が利上げに前向きだという世の中の認識(パーセプション)を覆そうと狙った発言だったと考えるべきでしょう。 

 

■株安「石破ショック」と呼ばれて 

 

石破総理や赤沢経済再生担当大臣の一連の発言の動機に、石破氏が総裁選で勝利した後、株価が一時2000円超も下落した「石破ショック」があったことは容易に想像できます。 

 

10月27日に総選挙を控えて、株安が進むことは新政権として避けなければなりません。 

 

「利上げ前向き」イメージが、円高株安に拍車をかけるような状況には、歯止めをかけたかったのでしょう。 

 

石破・植田会談後、日銀の植田総裁は、「(日銀の)見通し通りであれば金融緩和の度合いを調整していくことになるが、時間は十分あるので丁寧に見ていきたいと申し上げた」と述べました。 

 

その口調からは、「慎重に、丁寧に判断していく」ことでは両者は一致していて、今ことさらに対立が先鋭化したような会談には見えませんでした。 

 

いずれにせよ、追加利上げの時期は、これまでメインシナリオとされた年末年始より、後ずれする可能性も含め、不透明感が増してきました。 

 

■「豹変」発言の“ツケ”は大きく 

 

今回の石破総理の“利上げ反対発言”は、解散時期を前倒しした「豹変」に続く、豹変ぶりで、大きなツケを残すことになりました。 

 

第一に、石破氏の金融経済政策の信念がどこにあるのか、わからなくなったことです。 

 

第二に、言い訳がましく、「個人的には」などと述べた点です。 

 

ご本人は、留保条件を付けたつもりなのでしょうが、カメラを前に最高権力者が語る時に、「個人的には」などと言った例など、これまで聞いたことがありません。 

 

どう言おうが、それは「総理発言」なのです。石破総理はその立場の重さがわかっていないのではないかとさえ感じさせる出来事でした。 

 

そして何より、ようやく始まった円安是正が遅れる、或いは円安が逆に進行することで、物価が高止まりして、実質賃金の上昇を妨げるリスクがあることです。 

 

輸出大企業や株式市場は円安を望んでいるにしても、消費者は円安の是正と、物価高対策を求めているからです。 

 

物価高対策を帳消しにするような円安は、むしろ危険だと、私は思います。 

 

権力者になれば、株価や為替市場が思い通りになるなどと思っているのなら、早晩、手痛いしっぺ返しを受けることになるでしょう。 

 

驚きの発言には、「納得」も「共感」もありません。 

 

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター) 

 

TBS NEWS DIG Powered by JNN 

 

 

 
 

IMAGE