( 218574 )  2024/10/04 16:47:42  
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日本初のタワーマンションである埼玉県の与野ハウスが老朽化しており、大規模修繕工事が行われている。

タワーマンションの老いや修繕費の増加に住民たちが不安を感じており、修繕費の増額による経済的負担や合意形成の難しさが問題になっている。

タワーマンの大規模修繕費は通常のマンションよりも高額で、修繕工事も困難な部分がある。

修繕費の水増しや悪質な業者の侵入など、無駄な修繕費を避け、長期的な管理が重要であると指摘されている。

(要約)

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日本のタワマン第1号の与野ハウス。全4棟の建物は大規模修繕のため作業用足場で覆われていた 

 

 庶民から羨望の眼差しを向けられてきたタワーマンション。そんな金殿玉楼も寄る年波には勝てず、老朽化によりメッキが剝げてきている。ステータスの象徴から、栄枯盛衰の象徴になるか……。住民だけでなく、国民全体を巻き込む最悪の事態に発展しかねない「タワマンの未来」に迫った。 

 

⇒【写真】日本初のタワマン「与野ハウス」エントランスのガラス扉にはヒビが入っており、テープで応急処置がされていた 

 

 老朽化したタワーマンション(以下タワマン)が、増加している。一般的に最高階数が20階以上のマンションを指すタワマンは、1997年の建築基準法改正を機に次々と生まれている。 

 

 今年5月の日本経済新聞の報道によると、全国1795棟のうち、築30年以上は177棟(約6万戸)と全体の1割を占めるという。忍び寄るタワマンの“老い”に住民たちも不安を隠せない。 

 

「’16年の熊本地震で被災した際、免震構造なので揺れは感じませんでしたが、部屋の角の壁紙がバリバリと裂け、恐ろしかった。また、海に面しているため、潮風による劣化や大型野鳥の死骸・糞による汚れも激しい。まだ、入居してから一度も大規模修繕が行われておらず、このまま劣化が進むと将来どうなるのか、不安です」(Aさん・51歳・会社経営・築17年物件所有) 

 

 老いをカバーするため、修繕費の負担が住民に重くのしかかる。国交省のデータによると、タワマンの修繕費は通常のマンションの1.3倍。規模が大きくなればなるほど、額も膨らんでいく。 

 

「入居当初の修繕積立金は月8500円だったのに、大規模修繕を機に3回値上がりし、現在は2万4000円。やむをえず定年延長しましたが、収入は激減。ローン完済で安心していたのに、まさか修繕費が上がるなんて。マンションは子供に相続する予定ですが、将来、資産どころか負債になってしまわないかと心配しています」(Bさん・60歳・公務員・築24年物件所有) 

 

 戸数の多さゆえに合意形成が難航しやすいのもネックだ。 

 

「ウチは約1000戸あって、管理組合の理事になってみると、物事を決めるのが大変でした。修繕するにも、安く抑えようとしたら、資産価値を高めるために、グレードの高い修繕を希望する人もいて、意見が分かれた」(Cさん・52歳・会社員・築18年物件所有) 

 

 

 日本のタワマン第1号は、1976年に完成した埼玉県にある「与野ハウス」。築48年で現在は4回目の大規模修繕工事中だ。 

 

 修繕費について管理会社に問い合わせると、「今回の大規模修繕費は総額5億8000万円。残額は3100万円になる見込み」だという。 

 

 現状、修繕積立金の値上げの予定はないらしいが、70代の住民に話を聞くと、不安な声を漏らした。 

 

「修繕費値上がりの噂は絶えないし、建て直しの話まである。一生モノの買い物と思ったのに、立ち退きも懸念しています。管理業務はやってくれているけど、手入れが行き届いているとは言えません」 

 

 住民に案内されて敷地に入ると、日本庭園の庭木は十分な剪定がされておらず、中庭にある池もコケで濁っている。エントランスのガラス扉は大きなヒビが入っていた。 

 

 建物の老朽化は必然だ。ステータスの象徴というタワマン神話の崩壊も近い。 

 

 タワマンは通常のマンションよりも修繕工事が困難になる2つの理由があるという。マンションコンサルタントの別所毅謙氏が解説する。 

 

「審美的な外観や複雑な構造のタワマンだと、屋上から吊すゴンドラを特注する必要があり、コストが増える。また、風雨が強いと高所作業がストップし、工期が延びてしまう。タワマンならではの厳しい条件や事情があるのです」 

 

 別所氏にタワマンの大規模修繕費のモデルケースを示してもらったのがこちらだ。 

 

外壁工事……………30億円 

給排水管更新工事…20億円 

エレベーター交換…15億円 

インターホン更新…3億円 

自動ドア更新………1億円 

その他共有部など…1億円 

合計…………………約70億円 

 

※築30年/40階建て/1000戸/2回目の大規模修繕費を想定 

 

 いかに高額になるかが一目瞭然だが、別所氏は「こういった概算も、実際には安くできる可能性が高い」と話す。 

 

「管理組合が修繕をする会社に見積もりを依頼すると、専門用語だらけの高額な工事見積書になるでしょう。相場がわからなければ適正価格か判別するのは困難です。実際、工費が高くなりやすいことをいいことに、予算を水増ししやすいという実情があるんです。マンションデベロッパー、管理会社、設計会社、工事会社などすべてが談合して管理組合から根こそぎ修繕費を引っ張ろうとすることは何も珍しい話ではありません」 

 

 実際に相見積もりを取ると60%増しされていたことが判明したこともあったという。 

 

 

「より悪質なのは、組合に業者が入り込むケース。関係する会社が住戸を購入し、従業員を入居させ、善意の住民として修繕委員会に立候補し、関係業者を引き込もうとするのです。戸数の多さから管理組合は無難な大手の設計・工事会社を選んで相見積もりを取らないことが多いですが、工事費をきちんと見られるコンサルタントが重要です。この70億円の概算だってコンサルが入れば40億円程度に抑えられるでしょう」 

 

 無駄な修繕費は、長期保全の足かせにしかならない。 

 

【マンションコンサルタント・別所毅謙氏】 

二級建築士、防災士、建築系資格数種類を取得。管理組合へのアドバイスやコスパのいい大規模修繕工事コンサルティングを手がける 

 

取材・文/週刊SPA!編集部 

 

―[[高齢タワマン]の怖すぎる現実]― 

 

日刊SPA! 

 

 

 
 

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