( 219144 )  2024/10/06 01:38:42  
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山形東高校は山形のトップ高校として知られている。

近年の大学入試では学力試験以外の選抜方法が増えており、その中で注目されているのが東大の学校推薦型選抜だ。

山形東高校から東大に進学した生徒を取材した報道記事では、探究学習を通じて多文化共生の可能性を追求する試みが紹介されている。

このようなアプローチが推薦入試で合格するための対策となっている。

また、山形東高校の生徒の一例として、部活を続けながら高い学力を持つ野口さんの事例も取り上げられており、地方の高校出身者が大学入試でどう活躍できるかについての考察も展開されている。

(要約)

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山形のトップ高校として知られる山形東高校 

 

 各大学は学力試験以外で選抜を行う総合型選抜を取り入れ、入試の様相も変わってきている。その中で総合型選抜である、東大の学校推薦型選抜で合格した学生はどのような高校生活を送り、対策をしてきたのか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「推薦入試の現在地」。【全4回の第2回。第1回から読む】 

 

【写真】東大推薦入試に続々合格の山形東高校で探究学習に取り組む生徒たち。野口さんが手掛けた論文も 

 

 * * * 

 少子化の中でも、首都圏の中学受験は過熱を続けている。子どもの数が少ないからこそ、一人に投資される教育費は高くなり、幼い頃から塾に通って勉強をする子どもたちは、中学受験を終えても、中学1年から塾に通って大学受験対策をし、東京大学などの難関大学の受験もクリアしていく。 

 

 一方で地方では状況は異なる。たとえば東北地方では本格的な塾機能がほぼ仙台にしかない。そうしたなかで、山形県のトップ進学校、県立山形東高等学校も合格実績が伸びなやんでいたが、県の方針で探究学習を取りいれ、東大の推薦入試で4年連続で合格者を出すようになった。 

 

 今回は、山形東高校から推薦入試で東大に進学した学生を取材した。現在、東大の文科I類に在籍する野口凌さんだ。野口さんは山形東の探究科に属し、そこでの探究学習をまとめた論文を提出し、東大の推薦入試(後期教養学部)に合格した。 

 

 どんな探究学習を行ったのか。 

 

 山形東の探究科に在籍していた野口さんは、授業の一環でJICA(国際協力機構)の職員に話を聞く機会があった。その時、避難所で出される山形の郷土料理、芋煮に牛肉が入っているために、宗教上の理由で食べられない外国人がいるという問題が起きていると知った。ヒンドゥー教では牛肉は食べられないのだ。 

 

「避難所で出される食事が食べられない人がいるという問題」の解決を試みることで、野口さんは多文化共生の可能性を探りはじめる。 

 

 実際に避難所の生活に参加したり、インタビュー調査をしたり、文献を読んだりと探究を進めていく。 

 

 

 少数派の人たちに合わせてヴィーガン(菜食主義)の食事を徹底すると、他の人たちからは物足りないと不服の声が上がる。 

 

 多文化共生実現の難しさは、「誰しもを排除してはいけないが、少数派に全体を合わせようとすると不満や反発が起きる」点だと分かってきて、先行研究なども調べていく。確かに、肉が食べられない人がいるからといって野菜だけの食事ばかりにされたら、反発したくなるだろう。 

 

 そこで大豆で作った代替肉を使用した芋煮を作って、人々に食べてもらうなどの試みもした。代替肉は栄養面でメリットもあるものの、味に物足りなさを感じる人もいた。 

 

 大手教育産業で探究学習を専門とする社員はこの論文を読んで、こうコメントした。 

 

「外国人の増加や多文化共生といった大きなテーマを、災害時に避難民に出す食事、郷土料理といった自分の生活圏にある切実な課題に結びつけ、フィールドワークを通して論じているところが非常によかったです」 

 

 多文化共生は社会学的な課題だが、扱っている代替肉などは食品学といった理系の分野でもある。そこで野口さんは、学際的な学びができる教養学部を志望した。 

 

 野口さんは塾にほぼ通ったことがない。中学3年の夏休みに高校受験のための講習を受けたぐらいだという。小学校の時に公文式教室に通ったこともない。 

 

 では、何をしていたかというと、小学生からサッカーを中心に活動し、中学では山形のクラブチームに所属し、高校時代も高校3年の夏まではサッカーの部活を続けた。 

 

「中学時代、サッカーをやっていた仲間たちが勉強もちゃんと頑張っていたので、自分もそうしなければと思った。環境がよかったです」という。 

 

 東大の推薦入試では学校の成績も求められるが、山形県の最難関の山形東高校において、野口さんの評定平均値は非常に高かった。東大の推薦では共通テストで8割以上の得点が必要で、それもゆうにクリアしている。本人は「一般選抜では二次試験が通らなかったかもしれない」というが、浪人して1年間、駿台や河合塾に通えば確実に合格する学力水準と推測される。昔からいる地方の難関高校にいる文武両道の生徒であったわけだ。 

 

 そういった生徒が部活を完走しながら大学受験を目指す場合、一般選抜での東大合格が難しくとも、推薦入試で合格するケースもあるだろう。推薦入試は、そういった生徒をすくい上げるものになっているようにも見える。 

 

 今回は山形東高校出身で推薦入試に合格し、東大に通っている学生を取材して紹介した。次回は「地方の学生をどう大学に呼びこむか」という点について、東京の難関私立大学を取材し、考察する。 

 

(第3回に続く。第1回から読む) 

 

【プロフィール】 

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。【Xアカウント】@sugiyu170 

 

 

 
 

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